我ら月夜の白兎団

CROW莉久

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第1章 結成 「月夜の白兎団」

第1話 始まり

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 特に何か特別なことをした訳では無い。

 ただ夜中に目が覚めて、窓が開いていたから閉めに行こうとしただけだ。

 そして窓を閉めようとした時に前を見たらものすごい速さでこちらに飛んでくる謎の物体があり、左に避けようと思っただけだ。

 そしたら何故か、その物体も左に避けてきたからたまたま体とその物体がぶつかっただけである。


 体とその物体がぶつかった瞬間、とてつもなく眩い光が放たれて目を閉じた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「……ここは……」


 目を開くと、そこは真っ白で何も無い世界。

 床があるような感覚もなく、自分の体を見ると透けている。


 もしかしてここはあの世?さっきの物体、ものすごい速さだったし、割と大きかったし、直撃したから流石に死ぬか。


 などと考えながら周りを見ると、白衣を着た銀髪の人が僕とは反対の方向を向いてポケットに手を突っ込み立っていた。


「あの、ここってどこですか?」


 と声をかけるとその人はこちらを向き顔が見えた。

 性別は恐らく男で、年齢は20代くらいといったところか。

 その男性は右手を縦に振ると男性の目の前に青く透き通った画面のようなものが現れ、男性は手馴れた様子でそれを操作して口を開いた。


「おや、どうやら「力」を与える人を間違えたらしい」


 場所を聞いたのだが、なんだかよく分からない返事が来た。にしても人違いとは……


「まあ良いや、君はどうやら「能力」がまだ無くとも「力」を上手く使えたらしいからね」


 能力?力?一体なんだろう?


「能力とか力って一体なんのことですか?」


「とりあえず、その説明に入るとするね。……「能力」とは、人の中で眠っているものさ」


「体の中で眠っているもの?」


「ああ、そうだ。そしてこれは殻の様なもので覆われていてね。その殻を壊すのがさっき言った「力」という訳さ」


「なるほど」


「だけど、この「能力」はね、最初から持ってる訳じゃないんだ」


「どういうことですか?」


「「能力」は簡単に言うとその人の「願い」さ。その人が『こうなりたい』とか『こんなことしたい』と強く思うと殻の中に「能力」ができる」


 なるほど……あれ、ということは。


「さっき僕にはまだ「能力が無い」って言ってたのって……」


 と言うとその男性は頷き言った。


「君はまだ殻の中がスッカラカンという訳さ。珍しいね、殻の中がスッカラカンなんて人はあんまりいないんだけどね」


 と言うと男性はもう一度右手を縦に振り、画面を消した。


 そして笑顔で口を開いて言った。


「そういえば自己紹介がまだだったね。私は君たちの星からだいたい5億光年離れた星にいるしがない研究者さ。残念だけど名前は忘れてしまってね。けど皆からは博士と言われているよ。それと年齢は君たちで言うと300歳くらいかな」


「5億光年離れた星!? 300歳!?」


 なんか目眩がしてきた。もしかすると夢でも見ているんじゃないか?


 すると博士は手をパンと叩き言った。


「はいっそれじゃあ、君の自己紹介としようか」


「じゃあ……僕は湊宮アラタ。そこら辺にいるただの高校生……あ、高校生ってわかります?」


「もちろん、君の星のことについては色々学んだからね」


「それなら良かった。歳は16歳です」


 と言うと博士はニヤニヤしながら僕を見てきた。


「「ただの高校生」ねぇ……」


「……なんですか?」


 と聞くと博士はニヤニヤを抑えながら言った。


「なんでもないさ。そうだ何か質問はあるかい? なんだか色々聞きたそうな顔をしているけど?」


「それじゃあ、さっきも1回聞いたけどここはどこですか?」


「ああ、そういえば最初に言ってたね。ここは夢の中みたいなところだと思ってくれた方が良いかな。ついでに言うとここでの出来事は現実ではほんの一瞬だから時間の心配とかはしなくても良いよ」


「そうですか。あと、なんで僕に「力」を?」


「それはね、君たちの星にちょっとした脅威が来てね。このままだとマズいから助けようと思っただけさ」


「なるほど……ありがとうございます」


 なんだか怪しい……こんなに遠くの星の生物を助けるのか?


「あと、さっき『僕は「能力」がなくとも「力」を上手く使えてる』みたいなことを言ってたのはどういうことですか?」


「普通は「能力」が無い状態で「力」を手に入れると体が暴走して死ぬか、形が変わって怪物になって暴走するかなんだけど、原因はわからないけど君はどうやら「力」を上手く利用して体を強化しているらしい」


「それは運が良い」


「本当にただ運が良いだけなのかは知らないけど、良かった。私のミスで人1人殺してしまったら流石にマズいからね。他にも質問はあるかい?」


「僕以外に「力」を貰った人はいます?」


「もちろんいるさ。だけど人数は数えてないからわからないなぁ。そこそこの人数はいた気がするけど……」


 ウーンと博士が思い出そうとしたがすぐに諦めた。


「そういえば、「能力」がある「力」を貰った人……長いから「能力者」でいいや。でその特徴を言ってなかったね。彼らは体のどこかに黄緑色に光る模様が入っているからそれを探すと良いよ。ちなみに君にも一応首に模様は入ってるけど「能力者」と違って赤色だね」


「なるほど……」


「おっと、そういえば君の「力」についてもう少し話しておこうかな。……君の「力」と言うか他の人の「能力」もだけど意志の強さで強くなったり弱くなったりするから気をつけてね。……っと、質問はもう無いかい?」


「まぁ、もう充分聞いたかな……」


「それなら良かった。それじゃあ君の意識を現実に返すね」


「博士はこの後どうするんですか?」


「他の「能力者」達に夢を見てもらってお邪魔するかな」


「そうですか……」


「それじゃあまた会おう、アラタくん。健闘を祈るよ」


 と博士は言いながら左手で僕に手を振り、右手でまた画面を出し何かを操作する。

 意識がだんだん暗転していく。

 そして意識が途切れる直前博士が僕に何かを呟いた。


「――を頼んだよ」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 意識が覚醒し、辺りを見渡し時計を確認する。どうやら今は謎の物体がぶつかって意識を失った直後らしい。

 とりあえず、さっき言っていた首を確認する。

 すると、首の右側に赤く光る十字の模様が書かれていた。


「夢じゃなかった……」

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