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第2話
しおりを挟む「レイラ、戻ってきてくれ。俺は騙されていたんだ」
数週間後、さも当然、といった顔をしてそう言ってくるカイル様に、私は呆れるしかなかった。
「いったい何があったというのです?」
「それが、お前が宮殿に来ないように厳重に見張っているのにも関わらず、今度は宝物庫の鍵がかかっていなくて、あわや盗賊に宝物を盗まれそうになる事件が起きたんだ」
「それはそれは、盗まれなくて何よりです」
あえて棘がある言い方をしてみたが、カイル様は気づいていないらしい。
「それで、もしかしたら嘘をついているのはアリスだったんじゃないかと思って、他の使用人にも話を聞いてみたんだ。その結果、俺の思った通りであることがわかった」
何が「思った通り」だ。思いっきり騙されてたでしょうが。
「ちょうどよかった。私の方からも、カイル様にお話があるのです」
「なんだ?」
私は鳥籠を取り出す。
「キューちゃん。見つけておきました」
「なっ......!どこに居たんだ!?」
「妹の部屋を探してみたら、案の定。ほとぼりが冷めた頃に、自分が見つけたふりをするつもりだったんでしょうね。ろくに餌も与えられてなかったので衰弱していましたが、お世話しておきました」
いつでも私が入れるところに隠してどうするんだ。こういう所が間抜けなのだ、妹は。
まぁとにかく、私が性悪女だなんて悪評が広まらなくてよかった。
「それで......。戻ってきてくれるよな?」
「あ、それは嫌です」
私はきっぱりと言う。
唖然とするカイル様。いや、戻ってきてくれると思ってたのか。そんな虫のいい話はない。
「私、別の貴族の方.....タイラー様と婚約しましたの。あの方は私のことを信じてくれたので。なので、今更戻って来いと言われても無理ですわ」
「な、何だと!?タイラーなんて、私に比べたら......」
「どうなんですかね?今回のことが明るみに出れば、あなたの評判はガタ落ちだと思いますが」
「ぬう......」
新聞で見た。カイル様は、もうアリスと婚約してしまっている。
カイル様が取る道は、二つに一つ。
「アリスと婚約破棄して真実を世間に晒すか、アリスと結婚して事件をなかったことにするか。どちらにしろ、私はもう関係ありません」
「そんな二択.....どっちを取っても地獄じゃないか!」
だから、そんなことを私に言われても知ったこっちゃない。
私はもう、新しい人生を歩み初めているのです。邪魔をしないでいただけますか?
そう言うと、カイル様は怒り心頭、といった面持ちで帰っていった。
やれやれ、いったいどうするつもりなのでしょうかね。
そして、数ヶ月後。
私とタイラー様の結婚式前夜、とある珍客がやって来た。
「お姉様、助けてよ!姉妹じゃないの!」
「だから、知らないって。邪魔だから出てってよ。というか、どのツラ下げて来てんのよ、あんた」
どうやらカイル様は、自分の地位を貶めてでも妹と結婚するのが嫌だったらしい。気持ちは分からなくもないな、と思う。
それで居場所をなくしたアリスは、こうして私のところに泣きついてきたというわけだ。
だからって、私にどうしろというのだ。
これから先ずっと、彼女と面倒を見ろとでも?
「いいから早く出てってよ。私は皿も絵も鳥籠も壊す、性悪な女なんでしょ?」
fin.
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