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転生
しおりを挟むつなぐ縁紡ぐ絆、回り続ける輪廻の途中、あなたのご来訪を心よりお待ちしています。
第一章 エリ
「おや、あなたはここにいるはずはないのですが。」
今にも消えてしまいそうな小さな光が目の前で形を変えていく様子を見ながら、なぜか笑みがこぼれた。
胎児から、ヒトへと変態を遂げたそれは静かに自分の腕へと収まった。
児を抱き帰途につく、本来であれば外気に触れることがなかった魂はここには来ない、直接新しい生を得るためのプラットフォームへと出向くのだから。
困りましたね、こんなことは久しぶりだからどうしたものか。
その日の業務は終わった後だったのでそのまま帰り道についた、宿舎へは行かずマーケットを運営するエアのところへ立ち寄る。
「お邪魔します。」
「いらっしゃい、珍しいの抱えているね。どうかしたの。」
「ええ、特異点を見つけてしまったので、そのままにしておくわけにもいかず、かといって私の手に負えるものではないので、こうしてお知恵を借りに来たというわけです。」
「そうなんだ、わかった。ちょっとこちらへどうぞ。」
ふっと上がる口角は機嫌の良さを示していた、そして招かれるままに店の奥へ、そこはエアのプライベートスペース。
そこに寝かせて、言われるままにベッドにそっとおろした。
「ぜんぜん起きないですね、大丈夫なのでしょうか。」
胸は規則的に上下するものの目を開ける気配はない。確かに、この世界へ転生することはかなりのエネルギーを消費するので、現世であまり補給ができていない幼い魂はひどく消耗してしまうものだけど。そう、途中で消えてしまう者もかなりの数いるのだ。
「ん-、大丈夫だと思うよ、ほらもうすぐ目を覚ますから。」
ふわぁぁぁぁぁ
元気な鳴き声が部屋中に響き渡る。それは、ここに無事生まれてくることができた証。
「おめでとう、ようこそ中間の世界へ。」
エアが慣れた手つきで産着を着せて、この世の水を飲ませる。生まれ変わった輝きはこの儀式を経てこの世界に定着できるのだ。
「これから賑やかになるね。」
そう、この子の存在は何かが変わり、始まる兆候。
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