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【第4章】ロデオに吹く情熱の風 フラメンコも愛も踏み込みが肝心
過去編 出会ったばかりのアルフォンスとアレクシス嬢
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これは二人がまだ王都に住んでいた頃の過去の話。カルメン王子の暗殺も起きていない、イバンも左遷されていない、アルフォンスの母親も毒を飲んでいない頃の話。
「初めまして…………アルフォンス、です」
初めての彼の挨拶は母親の後ろからだった。
「ごめんなさい、この子、照れ屋で……ほおら、隠れてないでアレクシス様にしっかりと挨拶しなさい。お兄さんの……未来の花嫁になる人なんですから」
そう母親からたしなめられるも後ろから出ようとしなかった。
二人がお互いをどんな人物か知ったかは出会ってから一か月後のことだった。
王都に極めて珍しく大雨が降った。十年に一度の規模であったがまた宮廷魔術師エリック・ベルシュタインが予知していたおかげであらかじめ対策が施され人的被害は少なかった。家に籠っていれば安全は保証されていた。
しかしそんな大雨の中、こっそりと外に出る者がいた。
「なにをなさってるのです、アルフォンス様!」
「離してよ、僕は行かなくちゃいけないんだ!」
アルフォンスが外套を着て外に出ようとしていた。
「どうして外に出かけようとしているのです? 何か理由があるのです?」
運よく側にアレクシスはいた。騒ぎを聞きつけ大粒の雨が降る外に、ドレスのまま出ていた。
「犬が……犬が流れそうなんだ……!」
「犬ですか……飼われていませんよね?」
「ああ、そうだ! 飼っていない! 飯をあげたことも触ったこともないよ! 名前もあげていない、だけどずっと見てきたんだ! 城下町の野良犬だよ!」
この時からアルフォンスは魔法の単眼鏡で街を眺めるのが趣味だった。魔法の単眼鏡は母親からの誕生日プレゼントだった。
理由が犬と聞いて衛兵は驚き、そして怒る。
「野良犬を助けようと外出しようと……? そんなの駄目に決まってるでしょうが!」
「でも、寒そうに震えていたんだ! 水もすぐそこまで迫っている! だから助けなくちゃ!」
「無理言わないでください! 野良犬と王子の命! どっちが大事なのかおわかりでしょう!」
「離してよ! 僕は、犬を助けたいだけなんだ!」
なおも暴れるアルフォンス。
アレクシスは彼を止めた。
「いけません、アルフォンス様。外は危険でございます。あなたが思っているよりも何倍にも。子供なんてすぐに海まで流されてしまいますわよ」
「そんな……アレクシスお姉さままで……」
落胆でうなだれるアルフォンスだったが、
「それでそのワンちゃんはどこにいらっしゃいますの?」
その言葉に顔を上げた。
「私が代わりに迎えに行って参りますわ。どの道の、どんなワンちゃんなんです? 男の子? 女の子?」
大雨に滴りながらもアレクシスはいつも通りの明るい笑顔を見せた。
「初めまして…………アルフォンス、です」
初めての彼の挨拶は母親の後ろからだった。
「ごめんなさい、この子、照れ屋で……ほおら、隠れてないでアレクシス様にしっかりと挨拶しなさい。お兄さんの……未来の花嫁になる人なんですから」
そう母親からたしなめられるも後ろから出ようとしなかった。
二人がお互いをどんな人物か知ったかは出会ってから一か月後のことだった。
王都に極めて珍しく大雨が降った。十年に一度の規模であったがまた宮廷魔術師エリック・ベルシュタインが予知していたおかげであらかじめ対策が施され人的被害は少なかった。家に籠っていれば安全は保証されていた。
しかしそんな大雨の中、こっそりと外に出る者がいた。
「なにをなさってるのです、アルフォンス様!」
「離してよ、僕は行かなくちゃいけないんだ!」
アルフォンスが外套を着て外に出ようとしていた。
「どうして外に出かけようとしているのです? 何か理由があるのです?」
運よく側にアレクシスはいた。騒ぎを聞きつけ大粒の雨が降る外に、ドレスのまま出ていた。
「犬が……犬が流れそうなんだ……!」
「犬ですか……飼われていませんよね?」
「ああ、そうだ! 飼っていない! 飯をあげたことも触ったこともないよ! 名前もあげていない、だけどずっと見てきたんだ! 城下町の野良犬だよ!」
この時からアルフォンスは魔法の単眼鏡で街を眺めるのが趣味だった。魔法の単眼鏡は母親からの誕生日プレゼントだった。
理由が犬と聞いて衛兵は驚き、そして怒る。
「野良犬を助けようと外出しようと……? そんなの駄目に決まってるでしょうが!」
「でも、寒そうに震えていたんだ! 水もすぐそこまで迫っている! だから助けなくちゃ!」
「無理言わないでください! 野良犬と王子の命! どっちが大事なのかおわかりでしょう!」
「離してよ! 僕は、犬を助けたいだけなんだ!」
なおも暴れるアルフォンス。
アレクシスは彼を止めた。
「いけません、アルフォンス様。外は危険でございます。あなたが思っているよりも何倍にも。子供なんてすぐに海まで流されてしまいますわよ」
「そんな……アレクシスお姉さままで……」
落胆でうなだれるアルフォンスだったが、
「それでそのワンちゃんはどこにいらっしゃいますの?」
その言葉に顔を上げた。
「私が代わりに迎えに行って参りますわ。どの道の、どんなワンちゃんなんです? 男の子? 女の子?」
大雨に滴りながらもアレクシスはいつも通りの明るい笑顔を見せた。
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