愛想笑いと舌打ち

明宏

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気が利きすぎる村上 4

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 「くそ、あいつがいなきゃ今頃女の子口説いてたのに」
走っていると前方にちらりとカフェがみえた。村上と絶交したらナンパでもしていこうと思った。
「やあ、今からどうだい!」村上がカフェから出てきた。
「キャア!」女みたいな声が出た。
 本気で走り、なんとか捕まらずに駅に着いた。早くしないと奴が来る。運良くホームには電車が止まっていた。
「やあ、電車止めといたよ」 
「えっ!イヤ‼︎」
 俺は通った改札を飛び越えて走った。階段でこけて転がったが、村上の恐怖に比べらばそんな痛みは感じなかった。
 くそ、あいつのせいで5駅も走ることになってしまった。2駅ほどは苦もなく走れたが(恐怖で気にならなかっただけだが)3駅目からはさすがに疲れてきた。喉はカラカラだった。
 そう思った瞬間目の前のマンホールから村上が飛び出してきた。
「はい!」村上は水の入ったコップを差し出した。
「下水じゃねえか!」俺はそのコップを叩き落とした。
 村上の神出鬼没さに精神を壊されそうになっていたが、不意に画期的なことを思いついた。
「そうだ、何か考えるから奴が来るんだ!何も考えなければ奴は来ない!」
かなり大きな声でひとりごとを言ったので通行人に変な目で見られた。
 案の定奴は来なかった。
だがさっきから頭が重い。奴が何かしたのだろうか?それぐらい滅入る重みだった。俺はたまらず足を止めた。頭を手にやると何かに触れた。俺は村上を肩車していた。
「うわ!ああ!!」
頭がしばらく真っ白になった。
「なんで、どうして、いつの間に、どうしてそこにいるんだ」
「君が何を考えているかわからなくてさ…こうしてれば君がわかると思って。」村上はとろけるような声で言った。顔は見えなかったが、たぶん頭を抱いて言ったのだろう。
「どけえ!」俺は村上を振り落として走り出した。もうあと2駅分もない。俺は痛い脚に鞭打って走った。
  なんとか家に着いた。奇跡だ。途中で殺されると思ってた。
「ただいま」嬉しい気持ちはあったが、疲れていてそうは聞こえなかっただろう。
「おかえり、大丈夫?顔真っ青よ」
「大丈夫。でもめし後でいいや」
俺は階段を上って部屋に向かった。
部屋に入ると俺は電気もつけずに、すぐにベッドに飛び込んだ。だが飛び込んだ瞬間寒気がした。俺が飛び込んだのはマットレスではなく全裸の村上だった。
「おかえり、早かったね。」
俺は村上の顔を殴った。
「君がそうしたいならそうしてくれ。」
あいかわらずしっとりとした低音だ。
「キモイー!」
「キモチイイー!」
「警察呼ぶよ」そういうと村上はニヤリと笑った。
「何だよ⁈」
「もう呼んでる」村上は手で電話のジェスチャーをした。
「おっ?」
意味をよく飲み込めないままサイレンが聞こえてきた。
 玄関から入ってきた2人の警官に村上は連れていかれた。村上は俺が殴ったために頰を腫らしていたので、被害者に間違えられたが奴は自分で白状した。もちろんそのことで俺は感謝なんてしない。
  村上は捕まったのでそれから会うことはなかった。だがそれからも俺のクマは薄くなるどころか濃くなるばかりだった。
 あれから村上がずっと夢に出てくるのだ。

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