魔法使いのお店はいつも閑古鳥が鳴いている

うめめ

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Ⅱ 騎士団の陰謀

第18.5話 帝都奔走

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シルヴィア:魔法使いの店の常連の少女。17歳。
アイラ:バーで働いている少女。シルヴィアの後輩。16歳。

アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国第4皇子。18歳。
セシル・エインズワース:アルトリウスの側近をしている魔女。30歳。
アレン・ウィル・ハルモニア:元ハルモニア帝国第1皇子。アルトリウスの側近をしている剣士。30歳。

店主:シルヴィアたちが働いているバーのマスター。55歳。
貴族1・2
民衆
騎士



 帝都、バー。

アイラ 「なんか先輩、最近元気ないですよねー」

シルヴィア 「そ、そうかな?」

アイラ 「そうですよ。もしかして、愛しのアーロンさんと何かあったんですかー?」

シルヴィア 「えっ!? いや、そんなこと、ないよ!?」

アイラ 「なにその反応、確実になんかあったでしょ」

シルヴィア 「実は……」

────────────

アイラ 「ええっ!? 特殊任務で水の都まで遠征!?」

シルヴィア 「ああっ、声が大きいっ」

アイラ 「うわっとと!」

(SE 手で口をおさえる音)

アイラ 「……うわー、それもう先輩勝ち目ないじゃないですかー」

シルヴィア 「そうだよね……。だって、アーロンさんの周りっていつも女の子がいるんだよ。それが、遠征なんてしたら……!」

(SE 顔が赤くなる音)

アイラ 「もう、勝手に想像して勝手に赤くならないでくださいよ。やらしい~」

シルヴィア 「いやいや、そんなこと考えてないから!」

アイラ 「そんなことってなんですかぁ?」

店主 「アイラさん、シルヴィアさん、依頼書の整理、お願いしてもいいですか?」

シルヴィア 「あ、はーい」

────────────

アイラ 「なんというか、最近さらに依頼が多くなりましたよね」

シルヴィア 「いつも依頼を受けてくれてたアリアさんたち、魔法使い一行が遠征に行っちゃったからね」

店主 「それもありますが、今、どういうわけか騎士団長と参謀がどこかに出向いているようです。そのせいか、帝都周辺の警備が少し手薄になっているようですね」

シルヴィア 「なんだか、はた迷惑な話ですよねー」

アイラ 「まったくですよー」

店主 「帝都には魔物除けがありますから、そういった心配はありませんが、騎士団のお偉方が帝都を留守にするのはいかがなものでしょう」

シルヴィア 「そうですよねー」

アイラ 「あ、見てください、帝都郊外の道に魔物が出たらしいですよ」

(SE 紙を見せる音)

シルヴィア 「バハムート……、なんだか強そうな魔物ですね」

店主 「終焉を告げる竜とも呼ばれる魔物です。まさか、この帝都に出現するとは……」

アイラ 「うぇー!? それ、ヤバくないですかー!?」

シルヴィア 「アーロンさんたちもいないのに、そんな……」

(SE 破壊音)(SE 民衆の叫び声)

アイラ 「……っ!! な、なんですか!?」

シルヴィア 「そ、外……!!」

バハムート 「グオオオオオオオッ!!」

店主 「み、皆さん、裏口から逃げますよ!!」

(SE 店が破壊される音)

バハムート 「グオオオオオオオオッ!!」

店主 「…………!!」

シルヴィア 「あ、ああ……っ」

アイラ 「うそ……」

バハムート 「グオオオウッ!!」

(SE バハムートが脚を振り上げる音)

アレン 「はああああああっ!!」

(SE 爪と剣がぶつかる音)

セシル 「──────雷よ、喰らいつくせ、雷竜の顎サンダーストライク!」

(SE 激しい雷が落ちる音)

バハムート 「ギャアアアアス!」

アレン 「──────絶破剛掌撃ぜっぱごうしょうげき!!」

(SE 激しい掌打音)

バハムート 「グギャアアアッ!!」

(SE バハムートが飛び立つ音)

シルヴィア 「……たす、かった……?」

アレン 「いや、まだだ!」

バハムート 「グオオオオオオオッ!!」

(SE 火球が降り注ぐ音)

シルヴィア 「!?」

アルトリウス 「(外から)アルトリウス・フォン・ハルモニアの名において命じます! 騎士団の皆さん、全力で民を守るのです!!」

騎士たち 「うおおおおおおおっ!!」

アイラ 「アルトリウス殿下!?」

セシル 「さあ、来るよ!」

アレン 「さて、第2ラウンドといこうか!!」



 帝都、広場。

シルヴィア 「はあ、はあ……」

アイラ 「あ、先輩、お家、大丈夫でした?」

シルヴィア 「うん、家の方は被害が少なくて、お母さんも無事だったよ」

店主 「それはよかったですね」

シルヴィア 「はい」

アイラ 「アルトリウス殿下のおかげで、帝都の被害も最小限におさえられましたね……」

シルヴィア 「うん。だけど、バハムートを追い払ってくれた、あの2人、誰なんだろうね」

店主 「私もわかりません。ただ、あのバハムートを退けたのです。かなりの実力者でしょう……」

(SE ぞろぞろと人が流れてくる音)

貴族1 「アルトリウス殿下! 私は殿下に救われました!」

貴族2 「殿下がいてくださらなければ、私たちは死んでいました!」

民衆 「俺たちもです! こんな身分の低い俺たちも、殿下に救っていただきました!」

アルトリウス 「人の命の前に、身分など関係ありません。私はただ、人として当り前のことをしたまでですよ」

民衆 「なんというお言葉……」

貴族1 「殿下、私は貴方についていきます」

貴族2 「私もです!」

(SE 民衆のがやがや)

アイラ 「うわー、なんかすごいですね」

シルヴィア 「さすが殿下ですね」

アレン 「まったくだ。ツラの皮が厚いっていうか……」

セシル 「おいおい、未来の皇帝陛下に不敬じゃないかい?」

アレン 「違いねぇや」

アイラ 「あなたたちは……」

シルヴィア 「! 助けていただいて、ありがとうございました!」

アレン 「いや、いいってことよ。アイツに言わせれば、当然の行いをしたまでだってな」

店主 「いえ、本当に助かりました。ありがとうございます」

アレン 「だから、礼には及ばねえって」

セシル 「アレン、礼の言葉は素直に受け取っておくべきだよ」

アレン 「はいはい」

シルヴィア 「…………」

店主 「アレンさんという方、なんだか、あのお方に似てますね」

アイラ 「あのお方……?」

店主 「アーロンさんですよ」

アイラ 「ああ~」

シルヴィア 「……!! もう! こんなときになんていうことを言うんですか!!」

アレン 「アーロン?」

シルヴィア 「あ、いや、なんでもないです」

アレン 「アーロンって、あの魔法使いと一緒にいるアーロンのことか?」

シルヴィア 「え、アーロンさんを知ってるんですか?」

アレン 「知ってるもなにも、昨日会ったからな」

シルヴィア 「あれ、でもそのアーロンさんって、今は遠征中でアクエリスにいるはず……。どうやっても1日以上はかかると思うんですけど、帝都までどうやって来られたんですか?」

セシル 「む、それは、秘密だ」

アイラ 「わー気になるー」

セシル 「ふふ、良い女には、秘密があるものなんだよ」

アレン 「いや、そういう秘密じゃねえだろ」

シルヴィア 「あはは……」

シルヴィア (なんか、ノリもアーロンさんとアリアさんに似てる)

(SE 足音)

アルトリウス 「ふう、ようやく解放されましたよ」

シルヴィア 「で、殿下……!」

アルトリウス 「……! おや、確か貴女はバーの……!」

シルヴィア 「覚えていただいて、光栄です……!」

アルトリウス 「……兄上、セシルさん、そろそろ城に戻りましょう」

アレン 「おう」

セシル 「わかった」

アレン 「それじゃ、お嬢さん方、またいつか」

シルヴィア 「あ、はい、ありがとうございました!」

アイラ 「ありがとうございました……!」



 城、アルトリウスの私室。

アルトリウス 「今日、バハムートが帝都を襲撃することは確定していましたが、いつもより被害が少ない……」

アレン 「いいことじゃねえか。俺たちも頑張った甲斐があったってもんだ」

アルトリウス 「兄上たちがどう頑張っても、あのバーの看板娘は命を落としていました。それが、今日を生き延びているんです。イレギュラーが発生しているんですよ」

アレン 「そんなの、些細なことじゃねえか」

アルトリウス 「そうだといいんですけどね」

セシル 「とりあえず、報告を終わらせてもいいかな?」

アルトリウス 「……アーロンさんたちの動向は、予定通りですか?」

セシル 「ああ、死神の力も引き出すことにも成功したよ」

アルトリウス 「そうですか。ここで、アーロンさんが死んでしまう可能性もありました。まず第一の関門はクリアですね。今回は、どの問題も難なく突破していますね」

アレン 「それってやっぱり、アイツを同行させてるからか?」

アルトリウス 「……そうか、あの看板娘が生き残っているのは、彼というイレギュラーを同行させたからですね……。しかし、彼が優秀であることには変わりありません」

セシル 「だが、あの契約……、本当に果たせるのかい?」

アルトリウス 「……ははは、ええ、果たせますよ」

セシル 「……まさか、死者を蘇らせる方法が、この世に存在していたなんてね」

アルトリウス 「……しかし、彼を引き入れたのは、今回が初めてですから、どう転ぶか、見極めましょうか」

アレン 「まあ、一番の難関であるバーナードにチェックをかけたんだ。今のところはうまくいってるんじゃないか?」

アルトリウス 「……だといいんですけどね」

セシル 「…………」

アルトリウス 「今まで、あの騎士団長にボクの計画は、何度も邪魔されてきましたからね」

アレン 「ほーん、お前がそうやって明らかに敵対視してるのは珍しいな」

アルトリウス 「当然ですよ。騎士団長とは、実際に戦ったこともあります。もちろん負けましたが……」

アレン 「へえ、お前が戦うなんて選択肢をとるなんてな」

アルトリウス 「これでも、戦闘においては兄上にも引けはとらないと思うんですけどね」

アレン 「じゃあ俺も、バーナードと真正面からり合ったら負けるってことかよ」

アルトリウス 「ボクよりは良い勝負すると思いますよ」

アレン 「負けるのは確定してんのかよ」

セシル 「そんな騎士団長を倒すアーロンたちを、キミは御しきれるのかな?」

アルトリウス 「何事にも相性というものは、あるものですよ」

アルトリウス 「──────さあ、あとは待ちましょう。アーロンさんたちの帰りを」

つづく
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