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八章御三家と球技大会とアンチ王道

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「でましたわね、お邪魔虫のブラコンスケベが」
「そっちこそ相変わらずお兄ちゃんのストーカー癖は変わらないんだからっ。数日前なんてお兄ちゃんの生着替え覗いた挙句にそれを動画撮影して、授業中にオナってたって話でしょお?学校でお兄ちゃんでオナるとかどんだけ盛ってんのよ」
「ふん!それこそ甲斐様の部屋に侵入してパンツをクンカクンカした挙句に、その甲斐様の貞操となるオパンツを穿いて疑似性交した気分になっているあなたには言われたくないですわ!」
「あたしは妹だからパンツ着用は許されるかもしれないけど、さすがにお兄ちゃんの着替えを撮影してそれをオカズに学校でオナニーはないわ~。私なら時と場所を選ぶし~」
「妹だからって兄のパンツ着用なんて異常ですわ。頭いかれているんじゃありませんこと?兄の甲斐様が可哀想になってきますわ!」
「可哀想なのはあんたの頭だと思うけど?お兄ちゃんはあたしがあんたみたいな不埒なバカから守るんだから」
「甲斐様もそんな妹に守られてお可哀想に。私が近親相姦を企む妹から救ってあげなきゃですわ」
「はははは」
「うふふふ」

 二人は笑いながら睨みあい、視線がバチバチ交差する。もはやこの争いは恒例行事のようなものであり、百合ノ宮の生徒会一同は誰も深くは突っ込まない。

「いつもの甲斐様をめぐっての喧嘩が始まっちゃってますわね」
「友里香ちゃんも毎度毎度未来ちゃんに正々堂々と対抗し続けるのもすごいけど、矢崎財閥令嬢をバカ呼ばわりできる未来ちゃんも大物ね。普通なら退学沙汰になってもおかしくないんだけど……」
「友里香ちゃんはそーゆーの嫌うし」
「未来ちゃんもその辺はお兄さんに似てるわね。猪突猛進で、身分差別せずに平等に接する事ができる所が。それに案外二人ともケンカしながらも仲よさそうだし……きっと楽しんでいると思うわよ。本人達は認めないだろうけど」

 ケンカをしている二人と百合ノ宮の生徒会から少し離れた場所で、無才学園陣営の大型バスも次々到着した。静かでおしとやかな雰囲気の百合ノ宮とは違い、ハナッから野郎共の熱気と野太い咆哮が響き渡る。

 無才学園生徒会の天草時雨率いる野郎生徒会達が、開星の地に降り立ったのだった。

「相変わらず無駄にごみごみした所だな。山奥から地上に降りた気分は最悪だぜ」

 会長の天草はすぐ近くにいる桜子とほぼ同じ感想を述べた。最近某ご主人サマに頭を坊主にされてからツルッパゲ坊主にハマり、以降ずっと坊主頭に徹している。天草曰く、坊主はご主人サマにカットしてもらった神聖な髪型。一生このままをポリシーとして貫き通すとの事。その後、会長ファンは発狂した。

「同感ですね。空気も悪いし、騒がしいったらありゃしない」

 銀色の長髪を後ろに払いつつ同調したのが副会長の武者小路銀むしゃのこうじぎんという男。会長の天草とは同学年である。

「可愛い(男の)娘達たくさんいるといいなー。女はいらないけど」

 金髪に赤いメッシュを入れたこのツーブロック頭が田所雅也たどころまさやであり、別名歩く下半身。学園の可愛い男の娘を食い物にしている根っからのゲイで、女が大嫌いな変わり者。

「おれ、さわがしいここ、きらい。はやく、かえりたい」

 不愛想で無口でしゃべり方がたどたどしいこの男は篠田弘毅しのだこうき。こちらも魔性のゲイ。親族のほとんどが男らしく、おまけにこのホモ学園に幼稚舎から通っているので、女性という生き物をわかっておらず、ほとんど興味がない。


「よし、行くぞ野郎共!」
「「うおおおおおおー!!」」

 そんな無才学園生徒会役員や生徒達は、同性相手を恋愛対象として見ているのが当たり前であった。それは百合ノ宮学園に関しても同じである。

 しかし、百合ノ宮は無才ほど異性を忌み嫌うという考え方ではない。男性にはちゃんと異性としての好奇心を抱いており、いい人がいれば付き合いたいとは思っているようだ。が、野蛮で無礼で汗臭い無才学園のせいで男性に夢も希望も抱けないので、同性に走る娘っ子が後を絶たない。

 おかげで百合ノ宮も無才もお互いを嫌っており、兄妹校でありながら不仲なのだ。

「げ……無才の連中がいますわね」
「あいつらと鉢合わせなんてしたくなかったのですが、時間帯が時間帯なので仕方ありません」
「遅刻なんてしたら我が校の示しがつきませんからね」
「この~」
「なにを~」

 百合ノ宮生徒会一同が無才の連中に嫌な顔をしている向こうの方で、まだ友里香と未来がケンカをしている。無才の連中には気付いているのか気付いていないのか、空気を読まないで罵り合っている。

「甲斐さんのキスは私がもらいますわ~!!」
「お兄ちゃんのキスは私がもらうに決まってんでしょー!!」
「兄妹でキスなんて近親相姦一歩手前って言っているじゃありませんかっ!おやめなさい!」
「それの何がいけないのよ!甲斐お兄ちゃんを本気で好きになったんだからしょうがないじゃないの!」
「あなた「おいお前ら!今、甲斐と言わなかったか!?」

 二人がスカートからお互いのパンツが見えているにも関わらずケンカをしている中で、無才会長の天草が割り込んだ。二人のパンツに対して何も突っ込まない所が根っからのゲイである表れである。

「あん?てめえ誰よ!なんでお兄ちゃんの事知ってんのよ!」
「んまぁ!この人は無才学園生徒会長の天草時雨ですわ」

 矢崎財閥令嬢の友里香はさすがに顔と名前は見知っていた。

「え、こんな野郎が無才の会長ぉ!?しんじらんねー!」
「なっ……無才学園の生徒会長で天草グループの御曹司に向かってなんたる無礼な口の利き方ですか!」

 副会長の武者小路が未来の無礼な話し方を注意をする。が、未来は「うわ長髪から注意されたんだけどー!その邪魔な髪切れよウザってえカマ野郎」と、意にも介さない様子どころか悪口を言う始末だった。

 武者小路はあまりの言い草に固まっていたが、天草は「まあまあ」となだめた。

「あいつの情報が少しでも欲しいからな。それによく見れば彼女はあいつの妹君だ。写真で見ていたからやっと気づいた。粗相のないようにしろよ」
「粗相のないようにって……なんであんな女なんかに」
「だから俺のご主人様の妹君だって言ってんだろ」
「あなたがいつも自慢のように愛人にしたいご主人様だとか言っている生徒の妹なんですか?あれが」
「そうだ。だかr「時雨ーっ!」

 そんな時、一人の生徒が天草に向かってやってきた。見た目は小柄で金髪天然パーマをなびかせた訳あり美少年が。

「おお、天弥か!」

 天弥という生徒が天草に勢いよく抱き着く。

「へーここが開星ってところか!なんか広い所なんだぞ!おれ、わくわくするなあ。友達たくさん作るんだぞ」

 天弥とやらがにこっと笑顔を見せる。

「天弥はいい子ですね。友達だなんて微笑ましいです」
「ほんと、可愛いよねー」
「天弥、かわい」

 口々に天弥という生徒を褒めちぎる生徒会一同は、完全に天弥の謎の魅力に盲目になっている。

 そのあまりの盲目さに愛想を尽かしている生徒も多少ながらいるにも関わらず、生徒会共は天弥の放つ魔性の魅了にやられては心酔しきっている。

 微量の洗脳マインドコントロールの一種なのだが、一般生徒や一般人には全くもって効く事はなく、なぜか無才生徒会にだけ効いてしまうのだとか。だとすれば、もしかしたら頭の弱い人間バカにだけ効果があるんじゃないかと言い伝えられ、今日も今日とてまともな無才の生徒達は呆れてその様子を見ていたのであった。

「おれ、四天王ってのと友達になってみたいんだぞ。四天王の矢崎直って奴が日本で一番モテるって聞いてな、一番友達になりたいんだ!すっげえ美形でカッコよくて、あーはやくあいたいんだぞ」
「な……天弥、さすがに四天王と友達は……」
「しかも矢崎直っていえば天草の天敵で……あ」
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