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彼の岸へ
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「こんなところで、どうしたの。」
海辺のお散歩。夜明け前に家を出て、上る太陽を眺めながら歩く、デザインの会社から独立し、てこの街に工房を構えた翌日から、大雨の日以外はずっとしている日課だ。
今日は台風が近づいていて、いつもよりうねる波を遠くに見ながら、いつもと違う道を歩いていた。そして見つけた波打ち際の彼女は、浜辺をずっと行ったり来たりしていた。
「波も高くなってきたから、危ないよ。」
「でも、大切なものをなくしてしまったの。あれがないと私、帰れない。」
白いワンピース、白い帽子。真夏だというのに伸びた手足は光を通すくらい真っ白。
「何をなくしたの、一緒に探すよ。」
「ありがとう、でも、自分で見つけないと意味がないから。お願い探させて。」
こちらに視線を向けることもなく、ずっと砂を見ている。時折しゃがんで、時折足で地面をかき分けて。ほっとくわけにもいかないので、少し離れて見守る。そのうちまた、日が昇る、嵐の前の静けさで、いつもより強い光が僕たちと、世界を照らした。
「あ、あった、よかった。」
彼女が見つめる先には、何かがキラッと光る。それを拾い上げると、僕に向かって走ってくる。
「一つお願いしてもいいですか。」
「、僕にできることなら。」
「これを、あの教会の神父様にお渡ししてほしいのです。」
「これがないと帰れないんじゃ。」
少し戸惑って聞き返す、彼女は興奮からか頬が真っ赤になっている。
「これを、持って行ってもらえればわかります。これで私は帰れます。」
「わかった、持っていけばいいんだね。確かに、引き受けたよ。」
冷たい手から受け取って、目線を上げる、そこにはだれもいなかった。
ただ掌の上で、銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった。
海辺のお散歩。夜明け前に家を出て、上る太陽を眺めながら歩く、デザインの会社から独立し、てこの街に工房を構えた翌日から、大雨の日以外はずっとしている日課だ。
今日は台風が近づいていて、いつもよりうねる波を遠くに見ながら、いつもと違う道を歩いていた。そして見つけた波打ち際の彼女は、浜辺をずっと行ったり来たりしていた。
「波も高くなってきたから、危ないよ。」
「でも、大切なものをなくしてしまったの。あれがないと私、帰れない。」
白いワンピース、白い帽子。真夏だというのに伸びた手足は光を通すくらい真っ白。
「何をなくしたの、一緒に探すよ。」
「ありがとう、でも、自分で見つけないと意味がないから。お願い探させて。」
こちらに視線を向けることもなく、ずっと砂を見ている。時折しゃがんで、時折足で地面をかき分けて。ほっとくわけにもいかないので、少し離れて見守る。そのうちまた、日が昇る、嵐の前の静けさで、いつもより強い光が僕たちと、世界を照らした。
「あ、あった、よかった。」
彼女が見つめる先には、何かがキラッと光る。それを拾い上げると、僕に向かって走ってくる。
「一つお願いしてもいいですか。」
「、僕にできることなら。」
「これを、あの教会の神父様にお渡ししてほしいのです。」
「これがないと帰れないんじゃ。」
少し戸惑って聞き返す、彼女は興奮からか頬が真っ赤になっている。
「これを、持って行ってもらえればわかります。これで私は帰れます。」
「わかった、持っていけばいいんだね。確かに、引き受けたよ。」
冷たい手から受け取って、目線を上げる、そこにはだれもいなかった。
ただ掌の上で、銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった。
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