夜間勤務のメイド

灯埜

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お師匠様… (呆れ)

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「失礼します、王様。こちらにいると聞いて回収にきました」
お師匠様が俺を回収しに来た。どうやら呼ばれてきたらしい。
「ヴィル殿、よくきた。さぁ、ここに座って、今紅茶を入れよう」
王様は彼をソファーに促し、俺をお師匠様の隣に下ろす。
そして自ら紅茶を淹れている。王様自ら紅茶を淹れている、不思議な光景だった。

「ありがとうございます。いただきます」
お師匠様は何の違和感もない様子で紅茶を受け取り、飲んでいる。
「君も」
「ありがとうございます」
「あ、クロード、これ」
小瓶を開けて紅茶にまぶす。この薬草の匂い。
お風呂に淹れるやつと少し違うようだが、嗅いだことのある匂いも混じっている。

「なんだね、それは?」
「特殊な薬草でして。疲労回復、痛みの軽減などさまざまな効能があります」
「ほぅ。私にもそれを淹れてはくれないか」
王様は何の疑いもなくお師匠様の薬をほしいと言う。王族なら疑うべきなのに、お師匠様のことを信頼しているのかな。

「これはあげられませんが、こちらをおすすめします」
懐から別の小瓶を取り出し、詮を外して、王様の紅茶に少量まぶしてスプーンで軽く混ぜる。

「この微かな香りは…ブルーベリーか」
「そうです」
言い香りだ。と呟きながら王様は紅茶を飲む。落ち着いた顔。
「ところで王様」
「ん?なんだい?」
「両目に視力矯正魔法と拡大魔法、速読魔法を重ねがけしていますね」
「バレないかと思っていたが、ヴィル殿には敵わないな」
困った顔で笑う王様は、両目を数秒閉じて、魔法を解除する。

「ご覧のとおり、重ねがけしていた。近頃目が見えにくくてね、普通に見るとぼやけて見える。書類を離して見るとまぁ見えるんだが、そんなことをしていては仕事が滞ってしまうからね」
「直掛けは負荷が大きいはずです。もうやめましょう」
彼は紅茶をおかわりしながら王様に危険ですよ、と注意する。
「だがしかし…」
「失明しますよ、失明。その魔法の代わり、こちらの魔道具を差し上げますよ」
懐から出した物はメガネだった。
「メガネか」
「ただのメガネではありません」
彼は、優れものです!と販売する人の口調になった。

「これは、かけた人の視力に自動で合わせてくれるんです。そして、速読、疲労軽減、拡大に縮小まで、その他にもいろいろ機能が付いたメガネなんです!(ドヤァ✨️)」
「ほぉ✨️ なんと✨️」
王様はメガネをかけ、一枚の書類を見ながら性能を確認し、感動していた。
「これは、素晴らしいな。買おう。いくらだ?」
「さらに。メガネ拭き、ケース、メンテナンス1年分券をお付けします!」
「お得な買い物だな。私のおこづかいで足りるだろうか」
「…………」
(おこづかいて…)
俺は聞かなかったことにした。

「私の望みはただ一つ!クロードの部屋に住まわせて欲しいのと、ご飯3食デザート付きです!」
(何が1つだ!2つじゃねぇか!)
呆れた…と俺は小さく呟いて、片手で頭を軽く押さえる。

「それだけでいいのか?」
王様がそんなこと?と驚いていたが、彼はさらに続ける。
「おっ( ・∀・) そんなこと言っちゃっていいんですか?もう1つ要求しちゃいますよ」
(こいつ、調子こきだした)
俺は両手で頭を抱える。

「む、申してみよ」
「一日私と遊ぶ日を設けて頂きたい」
にこにこと答える彼に俺と王様はポカンとした。
「は?」
「遊ぶ?」
何する気だこいつ。

「王様と私と王妃様とご子息お二人と一緒に町に遊びに行きましょう♪」
「!」
お師匠様の突拍子のない行動と言葉はいつものことだが、毎回周りが振り回されているということをそろそろ知って欲しいところだ。

「いやしかし城を空けるわけにはいかないんだが」
「大丈夫大丈夫。クロードもいるし、ユース卿もいるし、彼女もいるし皆城を守ってくれますよ」
早速人を巻き込み出した。

「しかし…」
「私の方でも結界を張っておきますから。ね?」
「うむ……わかった。許可しよう」
「ありがとうございます」
彼の言葉が決め手だったようだ。少し悩んだ後、許可をした。

「日にちは後程決めましょう」
「わかった」
君には何故か負けるよ、と微笑みながら紅茶を飲む。

「あ、本題を忘れてましたね。クロードが何故ここに来たのかを、お話ししましょう。彼がもし職務中に発作が起きた場合を考慮して、彼が寝ている間に移動魔法をかけておきました。発作が起きたと同時に発動するようにね」
パチンと片目を伏せてウインクを俺にしてきた。
初耳なんですけど。ジロリと彼を見るが無視される。
「何故私の執務室なのかね?」
(俺もそれは知りたい) 何か理由があるはずだ。
「それは、王様のところって一番安全ですよね」
「まぁそれはそうだが…」
困った顔をしながら、「上から落ちてきたのだが、危ないからどうにかならないのかね」とお師匠様と交渉している。
王様違います、心配するところそこじゃないです。

「お師匠様、王様を困らせないでください」
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