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十章/さみしがりや
81.通じ合う二人
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『もうこれっきりなのかなってちょっと思ってたから』
甲斐の声のトーンからして、曇った笑顔がイメージされる。
「どう、して……」
ドキリとしていた。独りよがりの一方的すぎる片想いに辛くなって、自暴自棄になって、距離を置こうと考えていたのは本当だから、その言葉はあながち的を得ていないとも言えない。
『なんとなく、かな。全然連絡とれなかったし、忙しいみたいだからもう学校にすら来ないんじゃないかってちょっと思ってた。それに俺、お前の事怒らせちまってたしさ、気の利かない野郎だった』
思っても見なかった甲斐の言葉に胸が熱くなる。
ああ、やっぱり好きだなって。コイツじゃないとこのドキドキする高揚感は味わえないなって。
電話越しで話をしているだけなのに、不安定だった心情が穏やかになっていく。
「そんな事言うと、放してって言っても放さなくなっちまうから」
オレは滅茶苦茶お前に惚れているんだから。
もう、淡い想いを抱いていた時とは比べ物にならないくらいに。
『……いいよ、それでも。俺は控えめな性格だから、ひたすら求めてくれる方が丁度いい』
「じゃあ、今から逢いに行っていいか?」
ネクタイを取っ払い、そのままの姿で部屋を出る。
『は……今からってもう夜の23時で……』
「逢いたい。今すぐお前に逢いたいから。今から行くから寝てるなよ」
『ちょっ』
そのまま直は通話を一方的に切って、強引に久瀬に送迎を頼んで甲斐のいる寮へ向かった。
「うわ!」
数分足らずで直は到着し、玄関を開けると勢いよく抱きつかれて床に倒れた。
「架谷、逢いたかった」
まるで大型犬のように何度もスリスリされた。普段は何様俺様直様なくせして、今は甘えん坊である。
「お前は?」と、問う直。
「っお、俺も……だよ」
ぎこちなく真っ赤な顔でそう返事をする甲斐。
それすらも言えなかったつい最近よりかは成長したと思う。少しは恋人らしい事をしてあげようと自分でも決意したのだから、やっとのなけなしの前進だ。
でもそう言った途端、さらに強く抱きしめられて絞め殺されそうになった。
「ごめんな、オレ……せっかくお前が作ってくれた誕生日のケーキ……手違いで処分しちまったんだ。お前のだけは欲しかったのに」
「あーまあ、そんなこったろーとは思ってたよ。期待してなかったし。でも、一応作った残りが冷蔵庫にまだあるから食うか?」
「当然食う。でもその前に……お前と今はイチャイチャしたい」
「イチャイチャって……」
その時、不意打ちで唇を奪われてしまっていた。
「い、いきなりすぎんだろ」
「動くな。今のはほんのあいさつ代わりだ。今からのはちゃんとしたキスをするから。だから……目閉じて」
上から覆いかぶさっている直は再度甲斐に顔を近づけた。流されるように甲斐も仕方なく目を閉じて、キスを受け入れた。
「好き……好きだ、甲斐」
「っ……」
そういえば初めて下の名前で呼ばれた気がする。
「名前で呼べよ」
「え……」
「オレの事も名前で呼んで」
そう促されて甲斐は恥ずかしくて躊躇ったが、羞恥心を我慢して口にする。
「な、なお……」
ああ、恥ずかしい。慣れないな。まだ名前呼びは。
そんな直はとても嬉しそうな顔をしていて微笑んでいる。
「なあ、甲斐」
「な、なに」
「好きだ」
今度は額に口づけられて。
「好きだよ、甲斐」
頬や鼻や首筋にもキスが落とされていく。それをされるがまま受け続ける甲斐。
くすぐったくて、恥ずかしくて、でもドキドキして、実は嬉しくて。だけどこの男ばかりに主導権を握られたくない。自分だってやる時はやるのだ。
「俺もアンタが好きだよ、直」
甲斐も直の唇に自らのを押し付ける。実に下手なキスだが、童貞なのだから大目に見てほしい。
その後、すぐにまたキスが降ってきたと思えば息もできないくらいの深いキスで倍返しされて、直が満足するまで求められたのだった。
十話 完
甲斐の声のトーンからして、曇った笑顔がイメージされる。
「どう、して……」
ドキリとしていた。独りよがりの一方的すぎる片想いに辛くなって、自暴自棄になって、距離を置こうと考えていたのは本当だから、その言葉はあながち的を得ていないとも言えない。
『なんとなく、かな。全然連絡とれなかったし、忙しいみたいだからもう学校にすら来ないんじゃないかってちょっと思ってた。それに俺、お前の事怒らせちまってたしさ、気の利かない野郎だった』
思っても見なかった甲斐の言葉に胸が熱くなる。
ああ、やっぱり好きだなって。コイツじゃないとこのドキドキする高揚感は味わえないなって。
電話越しで話をしているだけなのに、不安定だった心情が穏やかになっていく。
「そんな事言うと、放してって言っても放さなくなっちまうから」
オレは滅茶苦茶お前に惚れているんだから。
もう、淡い想いを抱いていた時とは比べ物にならないくらいに。
『……いいよ、それでも。俺は控えめな性格だから、ひたすら求めてくれる方が丁度いい』
「じゃあ、今から逢いに行っていいか?」
ネクタイを取っ払い、そのままの姿で部屋を出る。
『は……今からってもう夜の23時で……』
「逢いたい。今すぐお前に逢いたいから。今から行くから寝てるなよ」
『ちょっ』
そのまま直は通話を一方的に切って、強引に久瀬に送迎を頼んで甲斐のいる寮へ向かった。
「うわ!」
数分足らずで直は到着し、玄関を開けると勢いよく抱きつかれて床に倒れた。
「架谷、逢いたかった」
まるで大型犬のように何度もスリスリされた。普段は何様俺様直様なくせして、今は甘えん坊である。
「お前は?」と、問う直。
「っお、俺も……だよ」
ぎこちなく真っ赤な顔でそう返事をする甲斐。
それすらも言えなかったつい最近よりかは成長したと思う。少しは恋人らしい事をしてあげようと自分でも決意したのだから、やっとのなけなしの前進だ。
でもそう言った途端、さらに強く抱きしめられて絞め殺されそうになった。
「ごめんな、オレ……せっかくお前が作ってくれた誕生日のケーキ……手違いで処分しちまったんだ。お前のだけは欲しかったのに」
「あーまあ、そんなこったろーとは思ってたよ。期待してなかったし。でも、一応作った残りが冷蔵庫にまだあるから食うか?」
「当然食う。でもその前に……お前と今はイチャイチャしたい」
「イチャイチャって……」
その時、不意打ちで唇を奪われてしまっていた。
「い、いきなりすぎんだろ」
「動くな。今のはほんのあいさつ代わりだ。今からのはちゃんとしたキスをするから。だから……目閉じて」
上から覆いかぶさっている直は再度甲斐に顔を近づけた。流されるように甲斐も仕方なく目を閉じて、キスを受け入れた。
「好き……好きだ、甲斐」
「っ……」
そういえば初めて下の名前で呼ばれた気がする。
「名前で呼べよ」
「え……」
「オレの事も名前で呼んで」
そう促されて甲斐は恥ずかしくて躊躇ったが、羞恥心を我慢して口にする。
「な、なお……」
ああ、恥ずかしい。慣れないな。まだ名前呼びは。
そんな直はとても嬉しそうな顔をしていて微笑んでいる。
「なあ、甲斐」
「な、なに」
「好きだ」
今度は額に口づけられて。
「好きだよ、甲斐」
頬や鼻や首筋にもキスが落とされていく。それをされるがまま受け続ける甲斐。
くすぐったくて、恥ずかしくて、でもドキドキして、実は嬉しくて。だけどこの男ばかりに主導権を握られたくない。自分だってやる時はやるのだ。
「俺もアンタが好きだよ、直」
甲斐も直の唇に自らのを押し付ける。実に下手なキスだが、童貞なのだから大目に見てほしい。
その後、すぐにまたキスが降ってきたと思えば息もできないくらいの深いキスで倍返しされて、直が満足するまで求められたのだった。
十話 完
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