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十章/さみしがりや
74.寂しがりや
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他の四天王は出払っていて当然誰もいないが、この広いラウンジのど真ん中で抱きしめられると落ち着かない。
「く、苦しいだろうがよ」
「お前と一緒にいる時くらい充電させろよ」
「もう……」
しょうがないと思いつつ、甲斐は黙って直に抱きしめられる。
こういう言動が本当に小さな子供みたいである。小さな子供が親に縋るようにして自分を求めてくる感じ。大人びていると思えば妙に幼い一面。
なんだかちょっと可愛いと思ってしまった甲斐は、直の頭を撫でた。
「寂しがりやちゃんだな」
「悪いかよ」
「別に悪かないけど、どうしてそんな寂しそうなのかって思って」
「誰にも甘えた事なんてないから……」
深海の切なげな瞳に自分が映る。
「直……」
いつも強気で傲慢な態度の裏には深い孤独があるのかもしれない。
「なあ、キスしたい」
切なげな瞳から愛おしさを含んだものに変わる。
「っ……」
「朝、言っただろ。激しいのするって。ほしいな。お前の愛」
そう言いながら勝手に顔を近づけてきて、甲斐の腰に手をまわす。
「ちょ、ちょっとタンマ!まだ、心の準備が」
「やだ。我慢できね」
きっぱりそう言われ、問答無用で勢いよく唇を重ねられた。
重ねるだけのものが徐々に激しくなり、何度も角度を変えられて求められる。
しんと静まり返るラウンジに響くリップ音が大きくなると、唇を舌で舐めあげられた末に口の中に直の舌が入ってくる。驚いて奥へ引っ込めようとするが、舌であっさり絡め取られていろいろ吸ったり舐めたりされる。
有言実行通り、この男が満足するまで唇を奪われ続けてしまった。容赦ないこの激しさ。頭が真っ白で呼吸困難になりかける。
抵抗する気力が出てこないくらい気持ちがよすぎて、じゃなくて巧すぎて、この男の百戦錬磨な具合が手に取るようにわかってしまった。かなりヤリ慣れているんだろうなあって悲しくなったのはここだけの話。
「どうしたんだよ」
浮かない表情を気にしているのだろう。
「なんでもねえよバカ」
今更変えられない事実に悲しくなっても仕方がない。相手の方がこういう経験において一枚も二枚も上手なのだから。
「そういや修学旅行の泊まる宿な、オレとお前だけ別宿にしたから」
「へーそうなんだー……って、は!?」
驚きに口をあんぐり開ける甲斐。
「邪魔されたくないからそうした。一緒な離れの部屋だ。楽しみだな」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……」
「なんだよ……嫌なのかよ。オレと一緒にいるの」
途端に寂しげな顔になるのはギャップがありすぎる。
「そういうんじゃねーよ。なんか俺だけ特別みたいじゃないか」
「特別だろ。オレの恋人なんだから」
「っ、いや、たしかにそうなんだけどよ、クラスメート達に不審に思われるというかなんというか」
「あーゴチャゴチャうるせえな」
直は頭をガシガシかいて向き直る。
「恵梨とかにそれとなく説明しておくから大丈夫だ」
「篠宮だけに言ってもなぁ……他の奴らとかいるだろ」
「オレの事を信じろよ。なんとかしておくから。せっかくの二人だけの時間なんだからもう何も言うな」
この男自身も忙しい身だから、なかなか一緒にいられないからこその発言だろう。
「オレはお前と一緒にいられればなんだっていいんだ。これ以上、何も我儘言わないから。だから一緒にいろよ」
そう切実に言いくるめられて、修学旅行の宿は直と一緒になってしまうのであった。
*
「へぇ、無才学園の修学旅行もこの時期なのか」
そんな話を聞いたのは六限目の学年集会での事、各々旅行先別での打ち合わせをしている最中であった。
体育祭の時にいろいろ騒動を起こしてくれた野郎学園なのは記憶に新しいが、旅行時期が一緒だと聞き、なんだか嫌な予感がする。と、思った案の定、
「え、しかもあいつらも同じ京都とかで同じ日!?うそでしょ!?」
おいおい!そこは海外じゃねーのか海外じゃあ!おまんら金持ち学園だろ!?なんでいつでも行ける国内旅行にすんだよ!金持ちは金持ちらしく海外で金落として来やがれよなー!
と、猛烈に拡声器で連中に向かって言いたい甲斐。先が思いやられる旅行になりそうだ。
「同じ日に同じ行き先。ぜってぇ会いそうな気がする」
「……だね。あいつら開星にスパイ送り込むくらい四天王をライバル視してるから」
ため息交じりに話す宮本は、無才の嫌な思い出を思い返している。
「でも、あのKYなのがいなくなっただけマシだと思うぞ」と、本木。
「まあな。アレがいたからあの生徒会はおかしくなったんだろうけど、でもあの生徒会共はそうでなくても曲者だ」
Eクラス達が懸念を抱く一方で、当然四天王にも無才の連中と旅行先と日程がかぶった事が耳に入っていた。
おもしろい事が大好きな相田や穂高はともかくとして、直はいわずもがな甲斐と同じ反応を示し、ハルはまた面倒な事になりそうだなと呟いていた。
しかし、かつてのKYの信者だった頃の生徒会とはうって変わり、今の無才学園の生徒会は至って真面目で普通に仕事をしているらしい。
あの天草時雨と武者小路銀という厨二くさい名前の会長ズは心を入れ替えて、真っ向から開星学園と戦おうと闘志を燃やしていると聞く。残りのチャラ男風会計の田所正也も、コミュ障な篠田弘毅も、打倒開星に目を光らせているのだとか。
できれば大人しくして頂きたいのがこちらの願いである。
「く、苦しいだろうがよ」
「お前と一緒にいる時くらい充電させろよ」
「もう……」
しょうがないと思いつつ、甲斐は黙って直に抱きしめられる。
こういう言動が本当に小さな子供みたいである。小さな子供が親に縋るようにして自分を求めてくる感じ。大人びていると思えば妙に幼い一面。
なんだかちょっと可愛いと思ってしまった甲斐は、直の頭を撫でた。
「寂しがりやちゃんだな」
「悪いかよ」
「別に悪かないけど、どうしてそんな寂しそうなのかって思って」
「誰にも甘えた事なんてないから……」
深海の切なげな瞳に自分が映る。
「直……」
いつも強気で傲慢な態度の裏には深い孤独があるのかもしれない。
「なあ、キスしたい」
切なげな瞳から愛おしさを含んだものに変わる。
「っ……」
「朝、言っただろ。激しいのするって。ほしいな。お前の愛」
そう言いながら勝手に顔を近づけてきて、甲斐の腰に手をまわす。
「ちょ、ちょっとタンマ!まだ、心の準備が」
「やだ。我慢できね」
きっぱりそう言われ、問答無用で勢いよく唇を重ねられた。
重ねるだけのものが徐々に激しくなり、何度も角度を変えられて求められる。
しんと静まり返るラウンジに響くリップ音が大きくなると、唇を舌で舐めあげられた末に口の中に直の舌が入ってくる。驚いて奥へ引っ込めようとするが、舌であっさり絡め取られていろいろ吸ったり舐めたりされる。
有言実行通り、この男が満足するまで唇を奪われ続けてしまった。容赦ないこの激しさ。頭が真っ白で呼吸困難になりかける。
抵抗する気力が出てこないくらい気持ちがよすぎて、じゃなくて巧すぎて、この男の百戦錬磨な具合が手に取るようにわかってしまった。かなりヤリ慣れているんだろうなあって悲しくなったのはここだけの話。
「どうしたんだよ」
浮かない表情を気にしているのだろう。
「なんでもねえよバカ」
今更変えられない事実に悲しくなっても仕方がない。相手の方がこういう経験において一枚も二枚も上手なのだから。
「そういや修学旅行の泊まる宿な、オレとお前だけ別宿にしたから」
「へーそうなんだー……って、は!?」
驚きに口をあんぐり開ける甲斐。
「邪魔されたくないからそうした。一緒な離れの部屋だ。楽しみだな」
「いや、そういう問題じゃなくてだな……」
「なんだよ……嫌なのかよ。オレと一緒にいるの」
途端に寂しげな顔になるのはギャップがありすぎる。
「そういうんじゃねーよ。なんか俺だけ特別みたいじゃないか」
「特別だろ。オレの恋人なんだから」
「っ、いや、たしかにそうなんだけどよ、クラスメート達に不審に思われるというかなんというか」
「あーゴチャゴチャうるせえな」
直は頭をガシガシかいて向き直る。
「恵梨とかにそれとなく説明しておくから大丈夫だ」
「篠宮だけに言ってもなぁ……他の奴らとかいるだろ」
「オレの事を信じろよ。なんとかしておくから。せっかくの二人だけの時間なんだからもう何も言うな」
この男自身も忙しい身だから、なかなか一緒にいられないからこその発言だろう。
「オレはお前と一緒にいられればなんだっていいんだ。これ以上、何も我儘言わないから。だから一緒にいろよ」
そう切実に言いくるめられて、修学旅行の宿は直と一緒になってしまうのであった。
*
「へぇ、無才学園の修学旅行もこの時期なのか」
そんな話を聞いたのは六限目の学年集会での事、各々旅行先別での打ち合わせをしている最中であった。
体育祭の時にいろいろ騒動を起こしてくれた野郎学園なのは記憶に新しいが、旅行時期が一緒だと聞き、なんだか嫌な予感がする。と、思った案の定、
「え、しかもあいつらも同じ京都とかで同じ日!?うそでしょ!?」
おいおい!そこは海外じゃねーのか海外じゃあ!おまんら金持ち学園だろ!?なんでいつでも行ける国内旅行にすんだよ!金持ちは金持ちらしく海外で金落として来やがれよなー!
と、猛烈に拡声器で連中に向かって言いたい甲斐。先が思いやられる旅行になりそうだ。
「同じ日に同じ行き先。ぜってぇ会いそうな気がする」
「……だね。あいつら開星にスパイ送り込むくらい四天王をライバル視してるから」
ため息交じりに話す宮本は、無才の嫌な思い出を思い返している。
「でも、あのKYなのがいなくなっただけマシだと思うぞ」と、本木。
「まあな。アレがいたからあの生徒会はおかしくなったんだろうけど、でもあの生徒会共はそうでなくても曲者だ」
Eクラス達が懸念を抱く一方で、当然四天王にも無才の連中と旅行先と日程がかぶった事が耳に入っていた。
おもしろい事が大好きな相田や穂高はともかくとして、直はいわずもがな甲斐と同じ反応を示し、ハルはまた面倒な事になりそうだなと呟いていた。
しかし、かつてのKYの信者だった頃の生徒会とはうって変わり、今の無才学園の生徒会は至って真面目で普通に仕事をしているらしい。
あの天草時雨と武者小路銀という厨二くさい名前の会長ズは心を入れ替えて、真っ向から開星学園と戦おうと闘志を燃やしていると聞く。残りのチャラ男風会計の田所正也も、コミュ障な篠田弘毅も、打倒開星に目を光らせているのだとか。
できれば大人しくして頂きたいのがこちらの願いである。
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