3 / 27
辺境伯家にて
しおりを挟む
国境沿いの関所付近で体調を崩していた辺境伯に治癒魔法を施した私。
追放されて、早々にトラブルに巻き込まれたけど、見知らぬ誰かを助けるために聖女になったんだもの。人助けが出来て良かったと思っている。
「是非ともお礼に、我が家で食事でもいかがですかな?」
「そ、そんな。礼には及びません。当たり前のことをしただけですから」
「何を言う! 恩人をタダで返せば、このカールシュバイツ家の名が廃る! 頼むから、何かご馳走させてくだされ!」
「え、ええーっと、そこまで仰るのなら」
「ミュ、ミューン!」
という流れで、私はカールシュバイツ辺境伯の屋敷にお呼ばれした。マルルはお腹が空いていたのか興奮したのか、私の肩の上で飛び跳ねて喜ぶ。
気を遣わせて悪いわ……。でも、所持金は銀貨二枚しかないし、ご好意に甘えて良かったのかもしれない。
「なるほど、聖女の称号を持つ程の方だったか。道理で、魔法の効き目が違ったわけじゃ! いやー、感心、感心!」
私のブローチを見て、辺境伯は白いひげを触りながら納得したように頷く。
このブローチに気付いたなら、他のことにも気付いたはずね。私が追放者だということにも……。
「あの、ですから私……」
「ふむ。国を追われたのじゃろう? 分かっておる。聖女殿、いやルシリア殿だったかな?」
「え、ええ。そのとおりです。騙して同行するつもりはなかったのですが」
当然、辺境伯は追放された身だということには気付く。
でも、変ね。彼からは私を蔑むような雰囲気は一切感じない。
もっと優しくて、慈しむような目をしている。
「ルシリア殿、ワシはもう何十年もの間、関所を管理しとる。ワケありの者など、見飽きとるし、この国に害を成す者がいれば、始末もさせておる。……そんなワシから見て、あんたは善人じゃよ。治療してもらったから言うとるのではない。あんたの目を見て言うとるのだ」
「カールシュバイツ様……」
「ワシの目が節穴であったなら、それはワシの責任じゃ。なんのことはない。あんたはワシにご馳走されて、旅の疲れを癒やせば良いのじゃ。何なら、王都で仕事を探せるように紹介状の一つでも書いてやろう」
私はつい目頭が熱くなってしまった。
まったく、まだまだ弱いんだから、私は。アネッサに心配させないように虚勢を張って、国境を越えてみたら、すぐに途方に暮れて……。優しい言葉をかけられて、泣きそうになるんだもの。
しっかりするのよ、ルシリア。私はこれから自分の力で生きていかなきゃならないんだから。
「おおっと、ワシとしたことが大事なことを言い忘れとったわい。ご馳走すると言ったが、客人を一人招いておる。同席してもらうが構わないかのう?」
「あ、はい。私は構いませんが、そのお客様がお嫌かもしれませんよ?」
「ははは、あの方はゲストが一人増えるのに難色を示すほど狭量ではないよ。ルシリア殿みたいな可愛らしいお嬢さんが来ればむしろ喜ぶ」
「そ、そんなこと。お上手ですね。カールシュバイツ様は」
辺境伯の冗談はさておき。
あの方は、と言っていたけど、かなり高貴な身分の方なのかしら?
辺境伯よりも身分が高いって、それこそ公爵や王族ってことになるけど。
さすがに王族ってことはないか……。それなら私みたいな追放者を誘うなんてしないだろうし。
そんなことを考えながら、カールシュバイツ家の馬車に乗り、三時間ほどで大きな屋敷に到着した。
これはまるでお城ね。周りが森林に囲まれてなんとも静かで、寂しげな場所なんだけど、この重厚な造りはそのイメージを吹き飛ばすほどの華やかさだわ。
「大きすぎるじゃろう? ワシが死んだら息子に屋敷ごと相続させるつもりだが、あやつは妻子と今、住んどる町中の小さな屋敷で良いと言っておる始末じゃ。まぁ、ワシも不自由しとるが」
「利便性を考えれば確かに町中のほうが色々と都合が良いかもしれませんね……」
ここまで関所から馬車で三時間。はっきり言って遠かったわ。
辺境伯家の跡取り息子とやらが、うんざりするのも分からなくもない。領主として大きな屋敷に住むというのは威厳を保つには良いかもしれないけれど……。
「ははは、そうさな。そもそも、この屋敷は浪費家じゃった、我が曾祖父が全財産をつぎ込んで建てたもの。家具の配置から、建築方法まで拘りにこだわって、な。建てるまで実に長い年月がかかってしもうて、完成したその日に曾祖父は亡くなってしまったんじゃ」
ええ……。何その、皮肉すぎる話。ここ、笑うところじゃないわよね?
こんなに立派で今見てもお洒落なお城みたいな屋敷を建てて、一日も住めなかったというの? ここからじゃ見えないけど、きっと内装にもこだわっているのね。
「それは口惜しいというか。悲しいお話ですね」
「うむ。じゃから、ワシら子孫は曾祖父の無念な気持ちを汲んで住み続けるしかないんじゃよ。息子にそれを押しつけるつもりはないが……。まぁ、それは良い。客室はきれいにしとるから、期待しておきなさい」
辺境伯は使用人に命じて、私を客室へと案内させた。
やっぱり、内装も凝っている。客室への廊下には近隣諸国の有名な芸術家たちの作品が飾られていた。まるで、小さな美術館みたいだわ。
いきなり目に飛び込んできた鹿の剥製にはちょっと驚いたけど……。
「ミュー! ミュー!」
「おやおや、怖がらせてしまいましたか。ルシリア様、我が主を救ってくれてありがとうございます。あんなに楽しそうに話すのは久しぶりです」
剥製を見て、威嚇のように毛を逆立てるマルル。
辺境伯の使用人の一人。あのとき、大声を出して医者か治癒術師を探していた男は私に礼を述べた。
気さくな方だと思ったんだけど、違うのかしら……。
「食事の準備が整いましたら、お呼びします。それまで、ごゆっくり」
まるで王女様にでもなったかのように錯覚させるほどの豪華な寝室。
アンティークの家具はどれも細部の彫刻まで凝っていて、窓の外の景色は森林が夕焼けに照らされて、きれいだった。
よく手入れされた庭も素敵……。昼間の明るいときに花壇も見てみたいわ。
「こんなに贅沢をさせてもらって、良いのかしら?」
「ミューン!」
そんなことをつぶやくと、マルルは私よりも先にベッドに飛び乗る。
ふわふわで寝心地が良さそうね。
正直に言って、今はご馳走よりも一時の睡眠が欲しいけど、寝ると起きられる自信がないわ。
こんなに素晴らしい屋敷に住むことが出来なかったなんて、辺境伯の曾祖父って人も無念だったでしょうね……。
「ルシリア様、食事の準備が出来ました。もう一人のゲストも既に到着しております」
一時間ほどで、準備が整ったとのことで、私はマルルと共に食堂へと向かう。
豪華なシャンデリアが照らす、食堂もまた贅沢な造りをしていた。燭台一つ、一つに至るまで、こだわりを感じる。
「き、君はルシリア? 女性のゲストというのはルシリア・フォン・ローエルシュタインのことだったのか!?」
「あ、あなたはアークハルト殿下!?」
そこで私は思わぬ人と再会した。
辺境伯の言うもう一人のお客様というのは、ここエルガイア王国の王太子、アークハルト殿下その人である。
彼と会ったのは、故郷の国王陛下の誕生日パーティーに出席したとき以来。実に三ヶ月ぶりだった……。
一瞬だけ言葉を失ってしまったわ。だって、もう一人のゲストというのが高貴な方なのは何となく察しがついていたけど、まさか本当に王族の人と食事するとは思わないじゃない。
追放されて、早々にトラブルに巻き込まれたけど、見知らぬ誰かを助けるために聖女になったんだもの。人助けが出来て良かったと思っている。
「是非ともお礼に、我が家で食事でもいかがですかな?」
「そ、そんな。礼には及びません。当たり前のことをしただけですから」
「何を言う! 恩人をタダで返せば、このカールシュバイツ家の名が廃る! 頼むから、何かご馳走させてくだされ!」
「え、ええーっと、そこまで仰るのなら」
「ミュ、ミューン!」
という流れで、私はカールシュバイツ辺境伯の屋敷にお呼ばれした。マルルはお腹が空いていたのか興奮したのか、私の肩の上で飛び跳ねて喜ぶ。
気を遣わせて悪いわ……。でも、所持金は銀貨二枚しかないし、ご好意に甘えて良かったのかもしれない。
「なるほど、聖女の称号を持つ程の方だったか。道理で、魔法の効き目が違ったわけじゃ! いやー、感心、感心!」
私のブローチを見て、辺境伯は白いひげを触りながら納得したように頷く。
このブローチに気付いたなら、他のことにも気付いたはずね。私が追放者だということにも……。
「あの、ですから私……」
「ふむ。国を追われたのじゃろう? 分かっておる。聖女殿、いやルシリア殿だったかな?」
「え、ええ。そのとおりです。騙して同行するつもりはなかったのですが」
当然、辺境伯は追放された身だということには気付く。
でも、変ね。彼からは私を蔑むような雰囲気は一切感じない。
もっと優しくて、慈しむような目をしている。
「ルシリア殿、ワシはもう何十年もの間、関所を管理しとる。ワケありの者など、見飽きとるし、この国に害を成す者がいれば、始末もさせておる。……そんなワシから見て、あんたは善人じゃよ。治療してもらったから言うとるのではない。あんたの目を見て言うとるのだ」
「カールシュバイツ様……」
「ワシの目が節穴であったなら、それはワシの責任じゃ。なんのことはない。あんたはワシにご馳走されて、旅の疲れを癒やせば良いのじゃ。何なら、王都で仕事を探せるように紹介状の一つでも書いてやろう」
私はつい目頭が熱くなってしまった。
まったく、まだまだ弱いんだから、私は。アネッサに心配させないように虚勢を張って、国境を越えてみたら、すぐに途方に暮れて……。優しい言葉をかけられて、泣きそうになるんだもの。
しっかりするのよ、ルシリア。私はこれから自分の力で生きていかなきゃならないんだから。
「おおっと、ワシとしたことが大事なことを言い忘れとったわい。ご馳走すると言ったが、客人を一人招いておる。同席してもらうが構わないかのう?」
「あ、はい。私は構いませんが、そのお客様がお嫌かもしれませんよ?」
「ははは、あの方はゲストが一人増えるのに難色を示すほど狭量ではないよ。ルシリア殿みたいな可愛らしいお嬢さんが来ればむしろ喜ぶ」
「そ、そんなこと。お上手ですね。カールシュバイツ様は」
辺境伯の冗談はさておき。
あの方は、と言っていたけど、かなり高貴な身分の方なのかしら?
辺境伯よりも身分が高いって、それこそ公爵や王族ってことになるけど。
さすがに王族ってことはないか……。それなら私みたいな追放者を誘うなんてしないだろうし。
そんなことを考えながら、カールシュバイツ家の馬車に乗り、三時間ほどで大きな屋敷に到着した。
これはまるでお城ね。周りが森林に囲まれてなんとも静かで、寂しげな場所なんだけど、この重厚な造りはそのイメージを吹き飛ばすほどの華やかさだわ。
「大きすぎるじゃろう? ワシが死んだら息子に屋敷ごと相続させるつもりだが、あやつは妻子と今、住んどる町中の小さな屋敷で良いと言っておる始末じゃ。まぁ、ワシも不自由しとるが」
「利便性を考えれば確かに町中のほうが色々と都合が良いかもしれませんね……」
ここまで関所から馬車で三時間。はっきり言って遠かったわ。
辺境伯家の跡取り息子とやらが、うんざりするのも分からなくもない。領主として大きな屋敷に住むというのは威厳を保つには良いかもしれないけれど……。
「ははは、そうさな。そもそも、この屋敷は浪費家じゃった、我が曾祖父が全財産をつぎ込んで建てたもの。家具の配置から、建築方法まで拘りにこだわって、な。建てるまで実に長い年月がかかってしもうて、完成したその日に曾祖父は亡くなってしまったんじゃ」
ええ……。何その、皮肉すぎる話。ここ、笑うところじゃないわよね?
こんなに立派で今見てもお洒落なお城みたいな屋敷を建てて、一日も住めなかったというの? ここからじゃ見えないけど、きっと内装にもこだわっているのね。
「それは口惜しいというか。悲しいお話ですね」
「うむ。じゃから、ワシら子孫は曾祖父の無念な気持ちを汲んで住み続けるしかないんじゃよ。息子にそれを押しつけるつもりはないが……。まぁ、それは良い。客室はきれいにしとるから、期待しておきなさい」
辺境伯は使用人に命じて、私を客室へと案内させた。
やっぱり、内装も凝っている。客室への廊下には近隣諸国の有名な芸術家たちの作品が飾られていた。まるで、小さな美術館みたいだわ。
いきなり目に飛び込んできた鹿の剥製にはちょっと驚いたけど……。
「ミュー! ミュー!」
「おやおや、怖がらせてしまいましたか。ルシリア様、我が主を救ってくれてありがとうございます。あんなに楽しそうに話すのは久しぶりです」
剥製を見て、威嚇のように毛を逆立てるマルル。
辺境伯の使用人の一人。あのとき、大声を出して医者か治癒術師を探していた男は私に礼を述べた。
気さくな方だと思ったんだけど、違うのかしら……。
「食事の準備が整いましたら、お呼びします。それまで、ごゆっくり」
まるで王女様にでもなったかのように錯覚させるほどの豪華な寝室。
アンティークの家具はどれも細部の彫刻まで凝っていて、窓の外の景色は森林が夕焼けに照らされて、きれいだった。
よく手入れされた庭も素敵……。昼間の明るいときに花壇も見てみたいわ。
「こんなに贅沢をさせてもらって、良いのかしら?」
「ミューン!」
そんなことをつぶやくと、マルルは私よりも先にベッドに飛び乗る。
ふわふわで寝心地が良さそうね。
正直に言って、今はご馳走よりも一時の睡眠が欲しいけど、寝ると起きられる自信がないわ。
こんなに素晴らしい屋敷に住むことが出来なかったなんて、辺境伯の曾祖父って人も無念だったでしょうね……。
「ルシリア様、食事の準備が出来ました。もう一人のゲストも既に到着しております」
一時間ほどで、準備が整ったとのことで、私はマルルと共に食堂へと向かう。
豪華なシャンデリアが照らす、食堂もまた贅沢な造りをしていた。燭台一つ、一つに至るまで、こだわりを感じる。
「き、君はルシリア? 女性のゲストというのはルシリア・フォン・ローエルシュタインのことだったのか!?」
「あ、あなたはアークハルト殿下!?」
そこで私は思わぬ人と再会した。
辺境伯の言うもう一人のお客様というのは、ここエルガイア王国の王太子、アークハルト殿下その人である。
彼と会ったのは、故郷の国王陛下の誕生日パーティーに出席したとき以来。実に三ヶ月ぶりだった……。
一瞬だけ言葉を失ってしまったわ。だって、もう一人のゲストというのが高貴な方なのは何となく察しがついていたけど、まさか本当に王族の人と食事するとは思わないじゃない。
68
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】妹が私から何でも奪おうとするので、敢えて傲慢な悪徳王子と婚約してみた〜お姉様の選んだ人が欲しい?分かりました、後悔しても遅いですよ
冬月光輝
恋愛
ファウスト侯爵家の長女であるイリアには、姉のものを何でも欲しがり、奪っていく妹のローザがいた。
それでも両親は妹のローザの方を可愛がり、イリアには「姉なのだから我慢しなさい」と反論を許さない。
妹の欲しがりは増長して、遂にはイリアの婚約者を奪おうとした上で破談に追いやってしまう。
「だって、お姉様の選んだ人なら間違いないでしょう? 譲ってくれても良いじゃないですか」
大事な縁談が壊れたにも関わらず、悪びれない妹に頭を抱えていた頃、傲慢でモラハラ気質が原因で何人もの婚約者を精神的に追い詰めて破談に導いたという、この国の第二王子ダミアンがイリアに見惚れて求婚をする。
「ローザが私のモノを何でも欲しがるのならいっそのこと――」
イリアは、あることを思いついてダミアンと婚約することを決意した。
「毒を以て毒を制す」――この物語はそんなお話。
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。
木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。
彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。
そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。
彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。
しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。
だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。
幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね
柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』
王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――
報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?
小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。
しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。
突然の失恋に、落ち込むペルラ。
そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。
「俺は、放っておけないから来たのです」
初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて――
ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。
「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
聖女であるルルメアは、王国に辟易としていた。
国王も王子達も、部下を道具としか思っておらず、自国を発展させるために苛烈な業務を強いてくる王国に、彼女は疲れ果てていたのだ。
ある時、ルルメアは自身の直接の上司である第三王子に抗議することにした。
しかし、王子から返って来たのは、「嫌ならやめてもらっていい。君の代わりはいくらでもいる」という返答だけだ。
その言葉を聞いた時、ルルメアの中で何かの糸が切れた。
「それなら、やめさせてもらいます」それだけいって、彼女は王城を後にしたのだ。
その後、ルルメアは王国を出て行くことにした。これ以上、この悪辣な国にいても無駄だと思ったからだ。
こうして、ルルメアは隣国に移るのだった。
ルルメアが隣国に移ってからしばらくして、彼女の元にある知らせが届いた。
それは、彼の王国が自分がいなくなったことで、大変なことになっているという知らせである。
しかし、そんな知らせを受けても、彼女の心は動かなかった。自分には、関係がない。ルルメアは、そう結論付けるのだった。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる