6 / 226
一章/金持ち学園
4.四天王
しおりを挟む
「それにしても、この学校て世間の学校とかけ離れてると思わない?いろんな意味で」
由希が溜息がちに漏らす。
「かけ離れてるってたとえばどんな?」
「甲斐はまだ来たばかりであまり知らないと思うけど、この学校ってEクラスを除くとロクな所じゃないんだ」
健一や由希が言うに、Eクラスはほぼ全校生徒の中での最底辺奴隷扱いだという。
SからDクラスの生徒達はクラスが上という立場を利用して、Eクラスを徹底的なイジメと従者制度で笑いものにするのだとか。
「SからEまであってSが最優秀クラス。それからAからEまで続いて、成績や家柄の良い順にクラス編成される。俺達はEクラス。つまり最底辺奴隷クラスだ。何してもいいって思われて、Eクラス以外の在校生達から常に見下されているんだ」
本木が疲れた顔で説明する。
つまり、???>>SとAクラス>>越えられない壁>>B~Dクラス>>工業科全般>>Eクラスというカースト制度で成り立っていると説明された。
「その従者制度というのがあってまた厄介。一度選ばれるとずっとパシリにされるのよ。主人の命令は絶対に服従で。選ぶのは大体Sクラスの生徒で選ばれるのはEクラス」
「まあ上級クラスの生徒と関わりにならなければ従者に選ばれることはないわけで、おとなしくしてりゃあ従者にならずに平和に暮らせるんだ。触らぬSクラスに祟りなしってな。だからここ二年ほどは従者にされる事もなくまだ平和ってところか」
「でも、従者制度より一番厄介なのは【四天王】の事かな」
宮本が疲れたように目を伏せる。
「四天王……?」
甲斐は首をかしげた。そういえば最近テレビで特集していたな。
「日本の四大貴族とも言われている。超大金持ちの四人組だ」
理事長すらも手ごまのように操る者がいて、それ以上にあらゆる権力者の背後から隠れて嘲笑う者たち。それが四天王なんだとか。
「四天王ってあれだろ。世の女の子達を手玉に取るようなチャラチャラしたイケメン四人衆の事だろ。制服を一切着ないでいつも私服姿の。開星の特集で見た記憶がある。各個人の名前も顔も覚えてないが。あんな若造どもが理事長より立場はさらに上なのか。世も末だな」
「開星学園の全てを牛耳っているんだ。あいつらからすれば理事長などただの下僕。あいつらが好き放題やってるせいで奴隷制度がまかり通り、荒廃する一方なんだ。世の女の子達は彼らの甘いマスク、そして絶大なる権力に酔って騙されているけど、あいつらは悪党だ。悪党の四人組だよ」
「自分より下の者を平気で傷つける蛮族みたいなものだよ。僕達のような権力のない者相手にストレス発散の道具……いや、ヒマつぶしのおもちゃみたいに弄ぶのさ」
彼らは一様に四天王の事を恨みがましく話す。日ごろから酷い目にあっているらしい。
「……それだけ聞いたら最低だなそいつら」
「四天王には誰も逆らえない。四人とも普通の金持ちじゃ太刀打ちできない程の権力者だから。でも、悠里のおかげでこのEクラスだけはあまり被害がないんだ」
「神山さんのおかげ?」
首を傾げると、悠里が恥ずかしそうに苦笑する。
「私のおかげかはわからないけど、いつもクラスメート達に酷い事はするなって口酸っぱく言い続けているんだ。だから、比較的このクラスだけはあまり被害はないみたいだけど……でも、他の学年のEクラス達が可哀想だなって思うよ」
「他の三年と一年のEクラスか。ていうか神山さんの言う事は聞くんだなその四天王って。神山さんもEクラスのうちの一人なのに」
「一応、私は四天王達とは知り合いだから。友里香ちゃん繋がりでその兄とも」
「ああ、なるほど。じゃあ神山さんがその四天王とやらの暴走の抑止力になっているわけだな」
「だけど、悠里ちゃんが風邪とかでいない日なんて悲惨だよ。いきなり四天王の一人がつまらないから楽しませろって命令出して、全校集会終了後に僕達Eクラスを体育館に閉じ込めたんだ。閉じ込められた僕達は出るに出られなくてしばらく待っていると、突然蛇やらカエル数百匹が天井から降ってくる有様で……もうEクラス全員は大パニック。今思い出しても背筋が震えちゃう思いだよ」
「そうそう!四天王やら在校生共は爆笑して見てるんだから頭にキタよ」
「……そんな事されたのか。ガキの悪戯かよ」
蛇やカエルとはえげつない話である。蛇は自分の実家の周りによく生息しているのでわけないが、人によっては全くダメな者もいるのでご愁傷様ですとしか言えない。
「中でも銀髪の矢崎直とチャラ男の相田拓実が最悪。もう傲慢で非情で血も涙もない悪魔。何度Eクラスの生徒が標的にされたかってくらい、いろいろ陰湿な事されたよね」
「ああ。ほんとに今までよく誰も退学せずに生きてこれたもんだって感じだよ。Eクラスのみんなで肩を寄せ合って助け合ったりしてさ」
由希と健一達が辛かったねとしみじみ語りあっている。
「そんなひどい目にあったのか」
矢崎直って友里香ちゃんの兄の事だろう。苗字が同じなので。
そんな奴が友里香ちゃんの兄って想像つかんな。そんな性悪野郎なのか。
「この間はテストの答案を全校生徒の前でばらされたり、人格否定されたり、鬼ごっことか称してEクラスを追い回したりしてきたわ。多分、明日にある全校集会の時にも絶対何かされると思う。架谷くんも初めて四天王のひどさを体験すると思うから、身構えておいた方がいいよ。あと、制服汚れると思うから着替えとジャージは常時準備しておいた方がいいね」
「わ、わかった」
Eクラスというだけで奴隷やいじめの対象にされるなんて理不尽だ。と、甲斐は思ったのだった。
*
同時刻、矢崎の傘下の【帝都クラウンホテル】最上階スイートルームにて―――
「ン……な、お……ッ」
まだ昼間にも関わらず、軋むベットの上で乱れる裸の少女。開星の生徒の一人である。
脱ぎ捨てられた制服はベットの床下に乱雑に捨てられている。相手をほとんど強姦みたいにベットに押し倒して、少女の制服を強引にはぎ取って、体を貪った。ただ、己のためだけのストレス発散と性欲処理のために。
気にくわなければ暴力に訴えてスル事もあるし、力づくで無理やり犯す事だってある。その日の気分次第。飽きたら捨てればいいだけの事。黙っていてもこの容姿と財力のおかげで、勝手に女がホイホイ寄ってくるのだから相手には困らない。そうして捨てた相手がどうなろうがこっちは知った事じゃあないし、知りたいとも思わない。
女なんてチョレー存在。イケメンで財力があるとわかれば媚び諂ってくる花畑な生き物。
いい男と付き合える事は一種の女のアクセサリーやステータスだと思っていて、ようするに自分の価値に酔っているだけ。ならばこちらも女を下に見て、たくさんの女とヤれれば男としての箔がつくとでも言えば文句ないだろ。
男も女も欲望には忠実。
自分より下の人間など金さえ出しとけば尻尾を振る駄犬に過ぎない。
ただの駒であり、奴隷だ。
「アッ……直……し、幸せ……直にセックスで……あ、愛されて……」
直と呼ばれた美青年は黒く滑稽に笑う。
学校で見せていた華やかな一面とは打って変わって黒ずんだ瞳を見せた。
「愛されて?くだらない。たかが性奴隷が粋がるな……ドブスの成金が」
「アッんッ……それでも……幸せだから……」
つまらない返答だ。
こういう時しか使えないくせに、恋だの愛だのに酔っている女ほどくだらないものはない。はやく終わらせて捨ててやろうと直は思ったのだった。
「あーつまんなーい。なーんかおもしろそうな事ないかなァ」
ここは四天王のたまり場の高級ラウンジ。校舎の最上階に存在し、ガラス張りの壁から都会の景色を一望できる夜景の絶景ポイントでもある。一般生徒は入る事は許されず、生徒会すらも立ち入り禁止の区域。四天王に了解を得た者のみ入場が許可される。
全てが最高級品の調度品で、飲み物や食べ物など備え付けパネルを押せば自動的に運んでくれるオーダー式である。他にも休憩所や執務室などもあり、それぞれの仕事がある時はここで過ごすこともある。
「さっきからうるさいぞ、拓実」
眼鏡をかけた青年が苛立ちを口にする。
「だってぇー女の子達とゲームしてるのも飽きたしィ」
拓実と呼ばれた四天王の一人は、年上の美女五人をはべらかせている。名前は相田拓実。茶髪のハーフアップを揺らしている。四天王の中で一番女遊びがひどくて軽薄なチャラ男で、退屈だと先ほどからずっと喚いている。
そのすぐ前の席には常に冷静で口数の少ない久瀬晴也がパソコンを弄っている。
黒髪で眼鏡をかけた学園一の秀才。彼も四天王の一人。
「お前はいつもそればかりだな」
「俺は退屈が大嫌いだからね。あーつまんないつまんない。Eクラスの子達でも呼んで遊んじゃおうかなぁ。楽しい楽しい鬼ごっことか」
「またそれか。そんなものよく楽しめるな。Eクラスの生徒をいじめてそれで楽しめるのはお前と穂高くらいなものだぞ。直もたまに面白がっているがな」
「そういうハルちゃんはいっつもパソコン見てさ、まぁた株やFX見たり勉強でもしてんの?」
「俺は人を弄んだり陥れたりして楽しむ事になんの面白みもわかん。そんな事をしているくらいなら、お前のいう株かFXの方が楽しい」
「真面目ね~ハルくんは。人生楽しまないと損でしょ」
「お前みたいなのは俺はごめんだ」
ハルが眼鏡をクイっと上にあげる。
「あれー珍しい、ハル君がここに来てるー」
そこへ、いつもニコニコ笑顔で何を考えているかわからない穂高尚也がやってきた。
彼もまた四天王の一人。金髪の王子様のような外見とは裏腹に常に笑顔なので真意が読めない男である。
「俺は拓実がどうしても来いというから来てやっただけだ。全く、人をなんだと思っているのか……ぶつぶつ」
「穂高ちゃん、ねーねーなんか面白い事なーい?オイラヒマでさぁー」
女の腰を抱きしめながら相田が楽しそうに訊く。
「うーん……ぼくも残念ながらヒマでさぁーなんか面白い事ないか逆に拓実くんに聞きたいくらいだよ」
「えーーそんなぁ。じゃあ直にまた面白い遊び聞こうかなぁ」
「残念だけど、直くんは今これないと思うよ。さっき学校サボってどっか行っちゃったの見たし。たぶんいつもの子とホテルだと思うよ」
穂高がニコニコそう答えると、相田はつまらなさそうに舌打ちした。
「ちっ、ホテルかぁ。直ってばどんだけセフレとしまくってんだか。この間はモデルの子だったっけ。今回はどっかの令嬢だったけどまた捨てそうだね。見境ないね」
「それは拓実君もじゃないの。四つ股してるって聞いたよ」
「いーじゃん四つ股くらい~。オイラ愛なんて信じないし、今のうちに遊んでおかないと損っしょ。将来、どうせ好きでもない相手と政略結婚する事になるんなら、な・お・さ・ら」
相田はあきらめを悟っているようにそう言うと、このラウンジになんとも言えない空気が漂った。同意するように穂高もハルも出された飲み物を一口含む。将来を見据えてしんみりとしていた。
「まだここにいやがったのか貴様ら」
グレイのGパンと黒いシャツ姿で現れたのは矢崎直。
曲者ぞろいの四天王の中で一番の冷酷な男で、学園の中でも絶対的王者の帝王と呼ばれている。
「あれれ?直はセフレと一緒じゃなかったん?」
「萎えたから捨ててきた」と、まるでどうでもいいように答える。
「捨てて来たって……犬や猫じゃないんだからもうちょっと優しくしてあげなきゃね~女の子にはさ」
「四つ股してるテメーには言われたくねぇな、拓実」
「いいじゃない別に。相手の子達も喜んでくれてるし、俺も気持ちよくなれて一石二鳥。だいたい直はさぁ~そんな邪険な扱いばっかしてるといつか後悔するよ。好きな子相手にはさ」
「え、直君好きな子いるの?」
ニュースだと食いつく穂高。
「んなモンいるわけねーだろ。勝手に作るな」
「えーいたら面白そうなのになぁ」
「そんなもんいねえし、作る気にもならん」
「でもそう言う奴ほど、案外好きで好きでたまんない子がこの先出来たりするんだよね。あのガードが固い悠里ちゃんや友里香ちゃんだって、なんか恋してるみたいだし」
「は……友里香と悠里……?」
呆気にとられる直。
由希が溜息がちに漏らす。
「かけ離れてるってたとえばどんな?」
「甲斐はまだ来たばかりであまり知らないと思うけど、この学校ってEクラスを除くとロクな所じゃないんだ」
健一や由希が言うに、Eクラスはほぼ全校生徒の中での最底辺奴隷扱いだという。
SからDクラスの生徒達はクラスが上という立場を利用して、Eクラスを徹底的なイジメと従者制度で笑いものにするのだとか。
「SからEまであってSが最優秀クラス。それからAからEまで続いて、成績や家柄の良い順にクラス編成される。俺達はEクラス。つまり最底辺奴隷クラスだ。何してもいいって思われて、Eクラス以外の在校生達から常に見下されているんだ」
本木が疲れた顔で説明する。
つまり、???>>SとAクラス>>越えられない壁>>B~Dクラス>>工業科全般>>Eクラスというカースト制度で成り立っていると説明された。
「その従者制度というのがあってまた厄介。一度選ばれるとずっとパシリにされるのよ。主人の命令は絶対に服従で。選ぶのは大体Sクラスの生徒で選ばれるのはEクラス」
「まあ上級クラスの生徒と関わりにならなければ従者に選ばれることはないわけで、おとなしくしてりゃあ従者にならずに平和に暮らせるんだ。触らぬSクラスに祟りなしってな。だからここ二年ほどは従者にされる事もなくまだ平和ってところか」
「でも、従者制度より一番厄介なのは【四天王】の事かな」
宮本が疲れたように目を伏せる。
「四天王……?」
甲斐は首をかしげた。そういえば最近テレビで特集していたな。
「日本の四大貴族とも言われている。超大金持ちの四人組だ」
理事長すらも手ごまのように操る者がいて、それ以上にあらゆる権力者の背後から隠れて嘲笑う者たち。それが四天王なんだとか。
「四天王ってあれだろ。世の女の子達を手玉に取るようなチャラチャラしたイケメン四人衆の事だろ。制服を一切着ないでいつも私服姿の。開星の特集で見た記憶がある。各個人の名前も顔も覚えてないが。あんな若造どもが理事長より立場はさらに上なのか。世も末だな」
「開星学園の全てを牛耳っているんだ。あいつらからすれば理事長などただの下僕。あいつらが好き放題やってるせいで奴隷制度がまかり通り、荒廃する一方なんだ。世の女の子達は彼らの甘いマスク、そして絶大なる権力に酔って騙されているけど、あいつらは悪党だ。悪党の四人組だよ」
「自分より下の者を平気で傷つける蛮族みたいなものだよ。僕達のような権力のない者相手にストレス発散の道具……いや、ヒマつぶしのおもちゃみたいに弄ぶのさ」
彼らは一様に四天王の事を恨みがましく話す。日ごろから酷い目にあっているらしい。
「……それだけ聞いたら最低だなそいつら」
「四天王には誰も逆らえない。四人とも普通の金持ちじゃ太刀打ちできない程の権力者だから。でも、悠里のおかげでこのEクラスだけはあまり被害がないんだ」
「神山さんのおかげ?」
首を傾げると、悠里が恥ずかしそうに苦笑する。
「私のおかげかはわからないけど、いつもクラスメート達に酷い事はするなって口酸っぱく言い続けているんだ。だから、比較的このクラスだけはあまり被害はないみたいだけど……でも、他の学年のEクラス達が可哀想だなって思うよ」
「他の三年と一年のEクラスか。ていうか神山さんの言う事は聞くんだなその四天王って。神山さんもEクラスのうちの一人なのに」
「一応、私は四天王達とは知り合いだから。友里香ちゃん繋がりでその兄とも」
「ああ、なるほど。じゃあ神山さんがその四天王とやらの暴走の抑止力になっているわけだな」
「だけど、悠里ちゃんが風邪とかでいない日なんて悲惨だよ。いきなり四天王の一人がつまらないから楽しませろって命令出して、全校集会終了後に僕達Eクラスを体育館に閉じ込めたんだ。閉じ込められた僕達は出るに出られなくてしばらく待っていると、突然蛇やらカエル数百匹が天井から降ってくる有様で……もうEクラス全員は大パニック。今思い出しても背筋が震えちゃう思いだよ」
「そうそう!四天王やら在校生共は爆笑して見てるんだから頭にキタよ」
「……そんな事されたのか。ガキの悪戯かよ」
蛇やカエルとはえげつない話である。蛇は自分の実家の周りによく生息しているのでわけないが、人によっては全くダメな者もいるのでご愁傷様ですとしか言えない。
「中でも銀髪の矢崎直とチャラ男の相田拓実が最悪。もう傲慢で非情で血も涙もない悪魔。何度Eクラスの生徒が標的にされたかってくらい、いろいろ陰湿な事されたよね」
「ああ。ほんとに今までよく誰も退学せずに生きてこれたもんだって感じだよ。Eクラスのみんなで肩を寄せ合って助け合ったりしてさ」
由希と健一達が辛かったねとしみじみ語りあっている。
「そんなひどい目にあったのか」
矢崎直って友里香ちゃんの兄の事だろう。苗字が同じなので。
そんな奴が友里香ちゃんの兄って想像つかんな。そんな性悪野郎なのか。
「この間はテストの答案を全校生徒の前でばらされたり、人格否定されたり、鬼ごっことか称してEクラスを追い回したりしてきたわ。多分、明日にある全校集会の時にも絶対何かされると思う。架谷くんも初めて四天王のひどさを体験すると思うから、身構えておいた方がいいよ。あと、制服汚れると思うから着替えとジャージは常時準備しておいた方がいいね」
「わ、わかった」
Eクラスというだけで奴隷やいじめの対象にされるなんて理不尽だ。と、甲斐は思ったのだった。
*
同時刻、矢崎の傘下の【帝都クラウンホテル】最上階スイートルームにて―――
「ン……な、お……ッ」
まだ昼間にも関わらず、軋むベットの上で乱れる裸の少女。開星の生徒の一人である。
脱ぎ捨てられた制服はベットの床下に乱雑に捨てられている。相手をほとんど強姦みたいにベットに押し倒して、少女の制服を強引にはぎ取って、体を貪った。ただ、己のためだけのストレス発散と性欲処理のために。
気にくわなければ暴力に訴えてスル事もあるし、力づくで無理やり犯す事だってある。その日の気分次第。飽きたら捨てればいいだけの事。黙っていてもこの容姿と財力のおかげで、勝手に女がホイホイ寄ってくるのだから相手には困らない。そうして捨てた相手がどうなろうがこっちは知った事じゃあないし、知りたいとも思わない。
女なんてチョレー存在。イケメンで財力があるとわかれば媚び諂ってくる花畑な生き物。
いい男と付き合える事は一種の女のアクセサリーやステータスだと思っていて、ようするに自分の価値に酔っているだけ。ならばこちらも女を下に見て、たくさんの女とヤれれば男としての箔がつくとでも言えば文句ないだろ。
男も女も欲望には忠実。
自分より下の人間など金さえ出しとけば尻尾を振る駄犬に過ぎない。
ただの駒であり、奴隷だ。
「アッ……直……し、幸せ……直にセックスで……あ、愛されて……」
直と呼ばれた美青年は黒く滑稽に笑う。
学校で見せていた華やかな一面とは打って変わって黒ずんだ瞳を見せた。
「愛されて?くだらない。たかが性奴隷が粋がるな……ドブスの成金が」
「アッんッ……それでも……幸せだから……」
つまらない返答だ。
こういう時しか使えないくせに、恋だの愛だのに酔っている女ほどくだらないものはない。はやく終わらせて捨ててやろうと直は思ったのだった。
「あーつまんなーい。なーんかおもしろそうな事ないかなァ」
ここは四天王のたまり場の高級ラウンジ。校舎の最上階に存在し、ガラス張りの壁から都会の景色を一望できる夜景の絶景ポイントでもある。一般生徒は入る事は許されず、生徒会すらも立ち入り禁止の区域。四天王に了解を得た者のみ入場が許可される。
全てが最高級品の調度品で、飲み物や食べ物など備え付けパネルを押せば自動的に運んでくれるオーダー式である。他にも休憩所や執務室などもあり、それぞれの仕事がある時はここで過ごすこともある。
「さっきからうるさいぞ、拓実」
眼鏡をかけた青年が苛立ちを口にする。
「だってぇー女の子達とゲームしてるのも飽きたしィ」
拓実と呼ばれた四天王の一人は、年上の美女五人をはべらかせている。名前は相田拓実。茶髪のハーフアップを揺らしている。四天王の中で一番女遊びがひどくて軽薄なチャラ男で、退屈だと先ほどからずっと喚いている。
そのすぐ前の席には常に冷静で口数の少ない久瀬晴也がパソコンを弄っている。
黒髪で眼鏡をかけた学園一の秀才。彼も四天王の一人。
「お前はいつもそればかりだな」
「俺は退屈が大嫌いだからね。あーつまんないつまんない。Eクラスの子達でも呼んで遊んじゃおうかなぁ。楽しい楽しい鬼ごっことか」
「またそれか。そんなものよく楽しめるな。Eクラスの生徒をいじめてそれで楽しめるのはお前と穂高くらいなものだぞ。直もたまに面白がっているがな」
「そういうハルちゃんはいっつもパソコン見てさ、まぁた株やFX見たり勉強でもしてんの?」
「俺は人を弄んだり陥れたりして楽しむ事になんの面白みもわかん。そんな事をしているくらいなら、お前のいう株かFXの方が楽しい」
「真面目ね~ハルくんは。人生楽しまないと損でしょ」
「お前みたいなのは俺はごめんだ」
ハルが眼鏡をクイっと上にあげる。
「あれー珍しい、ハル君がここに来てるー」
そこへ、いつもニコニコ笑顔で何を考えているかわからない穂高尚也がやってきた。
彼もまた四天王の一人。金髪の王子様のような外見とは裏腹に常に笑顔なので真意が読めない男である。
「俺は拓実がどうしても来いというから来てやっただけだ。全く、人をなんだと思っているのか……ぶつぶつ」
「穂高ちゃん、ねーねーなんか面白い事なーい?オイラヒマでさぁー」
女の腰を抱きしめながら相田が楽しそうに訊く。
「うーん……ぼくも残念ながらヒマでさぁーなんか面白い事ないか逆に拓実くんに聞きたいくらいだよ」
「えーーそんなぁ。じゃあ直にまた面白い遊び聞こうかなぁ」
「残念だけど、直くんは今これないと思うよ。さっき学校サボってどっか行っちゃったの見たし。たぶんいつもの子とホテルだと思うよ」
穂高がニコニコそう答えると、相田はつまらなさそうに舌打ちした。
「ちっ、ホテルかぁ。直ってばどんだけセフレとしまくってんだか。この間はモデルの子だったっけ。今回はどっかの令嬢だったけどまた捨てそうだね。見境ないね」
「それは拓実君もじゃないの。四つ股してるって聞いたよ」
「いーじゃん四つ股くらい~。オイラ愛なんて信じないし、今のうちに遊んでおかないと損っしょ。将来、どうせ好きでもない相手と政略結婚する事になるんなら、な・お・さ・ら」
相田はあきらめを悟っているようにそう言うと、このラウンジになんとも言えない空気が漂った。同意するように穂高もハルも出された飲み物を一口含む。将来を見据えてしんみりとしていた。
「まだここにいやがったのか貴様ら」
グレイのGパンと黒いシャツ姿で現れたのは矢崎直。
曲者ぞろいの四天王の中で一番の冷酷な男で、学園の中でも絶対的王者の帝王と呼ばれている。
「あれれ?直はセフレと一緒じゃなかったん?」
「萎えたから捨ててきた」と、まるでどうでもいいように答える。
「捨てて来たって……犬や猫じゃないんだからもうちょっと優しくしてあげなきゃね~女の子にはさ」
「四つ股してるテメーには言われたくねぇな、拓実」
「いいじゃない別に。相手の子達も喜んでくれてるし、俺も気持ちよくなれて一石二鳥。だいたい直はさぁ~そんな邪険な扱いばっかしてるといつか後悔するよ。好きな子相手にはさ」
「え、直君好きな子いるの?」
ニュースだと食いつく穂高。
「んなモンいるわけねーだろ。勝手に作るな」
「えーいたら面白そうなのになぁ」
「そんなもんいねえし、作る気にもならん」
「でもそう言う奴ほど、案外好きで好きでたまんない子がこの先出来たりするんだよね。あのガードが固い悠里ちゃんや友里香ちゃんだって、なんか恋してるみたいだし」
「は……友里香と悠里……?」
呆気にとられる直。
46
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ファントムペイン
粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。
理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。
主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。
手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった……
手足を失った恋人との生活。鬱系BL。
※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる