夜行列車 2人の出会いは奇跡をもたらすのか

あい

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第五章

後悔

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 2025年 10月11日 午前7時32分

 たった今、夜行列車から降りたところだ。今から夏望の家に行く。夏望と話して、夏望と一緒に暮らしている人が叶芽だということが分かった。驚いた。偶然同じ部屋になった人が私の夫と一緒に暮らしているだなんて、そんな奇跡あるのだろうか。私たちは、今無言でひたすら夏望たちの家に向かっている。叶芽はこの後どうするのだろうか。

 2025年 10月11日 午前10時21分

 「叶芽・・・?」
 「純恋、なのか?」
 本当の本当に叶芽だった。今目の前に叶芽がいる。飛び上がるくらい嬉しかった。『家に帰ろう』、と言おうとした瞬間、叶芽が眉間にしわを寄せながら口を開く。

 「どうして、夏望と一緒にいるんだ?」
 どうしてそんなことを聞くのか分からなかったが純粋に気になっただけだろうと思い、夏望と出会った経緯を話し始めた。
 「実は今は大阪で幸奈と暮らしているんだけど、幸奈が東京行きの夜行列車のチケットを買ってくれたの。それで夜行列車に乗ったんだけどー」
 「そこで夏望と出会ったってことか?」
 「うん、そうだけど、それがどうかしたの?」
 叶芽はなんだか怒っていた。
 「俺はずっと純恋を探し続けていた。毎日!それなのになんで見つからないんだろうと疑問に思っていたが見つからない訳だ。俺のことなんか忘れて新しい生活を大阪で楽しんでいたんだろう?」
 叶芽が怒っている理由がようやく分かった。確かにそうだ。私は東京の家を捨てて、大阪に行った。それは紛れのない事実だ。
 「それにさっき幸奈からチケットを貰ったって言っていたよな?幸奈がチケットを買わなかったらお前は何もしなかったってことだろう?」
 叶芽が言っていることは全て事実だ。何も反論できない。でも、1つだけ分からないことがある。
 「夏望だって、家を出たでしょう。」
 「確かにそうだな。でも、夏望は俺と娘が心配で帰ってきてくれたんだ。でも、純恋は自分のためだろう?ただ、俺と会いたいから探しに来ただけ。」
 「それは・・・」
 「もう、いいよ。俺は俺を幸せにしてくれる人たちと暮らしたい。もう会いに来ないでくれ。」

 この後は何を言っても聞く耳を立ててはくれなかった。私が間違っていたのか、叶芽が間違っていたのかは分からない。だが、大阪に行くという選択をしたのが間違いだったのは分かる。しかし、娘のためー。いや、これも嘘かもしれない。叶芽はもういないと、心のどこかで諦めていたのだろう。大地震で離れ離れになってしまったあの日から。もうすでにこうなる未来は決まっていたのだろうか。それでも私はいつだって考える。もしあそこで東京にとどまり続けていたら、結果は違っていたかもしれないとー。
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