夜間勤務のメイド

灯埜

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なんで??

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お風呂から上がり、着替えてベッドに座り、水を飲んでいるとまたコンコンとノックする音が。

「はい」
「副団長、お迎えに上がりました」
ユース卿の声がドア越しから聞こえる。
「わかりました。今行きます」

お湯から上がり、着替えている最中にボンッと元の大人の姿に戻ったのだ。
やった!これで仕事ができる!

「お待たせ致しました、すみません。では、行きましょうか」
「はい」
ユース卿の声に気付かないほど本に没頭しているラナンとお師匠様をチラリと見たあと、静かに部屋を出て扉を閉めた。

ユース卿と廊下を歩きながら、今日のスケジュールの確認を口頭で確認していく。

「今日は、訓練の前に会場の後片付けを少し手伝いまして、その後に訓練を開始する予定です」
「会場の後片付けって、どのくらいかかると思います?」
途中で抜けた俺は、あのあとどうなったのかを知らない。ユース卿は最後まで参加をしていたらしく、うーんと考えた後、おそらく30分から1時間程度かと。と答えた。
大きいものは片付けず、細かいものや大まかなものは昨日の時点で片付けを済ませていたようだ。

会場に着くとメイドや執事達が大食堂を大急ぎで片付けている。

「何かお手伝いすることありますか?」
「では、あの上の装飾を取って回収してほしいのです。私たちの背では届かなくて💦」
天井の装飾を見ながら頭を軽く下げてお願いするメイド数名の説明に、頷く俺とユース卿。
「お安いご用です。お任せください」
「集め終わりましたら私たちに下さい。こちらで回収致します」
「わかりました」

俺とユース卿、リックとユキの4人で天井の装飾を取り外す作業に取りかかった。

「これが終わって手が空いた場合、他の者の手伝いか、メイドに指示を煽ってくれ」
腕まくりをしながらユース卿がリックとユキに説明をする。
「了解しました」
「…………(こくり)」
リックは腕まくりをし、ユキは頷いた。

手分けして取り外していく。
下で受け取りの執事に少しずつ渡していく。

「これ、お願いします」
「かしこまりました」

作業は順調に進んでいく。

だいたい取り外したかなと周りを見つつ最後の装飾を取り外そうと腕を伸ばす。

突然だった。ぐるりと酷く視界が揺れた。
強い心臓の痛みと頭痛で足元に力が入らなくなり、高い台からグラリと落下。

「あっ!危ない!!!」
「副団長!!」
皆の叫ぶ声が聞こえる中、フッ と意識が途切れた ────


 ──── 目を覚ますと、王様に抱えられていた。

「!??」
(どういう状況だこれ…)
そろりと王様の方を見ると真剣な表情で書類に目を通し、サインをしていた。ゆっくり視線を戻し、考える。

「…………」
(どうすれば💧)

第一、何で俺はここにいる?

たしかさっきまで装飾を取り外してて、急に具合が悪くなって、それから…… その後の記憶がない。
目を覚ましたら王様の膝の上、と…… いや意味がわからん!

考えていると、頭上から声をかけられた。
「気がついたのかい?気分はどうかな?」
ビクッと体が強ばった。起きていたことを気付かれていたことに驚いた。何より、この状況はかなり不敬罪。

「あ、あの…すみません!私がここにいるべきではないのはわかってはおりますが、その、未だ状況がわかっておらず…。申し訳ありません!降ります故、あ、の…腕を、」
膝から降りようとして王様の腕を避けようと少し力を込めるも、王様の腕は動かない。
「そんな気負いすることはない。楽にしなさい」
「ですが…」
「それにしても驚いたね。ここで仕事してたら君が急に私の頭の上に現れて落ちてきたのだから」
「え!?」
頭の上!?
「間一髪のところで宰相が受け止めてくれてなんとかなったんだけどもね、いやぁ、驚いたね本当に。それにいいものも見れた」
「いいもの?」
「あぁ。あの表情筋が死んでいる堅物宰相の驚いた顔と君を抱えて見たときにちょっと笑ってたんだよね。まさか子供好きだったとは」
「そう、ですか」
え… あの表情筋が死滅している堅物宰相が笑ってた?俺を見て??何で???

「君の身柄は私が預かることにして様子見も予て今に至るということだよ」
「なる、ほ、ど?」
今の会話で20枚くらいは書類に目を通し、署名、判を押して執事に渡していた。仕事が早い。
「それで?君はどうしたのかな?」
俺を執務室の机の上に座らせ、目線を合わせるように、ん? と笑顔で聞いてきた。

「私もよくわからなくて… 一度元に戻ったのですが、作業中に急に苦しくなり意識を失いまして。気付いたら、このような状況になっておりました」

顎に手を当ててうーんと考える王様。
「そうか。まだ魔力に乱れがあるのかもしれないね。ヴィル殿に聞いてみるしかないね」
「はい。何もなければいいのですが…」

あまり悩むとシワが出来るぞ。と俺の頭を優しく撫でる王様に断ることも出来ず、撫でられるままじっとするしかなかった。

俺は子供じゃないです。
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