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みんなでお風呂
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「おや、もう朝ですか」
「え!?あ、ほんとだ」
お師匠様の声で外を見ると空は明るくなり、日の光がカーテンの間から漏れている。
どうやら没頭しすぎたようだ。
「一旦本読むのやめて、お風呂入ろう」
「そうですね。あ、お師匠様も入りますよね」
「うん」
「そだ、ラナンも入るよね」
『いいの?』
「君は何を気にしてるのか知らないけど、お風呂はみんなで入るのが一番楽しいと古来から決まっているんだよ」
はっ!まさかしばらく入ってなくて汚いとか?とお師匠様がラナンに聞いていた。『汚くないわよ、失礼ね😡』と言い返していた。ラナンはお師匠様に慣れたのかな?
「それはお師匠様だけの持論だから、気にしなくていいよ」
会話をしながら浴室に向かい、早速俺はお風呂を洗剤で力一杯ごしごし洗い始める。
そういえば、使った後掃除してない。いつもは魔法で綺麗にするが、今の俺は魔法が使えない。
2人に頼むわけにもいかないので、急いで洗ってお湯を張ることにした。
「手伝う?」
彼はひょこっと浴室に顔を出して様子を見てきた。
「いえ、大丈夫です!すぐに終わらせますから!」
「そう?じゃあ、お湯張りは私がするよ」
お湯も俺が張りますから、と浴槽から顔を出して答える。
「えっと、では、服を魔法で綺麗にしてほしいのですが」
「いいよ、他は?」
あっさり承諾してくれた。ありがたい。
「特にないです」
「了ー解。お風呂に入ったらやろうか」
「はい、お願いします。もうちょっと待っててください」
「わかった。さて、ラナンで遊ぼうかなー」
『嫌よ!こっち来ないで!』
バタバタと部屋の中を走り回る2人。寝てないのに元気だな。
コンコン
ドアをノックする音が聞こえて2人はピタリと止まる。
誰だ?
「おはようございます。副団長、起きていますか?」
ユース卿が朝の迎えにやってきたようだ。まずい。返事…
「起きていません」
代わりにお師匠様が返事をした。
「え!?大け、ヴィル殿!?何故副団長の部屋に?」
彼はドアの前まで歩いて近づき、後ろに手を回し組んで話をし始めた。
「いやー本読んでたら朝になっちゃって。これからお風呂なんだ」
「そ、そうなんですか💧」
「うん、そう。俺もクロードもお風呂だからもう少し後にきてくれるとありがたいんだけど」
「わかりました。また後程お伺い致します」
「はーい」
コツコツコツ と遠ざかる足音を聞いてから俺はため息をつく。危なかったー。
「さて、お風呂入ろうか」
「洗い終わったので、あとは洗い流すだけです」
浴室に入ってきたお師匠様は状況を見にきたようだ。
大丈夫かい?と聞いてきた。
「もう少し待っててください」
俺は蛇口をひねって水を流すと、彼は浴槽に向かってパチンと指を鳴らす。すると水がまわったり踊るようにして動き始めた。
「はい、完了♪」
一通り浴槽内を動きまわった水は排水口に吸い込まれるように流れていった。
また蛇口をひねってお湯を出す。
溜まるまで次着る服を用意する。
「溜まったから薬草入れるよ」
「はい」
ふわりと薬草の香りが浴室内に広がり、部屋にも香る。
「はぁーいいねぇ、懐かしい香りのするお風呂。回復するぅ」
ザバァーとお風呂の湯が浴槽から溢れ出す。
そりゃ2人と一匹(?)が入れば一人用の浴槽からお湯も溢れ出すわな。
後ろにお師匠様、前に俺、俺の前にはお風呂に小さな桶を浮かべ、その中にお湯を入れてラナンが入った。
『うあー染みるぅー』
「はぁ、少しだけ楽…」
チャプ…
お師匠様は俺の感想を聞いて、頭を撫でてきた。俺は彼にもたれ掛かる。
「まだ痛むかい?」
「いえ、このお湯に浸かっているときは普段の痛みも少しだけ楽になります。安らぐ一時と言っても過言ではないですね」
彼は俺の前に手を回してぎゅっと抱き締めてきた。
「?」
くすぐったい。というかくすぐってきた。笑って暴れるとお湯がどんどん溢れて流れていった。浴室内に俺とお師匠様の笑い声が響く。
「ははは、はぁ、そっか。それならよかったけど、あまり無理はしないようにね」
「はぁ、はっ、はい」
久々に大笑いした。楽しい。
こうしてお師匠様とお風呂でふざけるのは昔から変わらない。
『……愛、ね』
「「 …… は? 」」
のぼせたんじゃない?とお師匠様と俺とで人差し指をラナンのおでこに指の腹を当てて熱を測り出した。
『のぼせてないわ!むしろあなた達のせいでのぼせそうよ!』
「?何言ってんの?」
お師匠様が俺をぎゅっと抱き締めて、「ちょっとあの子のぼせたみたいだね」とラナンの入っている桶を指で軽く押して俺から遠ざける。
『無自覚!?無自覚なのね!恐ろしいわぁ♡』
流されながら悶えてバシャバシャと桶の中で暴れるとラナン。
その様子を見つつ、俺たちはスルー。
お師匠様は濡れた髪を掻き上げて「上がろうか?」と俺に聞いてきた。
「んー もう少しだけ入ってる…」
「そか、じゃあ、私もー」
チャプ…… とお師匠様が動く度にお湯が鳴る。
側にいる息づかいが聞こえる。
ラナンがキャーキャーと嬉しそうに騒いでいる。
薬草の香りと誰かが側にいる温かさ、薬草とお湯で安らぐ痛みと安心する時間。
お湯に揺られてゆらゆらとほんの少し揺れる無抵抗の身体を足を抱えた状態でお師匠様に少し身体を預けて瞳を閉じる。
「幸せだ」
小さく声が漏れた。
「え!?あ、ほんとだ」
お師匠様の声で外を見ると空は明るくなり、日の光がカーテンの間から漏れている。
どうやら没頭しすぎたようだ。
「一旦本読むのやめて、お風呂入ろう」
「そうですね。あ、お師匠様も入りますよね」
「うん」
「そだ、ラナンも入るよね」
『いいの?』
「君は何を気にしてるのか知らないけど、お風呂はみんなで入るのが一番楽しいと古来から決まっているんだよ」
はっ!まさかしばらく入ってなくて汚いとか?とお師匠様がラナンに聞いていた。『汚くないわよ、失礼ね😡』と言い返していた。ラナンはお師匠様に慣れたのかな?
「それはお師匠様だけの持論だから、気にしなくていいよ」
会話をしながら浴室に向かい、早速俺はお風呂を洗剤で力一杯ごしごし洗い始める。
そういえば、使った後掃除してない。いつもは魔法で綺麗にするが、今の俺は魔法が使えない。
2人に頼むわけにもいかないので、急いで洗ってお湯を張ることにした。
「手伝う?」
彼はひょこっと浴室に顔を出して様子を見てきた。
「いえ、大丈夫です!すぐに終わらせますから!」
「そう?じゃあ、お湯張りは私がするよ」
お湯も俺が張りますから、と浴槽から顔を出して答える。
「えっと、では、服を魔法で綺麗にしてほしいのですが」
「いいよ、他は?」
あっさり承諾してくれた。ありがたい。
「特にないです」
「了ー解。お風呂に入ったらやろうか」
「はい、お願いします。もうちょっと待っててください」
「わかった。さて、ラナンで遊ぼうかなー」
『嫌よ!こっち来ないで!』
バタバタと部屋の中を走り回る2人。寝てないのに元気だな。
コンコン
ドアをノックする音が聞こえて2人はピタリと止まる。
誰だ?
「おはようございます。副団長、起きていますか?」
ユース卿が朝の迎えにやってきたようだ。まずい。返事…
「起きていません」
代わりにお師匠様が返事をした。
「え!?大け、ヴィル殿!?何故副団長の部屋に?」
彼はドアの前まで歩いて近づき、後ろに手を回し組んで話をし始めた。
「いやー本読んでたら朝になっちゃって。これからお風呂なんだ」
「そ、そうなんですか💧」
「うん、そう。俺もクロードもお風呂だからもう少し後にきてくれるとありがたいんだけど」
「わかりました。また後程お伺い致します」
「はーい」
コツコツコツ と遠ざかる足音を聞いてから俺はため息をつく。危なかったー。
「さて、お風呂入ろうか」
「洗い終わったので、あとは洗い流すだけです」
浴室に入ってきたお師匠様は状況を見にきたようだ。
大丈夫かい?と聞いてきた。
「もう少し待っててください」
俺は蛇口をひねって水を流すと、彼は浴槽に向かってパチンと指を鳴らす。すると水がまわったり踊るようにして動き始めた。
「はい、完了♪」
一通り浴槽内を動きまわった水は排水口に吸い込まれるように流れていった。
また蛇口をひねってお湯を出す。
溜まるまで次着る服を用意する。
「溜まったから薬草入れるよ」
「はい」
ふわりと薬草の香りが浴室内に広がり、部屋にも香る。
「はぁーいいねぇ、懐かしい香りのするお風呂。回復するぅ」
ザバァーとお風呂の湯が浴槽から溢れ出す。
そりゃ2人と一匹(?)が入れば一人用の浴槽からお湯も溢れ出すわな。
後ろにお師匠様、前に俺、俺の前にはお風呂に小さな桶を浮かべ、その中にお湯を入れてラナンが入った。
『うあー染みるぅー』
「はぁ、少しだけ楽…」
チャプ…
お師匠様は俺の感想を聞いて、頭を撫でてきた。俺は彼にもたれ掛かる。
「まだ痛むかい?」
「いえ、このお湯に浸かっているときは普段の痛みも少しだけ楽になります。安らぐ一時と言っても過言ではないですね」
彼は俺の前に手を回してぎゅっと抱き締めてきた。
「?」
くすぐったい。というかくすぐってきた。笑って暴れるとお湯がどんどん溢れて流れていった。浴室内に俺とお師匠様の笑い声が響く。
「ははは、はぁ、そっか。それならよかったけど、あまり無理はしないようにね」
「はぁ、はっ、はい」
久々に大笑いした。楽しい。
こうしてお師匠様とお風呂でふざけるのは昔から変わらない。
『……愛、ね』
「「 …… は? 」」
のぼせたんじゃない?とお師匠様と俺とで人差し指をラナンのおでこに指の腹を当てて熱を測り出した。
『のぼせてないわ!むしろあなた達のせいでのぼせそうよ!』
「?何言ってんの?」
お師匠様が俺をぎゅっと抱き締めて、「ちょっとあの子のぼせたみたいだね」とラナンの入っている桶を指で軽く押して俺から遠ざける。
『無自覚!?無自覚なのね!恐ろしいわぁ♡』
流されながら悶えてバシャバシャと桶の中で暴れるとラナン。
その様子を見つつ、俺たちはスルー。
お師匠様は濡れた髪を掻き上げて「上がろうか?」と俺に聞いてきた。
「んー もう少しだけ入ってる…」
「そか、じゃあ、私もー」
チャプ…… とお師匠様が動く度にお湯が鳴る。
側にいる息づかいが聞こえる。
ラナンがキャーキャーと嬉しそうに騒いでいる。
薬草の香りと誰かが側にいる温かさ、薬草とお湯で安らぐ痛みと安心する時間。
お湯に揺られてゆらゆらとほんの少し揺れる無抵抗の身体を足を抱えた状態でお師匠様に少し身体を預けて瞳を閉じる。
「幸せだ」
小さく声が漏れた。
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