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20.フェンリル
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(ついでに言っておくがわしはカラスではないぞ。不死鳥だ)
「え、不死鳥って……」
(一応、鳥達の親玉をしておるな。人間共に見つかるからカラスに姿を変えているだけだ)
不死鳥って有名なあの伝説上の霊鳥の事だろうか。いや、まさか。見た目はただの可愛らしいカラスにしか見えない。
(おれもただのカブトムシじゃないカブ。ゴールデンヘラクレスオオカブトだカブ)
ヘラクレスオオカブトは昆虫界の帝王と言われている。その中でも特に伝説上の存在と呼ばれているのが黄金に輝く皮膚を持ったものだと聞いた事がある。それでも見た目はただのカブトムシだ。
そんな頼りになる彼らは、たくさんの鳥達や虫達を従えて一斉に向こうの方へ飛んで行った。それを見送ってエイベルも急いでヴァイスの手当てを行う。
ええと、おじいちゃんの教えでは止血にはヨモギやチドメグサ。手当をするには水と布代わりの葉っぱで……
鳥達や虫達がヘイトタマールの追手共を引き付けている間、エイベルは余裕をもってヴァイスの手当てに集中する。
時々、遠くから誰かの奇声や悲鳴が聞こえたような気もしたが、エイベルは空耳だよねと気にせずに手を動かした。
「これで応急処置はできた」
一先ず簡単な手当ては終えて血は止まったが、ヴァイスの額などを触れば異常に熱い。やはり熱も出ているのだろう。ヴァイスの辛そうな表情がどんどん深くなっていくのを見て、エイベルは不安に駆られる。
どうしよう。自分じゃあ祖父のようにこれ以上の処置などできない。熱を下げるには解熱薬の服薬と静かな場所で安静にさせなければならない。どうすれば……
(おい、エイベルか!?)
ハッとして顔をあげると、背後には見慣れた毛並みを持ったニワトリがいる。
「も、もしかして……チャーボ君……!?」
そうだと言わんばかりに「コケっ」と鳴いた。それにねずみのチュータやフクロウのフクコも姿を見せた。
(やっぱりエイベルザマス。無事でよかったザマス)
(ここで会えてよかったチュー)
家を燃やされて安否が不明だった家での友達。生きて再会できた事に目尻に涙が溜まっていく。
「家を燃やされた時、すごく心配だった。死んじゃったのかって思って……みんな無事でよかったよぉ……」
(エイベルも無事でよかったコケ。あの時はなんとか逃げるのに必死だったコケ)
(でも途中でね、この白いオオカミさんがここまで逃がしてくれたんだチュー)
(炎が迫る中、間一髪で逃がしてくれたんザマス)
そう言う三匹の背後には、白くて綺麗な毛並みの巨大なオオカミのような動物がいる。
シューセンド兵が使役しているオオカミかと一瞬強張ったが、よく見れば全然美しさも大きさも違う。
「キミは?」
(我はフェンリル。フェンとでも呼んでくれ。普段は王家に飼われているオオカミとして身を窶しているのだが、本当は奴ら王家の人間を監視するためにスパイとして潜り込んでいたのだ)
話し方やそう説明する様子が王家にいるオオカミよりよほど強くて賢そうだ。
「王家にスパイ……そうだったんだ。ウルフってオオカミとはまた違うのかな」
(ウルフは骨の髄まで人間に躾けられ肥やされた王家の犬だ。他の王家のオオカミもほぼ奴らの忠実な下僕となっている。まったく堕ちた奴らだと失望している)
フェンは王家の手先となったオオカミ達に憤っている様子だ。
(我の知り合いからここにお前がいると聞いて急いでやってきたのだ)
「知り合いってカラス君とカブトムシ君の事かな)
(ああ。カラスの姿をしたフェニックスと、普通のカブトムシの姿をしたゴールデンヘラクレスオオカブトだろう。奴らは我の仲間であり、聖龍様を守る我と同じ配下でもある)
「そうなんだ。いっぱい配下がいるんだなぁ……ってそれより、友達が大怪我しちゃったんだ。このままじゃ死んじゃう。だからすぐに森に行って解熱薬を飲ませて看病したいんだよっ」
解熱薬を作る薬草はこの辺にはなさそうだった。森に行けば薬師の卵であるぺぺが作っているかもしれない。
(わかっている。聖龍様は絶対に死なせてはならん。だから我の背に乗るがいい。我のスピードならすぐに森へ辿り着けるぞ)
「ありがとう。頼むよフェン君」
銀の毛並みの背に乗り、自分とヴァイスが振り落とされないように紐でしっかり結びつける。もちろんチャーボ達も同じように結びつけた。
(では出発する。全員振り落とされないようにな)
フェンが大地を蹴ると、全身に風を感じて猛スピードで背景が横切っていく。
とても早い。馬車なんかよりも何よりも早い。あまりの高速に目を開けていられない程だ。
それでも5分程度で見慣れた森の景色が見えて来て、その速さに改めて驚かされた。
オオカミというのはこれほどまでにスピードが出るのだろうか。そう疑問を口にしたら「我はオオカミではない。フェンリルだ」と、訂正を要求してくるのだった。
そんなフェンのおかげで数分程度で森に到着した。
「ありがとうフェン君!」
森の入口に到着してすぐに背を降りると、エイベルの気配を感じ取った動物達が集まってくる。
「あ、エイベルだ」
「お~い!」
(エイベルー!)
「え、不死鳥って……」
(一応、鳥達の親玉をしておるな。人間共に見つかるからカラスに姿を変えているだけだ)
不死鳥って有名なあの伝説上の霊鳥の事だろうか。いや、まさか。見た目はただの可愛らしいカラスにしか見えない。
(おれもただのカブトムシじゃないカブ。ゴールデンヘラクレスオオカブトだカブ)
ヘラクレスオオカブトは昆虫界の帝王と言われている。その中でも特に伝説上の存在と呼ばれているのが黄金に輝く皮膚を持ったものだと聞いた事がある。それでも見た目はただのカブトムシだ。
そんな頼りになる彼らは、たくさんの鳥達や虫達を従えて一斉に向こうの方へ飛んで行った。それを見送ってエイベルも急いでヴァイスの手当てを行う。
ええと、おじいちゃんの教えでは止血にはヨモギやチドメグサ。手当をするには水と布代わりの葉っぱで……
鳥達や虫達がヘイトタマールの追手共を引き付けている間、エイベルは余裕をもってヴァイスの手当てに集中する。
時々、遠くから誰かの奇声や悲鳴が聞こえたような気もしたが、エイベルは空耳だよねと気にせずに手を動かした。
「これで応急処置はできた」
一先ず簡単な手当ては終えて血は止まったが、ヴァイスの額などを触れば異常に熱い。やはり熱も出ているのだろう。ヴァイスの辛そうな表情がどんどん深くなっていくのを見て、エイベルは不安に駆られる。
どうしよう。自分じゃあ祖父のようにこれ以上の処置などできない。熱を下げるには解熱薬の服薬と静かな場所で安静にさせなければならない。どうすれば……
(おい、エイベルか!?)
ハッとして顔をあげると、背後には見慣れた毛並みを持ったニワトリがいる。
「も、もしかして……チャーボ君……!?」
そうだと言わんばかりに「コケっ」と鳴いた。それにねずみのチュータやフクロウのフクコも姿を見せた。
(やっぱりエイベルザマス。無事でよかったザマス)
(ここで会えてよかったチュー)
家を燃やされて安否が不明だった家での友達。生きて再会できた事に目尻に涙が溜まっていく。
「家を燃やされた時、すごく心配だった。死んじゃったのかって思って……みんな無事でよかったよぉ……」
(エイベルも無事でよかったコケ。あの時はなんとか逃げるのに必死だったコケ)
(でも途中でね、この白いオオカミさんがここまで逃がしてくれたんだチュー)
(炎が迫る中、間一髪で逃がしてくれたんザマス)
そう言う三匹の背後には、白くて綺麗な毛並みの巨大なオオカミのような動物がいる。
シューセンド兵が使役しているオオカミかと一瞬強張ったが、よく見れば全然美しさも大きさも違う。
「キミは?」
(我はフェンリル。フェンとでも呼んでくれ。普段は王家に飼われているオオカミとして身を窶しているのだが、本当は奴ら王家の人間を監視するためにスパイとして潜り込んでいたのだ)
話し方やそう説明する様子が王家にいるオオカミよりよほど強くて賢そうだ。
「王家にスパイ……そうだったんだ。ウルフってオオカミとはまた違うのかな」
(ウルフは骨の髄まで人間に躾けられ肥やされた王家の犬だ。他の王家のオオカミもほぼ奴らの忠実な下僕となっている。まったく堕ちた奴らだと失望している)
フェンは王家の手先となったオオカミ達に憤っている様子だ。
(我の知り合いからここにお前がいると聞いて急いでやってきたのだ)
「知り合いってカラス君とカブトムシ君の事かな)
(ああ。カラスの姿をしたフェニックスと、普通のカブトムシの姿をしたゴールデンヘラクレスオオカブトだろう。奴らは我の仲間であり、聖龍様を守る我と同じ配下でもある)
「そうなんだ。いっぱい配下がいるんだなぁ……ってそれより、友達が大怪我しちゃったんだ。このままじゃ死んじゃう。だからすぐに森に行って解熱薬を飲ませて看病したいんだよっ」
解熱薬を作る薬草はこの辺にはなさそうだった。森に行けば薬師の卵であるぺぺが作っているかもしれない。
(わかっている。聖龍様は絶対に死なせてはならん。だから我の背に乗るがいい。我のスピードならすぐに森へ辿り着けるぞ)
「ありがとう。頼むよフェン君」
銀の毛並みの背に乗り、自分とヴァイスが振り落とされないように紐でしっかり結びつける。もちろんチャーボ達も同じように結びつけた。
(では出発する。全員振り落とされないようにな)
フェンが大地を蹴ると、全身に風を感じて猛スピードで背景が横切っていく。
とても早い。馬車なんかよりも何よりも早い。あまりの高速に目を開けていられない程だ。
それでも5分程度で見慣れた森の景色が見えて来て、その速さに改めて驚かされた。
オオカミというのはこれほどまでにスピードが出るのだろうか。そう疑問を口にしたら「我はオオカミではない。フェンリルだ」と、訂正を要求してくるのだった。
そんなフェンのおかげで数分程度で森に到着した。
「ありがとうフェン君!」
森の入口に到着してすぐに背を降りると、エイベルの気配を感じ取った動物達が集まってくる。
「あ、エイベルだ」
「お~い!」
(エイベルー!)
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