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第1章 幼・少年期 新たな人生編
第七話「’’特級魔術師’’」
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ルドルフはクラリスを連れて、魔物の相手をする守り人たちの元へ走った。
ゴライアスは目の前をちょこまかと走るルドルフとクラリスに攻撃を仕掛けるが、ルドルフの速さに翻弄されている。
二人は守り人達からそう遠く離れてはいなかったため、すぐに皆と合流。
たどり着くと、明らかに味方陣営が増えていた。
「アーレント! こいつらは?」
「アヴァンから派遣された騎士団の人たちだ!
救援に駆けつけてくれたらしい!」
「おお、そりゃ助かるな!」
グレイス王国第一都市・アヴァンの騎士団は、
数日前にラニカ村の近くの森の異変を感じたグレイス国王が派遣した。
総勢約三百人の騎士が、遥々アヴァンからやってきたのだ。
首都であるアヴァンからラニカ村までは馬を使っても九時間ほどかかる。
つまり、夜が明けるよりも前にアヴァンを出発したことになる。
三百人のうち、守り人の救援に駆けつけたのは八十人程度。
しかし、日々鍛えられている騎士たちであるため、十分な力になるだろう。
「ロトア! あのデカブツを倒すには、お前の魔法の力が必要だ!」
「ええ、そういうと思ったわ」
「流石は俺の妻だな」
「イチャついてる暇はねえ!
どうやってやつを攻略するんだ?!」
「私が『大技』を撃てばいいのね」
「察しが良くて助かるけど、ここまで来たら怖いな」
ルドルフは肩をすくめる。
ロトアは仮にも特級魔術師。
その気になればこの村を滅ぼすことだってできてしまうかもしれない。
『大技』と呼ばれる魔法は、通常の魔法よりも規模の大きいものを指す。
手から放たれる魔法とは違い、天に大きな魔法陣を出現させることで初めて放つことができるという難易度の高い魔法なのだ。
魔法陣が必要なのは聖級から。
故に、巨大な魔法陣を伴うのだ。
「それじゃあ、始めるわ」
ロトアは自らの長い杖の持ち手部分を地面に突き刺すように置き、口を開いた。
「――天の裂け目より出でし赫き炎よ、我が呼び声を聞き給え」
目を閉じ、ロトアは唱える。
既に、ロトアの周りに熱風が巻き起こっている。
「――大地を焦がし、虚空をも穿つ業火となれ」
「ロトアを守れぇぇぇぇ!
魔物を近づけさせるなぁぁぁぁ!」
ルドルフは喉がつぶれるほど叫んだ。
そうでもしなければ、燃え盛る火の音と魔物達の咆哮や断末魔が邪魔をして、声が通らない。
叫び、吼えて、地面を蹴って飛び出した。
ルドルフの叫ぶ声が耳に入った守り人達とアヴァン軍の騎士達は、途端にロトアを守るように立ち回った。
「ふっ! はアッ!」
ルドルフも無心で、しかしロトアを守るために、剣を振り続ける。
(ベルも待ってるんだ! こんなとこで負けてたまるかよ!)
ベルのことを頭の片隅に置きながら、襲ってくる魔物を斬り刻む。
ルドルフにとって、この程度の魔物ならば全く苦にならない。
守り人の中で一番強いのは、当然ルドルフだ。
そのため、守り人の代表人はルドルフなのだ。
散っていった守り人のために、散っていった罪なき人々のために。
そして、愛する妻《ロトア》と息子《ベル》のために、彼は戦う。
「焔の怒り、我が掌に集い――」
「あと少しだ! 全員ここで気張れぇぇぇぇ!
……はっ!」
ルドルフの視線の先には、目を閉じたまま詠唱を続けるロトア。
戦う全員の間を縫って、一体の魔物がロトアに襲い掛かる。
「ロト――」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
それを庇ったのは、クレッグだった。
身を挺して、ロトアを守ったのだ。
「クレッグ!」
「大丈夫だ! 後でロトアちゃんに治療してもらうから!」
「まったく、馬鹿な野郎だ……」
クレッグは剣で上手く攻撃を弾き、魔物を斬った。
冗談を言える余裕を見せつけたクレッグに苦笑しつつ、ルドルフはクレッグに手を差し伸べて「ありがとう」と声をかけた。
そしてロトアの詠唱によって、ゴライアスの頭上に禍々しい紫色の魔法陣が現れた。
「総員! ゴライアスから離れろ!」
ルドルフの合図で、全員が退避準備に入る。
その瞬間、ゴライアスの口が青白く光った。
「なんだ!」
「まさか、あれを俺たちに撃つつもりか……?」
みるみるうちに、その光は大きくなっていく。
ゴライアスの視線は、ルドルフ達に固定されている。
頭上の魔法陣に気が付く気配はないが、何かを企んでいる。
「――諸を焼き尽くし、世界を紅蓮に染めよ。」
「ウオオオオオオオオオオオオ!」
魔法陣が輝きを増した瞬間、ゴライアスの口から光線が放たれた。
対象は、ほぼ間違いなくロトアだろう。
ここでも、ゴライアスの知能の高さがうかがえる。
自分に攻撃を仕掛けてこようとしているロトアを、真っ先に始末しようとしているのだ。
「まずい――!」
「――盾部隊!」
「「「応!」」」
騎士団のリーダーらしき人間の声で、数人の盾を持った騎士がロトアの前に移動した。
そして盾を地面に置き、声を揃えて唱えた。
「堅盾!」
唱えたとほぼ同時に、ゴライアスから放たれた光線が盾を直撃。
寸分でも遅ければ、まとめて消し炭にされていただろう。
シールド部隊の騎士達の足が「ズルッ」と音を立てて、わずかに後退する。
歯を食いしばるシールド部隊の騎士達の後ろで、ロトアは目を閉じたまま静止している。
ただ詠唱の言葉を声に出して読むだけでは、大技は成功しない。
詠唱をしつつ、体内の魔力を魔法陣に送り込まなければならない。
中途半端なところまで言い切ってしまってから失敗すれば、詠唱はまた最初からになる。
そうなれば、魔法陣への魔力の供給もリセットされる。
もちろん、ロトアの魔力はリセットされない。
ただでさえ消費魔力の高い特級魔術。
絶対に、失敗は許されない。
確実に成功させるために、時間をかけなければならないのだ。
「くっ……!」
「頑張ってくれ!」
「お前たちが最後の砦だ!」
何もできない守り人たちは、一番前で攻撃を防いでいるシールド部隊に声援を送る。
食らえば即死は免れないだろう。
シールド部隊に、この戦いの全てが委ねられた。
後ろにいる守り人、アヴァン軍の命、そして、ラニカ村の命運が。
まだゴライアスの光線は止まらない。
一分以上、シールド部隊は耐え続けている。
彼らの持つ盾に、徐々にヒビが入っていく。
それでも、一歩も引かない。
勇敢なシールド部隊の騎士達は、雄たけびを上げて必死に耐える。
そして――、
「赫焔の咆哮よ、我が名と共に赫く燃え上がれ!
――『業火《ヘルフレイム》』」
魔法陣から、紅蓮色の炎が降り注いだ。
炎はゴライアスをまるごと包み込み、業火によって焼けていく。
光線が止まったかわりに、ロトアの放った魔法による衝撃波と土煙が襲ってくる。
だが、それでもシールド部隊は退かない。
「ウオオオオオオオオオオオ!」
ゴライアスの断末魔に近い鳴き声が、村中に響く。
「ぐっ……!」
凄まじい衝撃波のほとんどを、シールド部隊の盾が吸収した。
土煙は晴れ、全員の視界が明るくなった。
先ほどまでそこに佇んでいた巨大な魔獣は、跡形もなく消え去っていた。
ゴライアスは目の前をちょこまかと走るルドルフとクラリスに攻撃を仕掛けるが、ルドルフの速さに翻弄されている。
二人は守り人達からそう遠く離れてはいなかったため、すぐに皆と合流。
たどり着くと、明らかに味方陣営が増えていた。
「アーレント! こいつらは?」
「アヴァンから派遣された騎士団の人たちだ!
救援に駆けつけてくれたらしい!」
「おお、そりゃ助かるな!」
グレイス王国第一都市・アヴァンの騎士団は、
数日前にラニカ村の近くの森の異変を感じたグレイス国王が派遣した。
総勢約三百人の騎士が、遥々アヴァンからやってきたのだ。
首都であるアヴァンからラニカ村までは馬を使っても九時間ほどかかる。
つまり、夜が明けるよりも前にアヴァンを出発したことになる。
三百人のうち、守り人の救援に駆けつけたのは八十人程度。
しかし、日々鍛えられている騎士たちであるため、十分な力になるだろう。
「ロトア! あのデカブツを倒すには、お前の魔法の力が必要だ!」
「ええ、そういうと思ったわ」
「流石は俺の妻だな」
「イチャついてる暇はねえ!
どうやってやつを攻略するんだ?!」
「私が『大技』を撃てばいいのね」
「察しが良くて助かるけど、ここまで来たら怖いな」
ルドルフは肩をすくめる。
ロトアは仮にも特級魔術師。
その気になればこの村を滅ぼすことだってできてしまうかもしれない。
『大技』と呼ばれる魔法は、通常の魔法よりも規模の大きいものを指す。
手から放たれる魔法とは違い、天に大きな魔法陣を出現させることで初めて放つことができるという難易度の高い魔法なのだ。
魔法陣が必要なのは聖級から。
故に、巨大な魔法陣を伴うのだ。
「それじゃあ、始めるわ」
ロトアは自らの長い杖の持ち手部分を地面に突き刺すように置き、口を開いた。
「――天の裂け目より出でし赫き炎よ、我が呼び声を聞き給え」
目を閉じ、ロトアは唱える。
既に、ロトアの周りに熱風が巻き起こっている。
「――大地を焦がし、虚空をも穿つ業火となれ」
「ロトアを守れぇぇぇぇ!
魔物を近づけさせるなぁぁぁぁ!」
ルドルフは喉がつぶれるほど叫んだ。
そうでもしなければ、燃え盛る火の音と魔物達の咆哮や断末魔が邪魔をして、声が通らない。
叫び、吼えて、地面を蹴って飛び出した。
ルドルフの叫ぶ声が耳に入った守り人達とアヴァン軍の騎士達は、途端にロトアを守るように立ち回った。
「ふっ! はアッ!」
ルドルフも無心で、しかしロトアを守るために、剣を振り続ける。
(ベルも待ってるんだ! こんなとこで負けてたまるかよ!)
ベルのことを頭の片隅に置きながら、襲ってくる魔物を斬り刻む。
ルドルフにとって、この程度の魔物ならば全く苦にならない。
守り人の中で一番強いのは、当然ルドルフだ。
そのため、守り人の代表人はルドルフなのだ。
散っていった守り人のために、散っていった罪なき人々のために。
そして、愛する妻《ロトア》と息子《ベル》のために、彼は戦う。
「焔の怒り、我が掌に集い――」
「あと少しだ! 全員ここで気張れぇぇぇぇ!
……はっ!」
ルドルフの視線の先には、目を閉じたまま詠唱を続けるロトア。
戦う全員の間を縫って、一体の魔物がロトアに襲い掛かる。
「ロト――」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
それを庇ったのは、クレッグだった。
身を挺して、ロトアを守ったのだ。
「クレッグ!」
「大丈夫だ! 後でロトアちゃんに治療してもらうから!」
「まったく、馬鹿な野郎だ……」
クレッグは剣で上手く攻撃を弾き、魔物を斬った。
冗談を言える余裕を見せつけたクレッグに苦笑しつつ、ルドルフはクレッグに手を差し伸べて「ありがとう」と声をかけた。
そしてロトアの詠唱によって、ゴライアスの頭上に禍々しい紫色の魔法陣が現れた。
「総員! ゴライアスから離れろ!」
ルドルフの合図で、全員が退避準備に入る。
その瞬間、ゴライアスの口が青白く光った。
「なんだ!」
「まさか、あれを俺たちに撃つつもりか……?」
みるみるうちに、その光は大きくなっていく。
ゴライアスの視線は、ルドルフ達に固定されている。
頭上の魔法陣に気が付く気配はないが、何かを企んでいる。
「――諸を焼き尽くし、世界を紅蓮に染めよ。」
「ウオオオオオオオオオオオオ!」
魔法陣が輝きを増した瞬間、ゴライアスの口から光線が放たれた。
対象は、ほぼ間違いなくロトアだろう。
ここでも、ゴライアスの知能の高さがうかがえる。
自分に攻撃を仕掛けてこようとしているロトアを、真っ先に始末しようとしているのだ。
「まずい――!」
「――盾部隊!」
「「「応!」」」
騎士団のリーダーらしき人間の声で、数人の盾を持った騎士がロトアの前に移動した。
そして盾を地面に置き、声を揃えて唱えた。
「堅盾!」
唱えたとほぼ同時に、ゴライアスから放たれた光線が盾を直撃。
寸分でも遅ければ、まとめて消し炭にされていただろう。
シールド部隊の騎士達の足が「ズルッ」と音を立てて、わずかに後退する。
歯を食いしばるシールド部隊の騎士達の後ろで、ロトアは目を閉じたまま静止している。
ただ詠唱の言葉を声に出して読むだけでは、大技は成功しない。
詠唱をしつつ、体内の魔力を魔法陣に送り込まなければならない。
中途半端なところまで言い切ってしまってから失敗すれば、詠唱はまた最初からになる。
そうなれば、魔法陣への魔力の供給もリセットされる。
もちろん、ロトアの魔力はリセットされない。
ただでさえ消費魔力の高い特級魔術。
絶対に、失敗は許されない。
確実に成功させるために、時間をかけなければならないのだ。
「くっ……!」
「頑張ってくれ!」
「お前たちが最後の砦だ!」
何もできない守り人たちは、一番前で攻撃を防いでいるシールド部隊に声援を送る。
食らえば即死は免れないだろう。
シールド部隊に、この戦いの全てが委ねられた。
後ろにいる守り人、アヴァン軍の命、そして、ラニカ村の命運が。
まだゴライアスの光線は止まらない。
一分以上、シールド部隊は耐え続けている。
彼らの持つ盾に、徐々にヒビが入っていく。
それでも、一歩も引かない。
勇敢なシールド部隊の騎士達は、雄たけびを上げて必死に耐える。
そして――、
「赫焔の咆哮よ、我が名と共に赫く燃え上がれ!
――『業火《ヘルフレイム》』」
魔法陣から、紅蓮色の炎が降り注いだ。
炎はゴライアスをまるごと包み込み、業火によって焼けていく。
光線が止まったかわりに、ロトアの放った魔法による衝撃波と土煙が襲ってくる。
だが、それでもシールド部隊は退かない。
「ウオオオオオオオオオオオ!」
ゴライアスの断末魔に近い鳴き声が、村中に響く。
「ぐっ……!」
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