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お風呂のお供は
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湯気が立ち込める露天風呂。これも本丸御殿内の施設。切り立った南の崖の上にある景勝地。夜空には半月。目下には荒波が崖を削り、激しい波しぶきと波音を立てていた。
「これまた立派な……」
入浴を許された竜之助は趣の高さに圧巻される。島に来るまで裕福な人生を送っていたわけではないが高級旅館、貴族の屋敷に上がる経験があった。それでも蒸し風呂。ここは源泉かけ流しというのだからまた驚き。場数は踏んでいるはずなのに一歩一歩踏むのが億劫になるほどに雅で美しかった。
「ええと最初は……身体を洗うんだっけ」
更衣室で見た絵付きの案内書きを思い出す。
壁際に鏡と小さな椅子、木桶を見つける。
「これは……本当に鏡か? 清らかな水面に顔を映してるみたいだな」
鏡の質の高さにも圧巻される。
「……やはり人相が悪いな。手枷がよく似合ってらあ」
入浴を許され、監視を外されたものの、手枷の解除は許されなかった。
しかし破格の優遇には違いない。文句を言わずに身体を洗う。
「すげえな、この石鹸は。カマキリの卵みてえに泡が立つな。おお、紐を引っ張ると樋からお湯が流れてくるのか。こいつはすげえ」
どれも腰を抜かすほどの質の高さなのだが、驚きよりも楽しさが上回ってくる。新しいものや物珍しいものは好きだった。
「しっかし、言葉の通りに痒い所に手が届かないな。せっかくの石鹸があるというのに」
筋力だけでなく柔軟性、しなやかさも鍛えているため、両手は左右どちらからでも背中で結ぶことができる。
「姫さんに背中に手が届かないと言ったら案ずるなと言っていたがあれは一体どういう意味なんだ」
その時、ガララと入り口で音が鳴った。
湯気の向こうに足音。つた、つた、と近寄ってくる。
竜之助は察する。
「はっ、もしや三助!? そいつはいけねえよ、お姫さ」
「なんだ? ばあやの手助けはいらんかったか」
「………………………………はい、そうですよね」
「どうした? のぼせたように顔が真っ赤だぞ」
「うるせえやい!」
◇
へちまたわしがゴリゴリと竜之助の背中を削る。
「ばあさんばあさん! もうちょっと手加減してくれねえかな!」
へちまたわしはまだまだ固い。石で擦りつけられるような痛みが走る。
「男ならこれくらい我慢しなさい。あんたの背中はいくら洗ったって垢が後から後から湧いて来るねえ」
「垢だけじゃなく肌まで擦り切れる勢いなんだが!?」
「ったく夜だというのに騒がしい……いいよ、これくらいにしておいてやる」
ばあやは紐を引っ張って樋からお湯を流す。
「ばばばあぶばああ!?」
不意打ちを食らった竜之助。目に口にお湯が入る。
「ぺっぺっぺ! なんだ、このお湯? 塩辛くねえな。もしかして湧き水を沸かして使っているとかか?」
「そんなわけなかろう。薪と水の無駄遣いじゃ」
「んじゃこれも温泉か。四方八方を海で囲まれてるのに塩が混じってないのか。ますます不思議だな、この島は」
「この島に島外の常識は通用しない。本来なら捕虜や囚人ごとき湯浴びすら許さぬというのに……エビス様だというだけで……姫様は優しすぎます」
「ばあさんの言うとおりだ。俺からしちゃあ、ただ漂着しただけでこの待遇だからな。ずっと極楽にいる気分よ」
「ほう。儂の奉仕におかわりを所望するか」
泡が流れたへちまたわしが背中を削る。泡が減った分、摩擦が増して痛みがより強くなる。
「望んでねえがな!? やめろやめろ! あとは自分で洗う!!!」
「竜宮家のもてなしを断るか。贅沢なやつめ」
竜之助は手のひらの上で石鹸を泡立て頭を洗い始めた。
「ばあさんよ、一つ聞くが」
「なんじゃ」
「懐に刃物を隠し持つのも竜宮家のもてなしの一つなのか……」
「……おぬし気付いておったのか!?」
ばあやは慌てて胸に手を当てる。鞘付きの包丁の感触を確かめる。
「おっと当てずっぽうも言ってみるもんだな。まさか本当に所持していたとは」
「小癪にも鎌をかけたか、島外の蛮族風情が!」
「まあまあ、島外の常識なら護身用として小刀を持つくらいは普通だぜ。そうかっかなさんなよ、先輩」
「先輩だと……」
「俺の勘が正しけりゃだが、ばあさんも俺と同じエビス様なんだろ? 先輩後輩仲良くしようじゃないか」
竜之助はばあやが凶器を隠し持っていた事実を知りながらも髪の毛を泡立てていた。
ばあやは警戒を緩め、語りだす。
「……おぬしの言う通りだ。儂は六十年前にこの島に流れ着き、命を助けられ、それ以来は竜宮家に忠誠を誓う身だ」
「六十年も。俺の生きてきた年月の倍か。道理で貫禄が違うわけだ」
「この島の、竜宮家のためになることは全部してきた。島外で培った知識、技術を惜しみなく伝えた」
「その中に仙術や竜宮拳法があったのか?」
「いいや違う。仙術はすでに竜宮家に伝わり、物にしていた。島外でも無敵を誇るほどにな」
「ああ、確かに。お姫さんを見れば一目瞭然だ。血統かなんかは知らんがあれは異常だ。あの年の女であれほど強いのはまずありえねえ」
「左様。竜宮家は代々仙術の才能を受け継ぐ血統。だがその力を決して私利私欲に使わず、島のため民のためにのみ使う誇り高い一族。だからこそ儂は伝授した。いいや献上した。より仙術を高めるための武術を」
「それが竜宮拳法か。となるとばあさんが開祖で師範か。やっぱりとんでもねえ実力者じゃねえか」
「いいや、儂なんぞが実力者と名乗るのはあまりにもおこがましい。もっと相応しい方が御座す」
「かもな。拳に覚えがありゃ刃物なんか持ち歩かねえもんな」
「……あまり調子に乗るでないぞ。衰えたとはいえ、手枷をはめたおぬしを仕留めるくらい訳もないぞ」
「ひゅう、おっかねえ。お湯を浴びてるのに肝が冷える。それでもっと相応しいというお方はどなたなんだ」
「真の実力者は甲姫様じゃ」
「誰だい、そりゃ」
「乙姫様の母君じゃ。一を教えれば十で答えるようなお方で、師範の儂をたったの一か月で軽々と越えていった。あの時は驚きもしたし喜びもした。ああ、これで島も安泰だと。なのに……あのお方がご健在なら海坊主ごとき何百何千と来襲しようと驚異ではなかったんだがな……乙姫様も苦労せずに済んだろうに……ああ、おいたわしや……」
またもや涙ぐむばあや。それだけ彼女は竜宮家に誓い、慕い、愛していた。
「一騎当千の女傑か……お師匠様と同じだな……」
竜之助の瞼の裏に浮かぶ人影。師匠であり恩人であり名付けの親であり育ての親であった、全てを与えてくれたその人はもうそこにしかいない。
石鹸が目に入ったわけでもなく、じわりと涙が浮かんでくる。
(おっと、いけねえ……いつまで引きずってやがる……軟弱だぞ、竜之助……)
紐を引っ張り樋からのお湯で泡汚れともども流し落とす。
「なあに、年寄らしく感情的になってるんだ。すうぐ泣いちゃって、女々しいったらありゃしないぜ。この島には乙姫様という立派なお方がいるんだ。美人で強くて、そのうえ優しいと来たもんだ。完全無欠死角なしのお姫さんがいてどうしてそう弱気になるんだよ」
「……お前の目にはそう映るか?」
「俺にはそう見えるぜ。ああ、そうともさ。上の立つ者の態度を取りながらも、余所者の俺なんかを心の底から心配してくれる。そんな立派なお方だ。誰にだってできやしねえ」
「……本当は気づいているのだろう。あのお方の儚さが」
「なに?」
「……心の底から心配してくれる……だが決して心を開いたわけでも許したわけでもない」
「っ……」
図星。見て見ぬふりをしていた事実をまさかのばあやから突きつけられる。
「島外の人間と会う機会は少なからずあった。父君の客人が訪れ、話したこともある。だがな、それは信頼できる家族や家臣が側にいた時の話。島から男が出払いお一人でエビス様とはいえ島外の人間と対峙するのはさぞ怖かっただろうに……それも血の匂いをぷんぷんと漂わせるならず者だったらなおのこと」
「くっ……」
またもや図星。紛れもない事実に歯ぎしりする。忘れずに自覚している。いくら石鹸で洗い流そうとしても決して落ちない穢れが身体に染み込んでいることを。
「姫様は立派な御仁。あの若さながらよくやられておる。だがな、竜之助。勘違いするなよ。姫様は完璧ではない。そして救うのはお前ではなく、この島だ。それをゆめゆめ忘れるでないぞ」
ばあやは言うだけ言うとへちまたわしを持って踵を返す。
「忠告ありがとさんよ。そんで俺からも一つ言いたいことがある」
「なんだ、先輩のよしみで聞いてやらんでもないぞ」
「……お姫さんの前では刃物は隠し持つもんじゃねえぞ」
「……ふん、おぬしごときに言われなくても心得ておる。儂が姫様の前で刃物を持つときは果物の皮むきくらいじゃ」
「そうか、それを聞いて安心した。それならば俺も心置きなく背中を任せられる」
「お前がどこまで本気かは知らんが裏切る予兆を見せたのなら姫様の承諾なしに即刻背後から切るからな、覚悟しておけ」
「はっはっは! 裏切りはしないが、はてさて前線離れて久しいばあさんがこの俺に指一本でも触れられるかどうか見物ではあるな」
「……ガキのくせに。生意気な口きくやつは、こうじゃ」
次の瞬間、ばあやは竜之助の股間の竜を力の限り握った。
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!???」
竜之助の絶叫は島中に、月にまで届いた。
「これまた立派な……」
入浴を許された竜之助は趣の高さに圧巻される。島に来るまで裕福な人生を送っていたわけではないが高級旅館、貴族の屋敷に上がる経験があった。それでも蒸し風呂。ここは源泉かけ流しというのだからまた驚き。場数は踏んでいるはずなのに一歩一歩踏むのが億劫になるほどに雅で美しかった。
「ええと最初は……身体を洗うんだっけ」
更衣室で見た絵付きの案内書きを思い出す。
壁際に鏡と小さな椅子、木桶を見つける。
「これは……本当に鏡か? 清らかな水面に顔を映してるみたいだな」
鏡の質の高さにも圧巻される。
「……やはり人相が悪いな。手枷がよく似合ってらあ」
入浴を許され、監視を外されたものの、手枷の解除は許されなかった。
しかし破格の優遇には違いない。文句を言わずに身体を洗う。
「すげえな、この石鹸は。カマキリの卵みてえに泡が立つな。おお、紐を引っ張ると樋からお湯が流れてくるのか。こいつはすげえ」
どれも腰を抜かすほどの質の高さなのだが、驚きよりも楽しさが上回ってくる。新しいものや物珍しいものは好きだった。
「しっかし、言葉の通りに痒い所に手が届かないな。せっかくの石鹸があるというのに」
筋力だけでなく柔軟性、しなやかさも鍛えているため、両手は左右どちらからでも背中で結ぶことができる。
「姫さんに背中に手が届かないと言ったら案ずるなと言っていたがあれは一体どういう意味なんだ」
その時、ガララと入り口で音が鳴った。
湯気の向こうに足音。つた、つた、と近寄ってくる。
竜之助は察する。
「はっ、もしや三助!? そいつはいけねえよ、お姫さ」
「なんだ? ばあやの手助けはいらんかったか」
「………………………………はい、そうですよね」
「どうした? のぼせたように顔が真っ赤だぞ」
「うるせえやい!」
◇
へちまたわしがゴリゴリと竜之助の背中を削る。
「ばあさんばあさん! もうちょっと手加減してくれねえかな!」
へちまたわしはまだまだ固い。石で擦りつけられるような痛みが走る。
「男ならこれくらい我慢しなさい。あんたの背中はいくら洗ったって垢が後から後から湧いて来るねえ」
「垢だけじゃなく肌まで擦り切れる勢いなんだが!?」
「ったく夜だというのに騒がしい……いいよ、これくらいにしておいてやる」
ばあやは紐を引っ張って樋からお湯を流す。
「ばばばあぶばああ!?」
不意打ちを食らった竜之助。目に口にお湯が入る。
「ぺっぺっぺ! なんだ、このお湯? 塩辛くねえな。もしかして湧き水を沸かして使っているとかか?」
「そんなわけなかろう。薪と水の無駄遣いじゃ」
「んじゃこれも温泉か。四方八方を海で囲まれてるのに塩が混じってないのか。ますます不思議だな、この島は」
「この島に島外の常識は通用しない。本来なら捕虜や囚人ごとき湯浴びすら許さぬというのに……エビス様だというだけで……姫様は優しすぎます」
「ばあさんの言うとおりだ。俺からしちゃあ、ただ漂着しただけでこの待遇だからな。ずっと極楽にいる気分よ」
「ほう。儂の奉仕におかわりを所望するか」
泡が流れたへちまたわしが背中を削る。泡が減った分、摩擦が増して痛みがより強くなる。
「望んでねえがな!? やめろやめろ! あとは自分で洗う!!!」
「竜宮家のもてなしを断るか。贅沢なやつめ」
竜之助は手のひらの上で石鹸を泡立て頭を洗い始めた。
「ばあさんよ、一つ聞くが」
「なんじゃ」
「懐に刃物を隠し持つのも竜宮家のもてなしの一つなのか……」
「……おぬし気付いておったのか!?」
ばあやは慌てて胸に手を当てる。鞘付きの包丁の感触を確かめる。
「おっと当てずっぽうも言ってみるもんだな。まさか本当に所持していたとは」
「小癪にも鎌をかけたか、島外の蛮族風情が!」
「まあまあ、島外の常識なら護身用として小刀を持つくらいは普通だぜ。そうかっかなさんなよ、先輩」
「先輩だと……」
「俺の勘が正しけりゃだが、ばあさんも俺と同じエビス様なんだろ? 先輩後輩仲良くしようじゃないか」
竜之助はばあやが凶器を隠し持っていた事実を知りながらも髪の毛を泡立てていた。
ばあやは警戒を緩め、語りだす。
「……おぬしの言う通りだ。儂は六十年前にこの島に流れ着き、命を助けられ、それ以来は竜宮家に忠誠を誓う身だ」
「六十年も。俺の生きてきた年月の倍か。道理で貫禄が違うわけだ」
「この島の、竜宮家のためになることは全部してきた。島外で培った知識、技術を惜しみなく伝えた」
「その中に仙術や竜宮拳法があったのか?」
「いいや違う。仙術はすでに竜宮家に伝わり、物にしていた。島外でも無敵を誇るほどにな」
「ああ、確かに。お姫さんを見れば一目瞭然だ。血統かなんかは知らんがあれは異常だ。あの年の女であれほど強いのはまずありえねえ」
「左様。竜宮家は代々仙術の才能を受け継ぐ血統。だがその力を決して私利私欲に使わず、島のため民のためにのみ使う誇り高い一族。だからこそ儂は伝授した。いいや献上した。より仙術を高めるための武術を」
「それが竜宮拳法か。となるとばあさんが開祖で師範か。やっぱりとんでもねえ実力者じゃねえか」
「いいや、儂なんぞが実力者と名乗るのはあまりにもおこがましい。もっと相応しい方が御座す」
「かもな。拳に覚えがありゃ刃物なんか持ち歩かねえもんな」
「……あまり調子に乗るでないぞ。衰えたとはいえ、手枷をはめたおぬしを仕留めるくらい訳もないぞ」
「ひゅう、おっかねえ。お湯を浴びてるのに肝が冷える。それでもっと相応しいというお方はどなたなんだ」
「真の実力者は甲姫様じゃ」
「誰だい、そりゃ」
「乙姫様の母君じゃ。一を教えれば十で答えるようなお方で、師範の儂をたったの一か月で軽々と越えていった。あの時は驚きもしたし喜びもした。ああ、これで島も安泰だと。なのに……あのお方がご健在なら海坊主ごとき何百何千と来襲しようと驚異ではなかったんだがな……乙姫様も苦労せずに済んだろうに……ああ、おいたわしや……」
またもや涙ぐむばあや。それだけ彼女は竜宮家に誓い、慕い、愛していた。
「一騎当千の女傑か……お師匠様と同じだな……」
竜之助の瞼の裏に浮かぶ人影。師匠であり恩人であり名付けの親であり育ての親であった、全てを与えてくれたその人はもうそこにしかいない。
石鹸が目に入ったわけでもなく、じわりと涙が浮かんでくる。
(おっと、いけねえ……いつまで引きずってやがる……軟弱だぞ、竜之助……)
紐を引っ張り樋からのお湯で泡汚れともども流し落とす。
「なあに、年寄らしく感情的になってるんだ。すうぐ泣いちゃって、女々しいったらありゃしないぜ。この島には乙姫様という立派なお方がいるんだ。美人で強くて、そのうえ優しいと来たもんだ。完全無欠死角なしのお姫さんがいてどうしてそう弱気になるんだよ」
「……お前の目にはそう映るか?」
「俺にはそう見えるぜ。ああ、そうともさ。上の立つ者の態度を取りながらも、余所者の俺なんかを心の底から心配してくれる。そんな立派なお方だ。誰にだってできやしねえ」
「……本当は気づいているのだろう。あのお方の儚さが」
「なに?」
「……心の底から心配してくれる……だが決して心を開いたわけでも許したわけでもない」
「っ……」
図星。見て見ぬふりをしていた事実をまさかのばあやから突きつけられる。
「島外の人間と会う機会は少なからずあった。父君の客人が訪れ、話したこともある。だがな、それは信頼できる家族や家臣が側にいた時の話。島から男が出払いお一人でエビス様とはいえ島外の人間と対峙するのはさぞ怖かっただろうに……それも血の匂いをぷんぷんと漂わせるならず者だったらなおのこと」
「くっ……」
またもや図星。紛れもない事実に歯ぎしりする。忘れずに自覚している。いくら石鹸で洗い流そうとしても決して落ちない穢れが身体に染み込んでいることを。
「姫様は立派な御仁。あの若さながらよくやられておる。だがな、竜之助。勘違いするなよ。姫様は完璧ではない。そして救うのはお前ではなく、この島だ。それをゆめゆめ忘れるでないぞ」
ばあやは言うだけ言うとへちまたわしを持って踵を返す。
「忠告ありがとさんよ。そんで俺からも一つ言いたいことがある」
「なんだ、先輩のよしみで聞いてやらんでもないぞ」
「……お姫さんの前では刃物は隠し持つもんじゃねえぞ」
「……ふん、おぬしごときに言われなくても心得ておる。儂が姫様の前で刃物を持つときは果物の皮むきくらいじゃ」
「そうか、それを聞いて安心した。それならば俺も心置きなく背中を任せられる」
「お前がどこまで本気かは知らんが裏切る予兆を見せたのなら姫様の承諾なしに即刻背後から切るからな、覚悟しておけ」
「はっはっは! 裏切りはしないが、はてさて前線離れて久しいばあさんがこの俺に指一本でも触れられるかどうか見物ではあるな」
「……ガキのくせに。生意気な口きくやつは、こうじゃ」
次の瞬間、ばあやは竜之助の股間の竜を力の限り握った。
「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!???」
竜之助の絶叫は島中に、月にまで届いた。
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