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【後日談】太陽が沈まない国カスターニャ
太陽が沈まない国カスターニャ
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大司祭が見届ける以外は飾り気のない結婚式が粛々と執り行われる。
イバン、アルフォンス、カルメンといった友人たちやアレクシスの両親が穏やかな笑顔を浮かべながら見守る。
式はいよいよ大詰め。誓いの証明が始まる。
純白のウェディングスーツを身に纏ったカルロスと同じく純白のウェディングドレスに身に纏ったアレクシスが向かい合う。
「あげるよ」
囁きながらベールアップ。
するとアレクシスはぎゅっと目を閉じていた。
「準備ばっちりですわ。これで喀血の心配はございませんわ」
せっかくの結婚式を台無しにしたくない。彼女はその一心だった。
「ふふっ、本当に君は飽きさせないね。君と歩む人生が今から楽しみでしょうがないよ」
カルロスは屈んで顔を近づける。
二人は多くの人に見守られながら愛を証明した。
アレクシスは今にも風船のように浮かんでしまいそうな足取りで赤い絨毯の上を歩く。
「夢心地ですわぁ……」
カルロスは転んでしまわないように腕を組んでエスコートする。
「これからも多くの夢を見てもらえるように頑張るよ」
出口の扉にはイバンが腕を組んで待ち構えていた。
「よぉ、カルロス。ちょっと困ったことが起きてだな」
「何があったんだい?」
「手違いで馬車を待たせる位置を間違えちまった。ざっと二千歩ほど歩いてもらうぜ」
「二千歩? それなら呼び寄せられる距離じゃないか」
「まあいいじゃねえの。たまにはゆっくりと二人で城下を歩くのもさ」
イバンはウィンクしながら扉を開く。
カルロスとアレクシスは開かれた扉の先を見て、ウィンクの意味を知る。
教会の前は広場になっていて馬車がすれ違える幅の道が伸びている。
普段は教会の周辺ということもあり静寂に満ち、閑散としている。
扉を開けた瞬間にチャペルが鳴り聖歌隊が一斉に讃美歌を歌い始めた。
それすらもかき消してしまいそうな拍手と歓声が巻き起こる。
「カルロス様、アレクシス様!! 結婚おめでとうございます!」
「末永くお幸せにー!!」
「オメデトー!!」
国民が広場に押し寄せていた。こぞって二人を祝福する。
あまりの人の多さに混乱が起きそうだったが、
「我らが誉れ高き親衛隊塔部隊! カルロス様、アレクシス様の晴れ舞台である! 我らの盾で花を添えようぞ!」
その鍛え抜かれた肉体でもって人と道の仕切りとなっていた。
熱狂する人混みの中、花を配る者もいた。
「アレクシス様が愛した花ですよー! これをもってアレクシス様を祝福しましょうー! どうぞどうぞ、持ってて! 一人一本! お金はいらないよー!」
親衛隊に混じって道に流れ込みそうな人間を背中で押し込む騎士見習いもいた。
「うわあ、ほんとかよ。あの頭のおかしそうな人、本当に妃になるのかよ」
教会から離れた場所では屋台を出す商魂逞しい者も。
「さあさあ! 食べてってー! ロデオ新名物豚骨ラーメン! アレクシス様のお墨付きだよー! チャーシューもおいしくなって新登場だよ! あ、一杯注文ですか!? ベン君、豚骨ラーメン一丁!」
カルロスは天を仰いだ後に仕掛人を見た。
「やってくれたな、イバン」
「礼はいらねえぜ」
「……ありがとう、わが友。最高の日になりそうだ」
そして隣の愛する人を見る。
「わあ! わあ! わあ! 王都中の人たちが集まっているみたいですわ!」
目を輝かせながらも涙を浮かべていた。
「みんな、僕たちのために集まってくれたんだね」
「私たちのためですか。まあ、なんとお返しすればよろしいのでしょう。私、嬉しさで胸がいっぱいですわ。返しようがございませんわ」
「今はとりあえず、幸せだってことを皆に伝えればいいと思うよ」
「ど、どうすれば? 私、このような場は慣れておりませんので」
「それじゃあ……アレがいいんじゃないかな?」
アレと聞いてアレクシスはふふふと微笑む。
「よろしいのですか? 流行ってしまいますわよ」
「あはは、それはどうだろうね」
「ええ、でも、そうですわね。アレがうってつけなのでしょう」
アレクシスは腰に手を当て、口に手を添える。
「おーっほっほっほ!」
お決まりの高笑いを披露した。
その高笑いは決して流行らなかったがしかし、皆を笑顔をもたらした。
平等に、分け隔てなく、光を届ける太陽のように。
イバン、アルフォンス、カルメンといった友人たちやアレクシスの両親が穏やかな笑顔を浮かべながら見守る。
式はいよいよ大詰め。誓いの証明が始まる。
純白のウェディングスーツを身に纏ったカルロスと同じく純白のウェディングドレスに身に纏ったアレクシスが向かい合う。
「あげるよ」
囁きながらベールアップ。
するとアレクシスはぎゅっと目を閉じていた。
「準備ばっちりですわ。これで喀血の心配はございませんわ」
せっかくの結婚式を台無しにしたくない。彼女はその一心だった。
「ふふっ、本当に君は飽きさせないね。君と歩む人生が今から楽しみでしょうがないよ」
カルロスは屈んで顔を近づける。
二人は多くの人に見守られながら愛を証明した。
アレクシスは今にも風船のように浮かんでしまいそうな足取りで赤い絨毯の上を歩く。
「夢心地ですわぁ……」
カルロスは転んでしまわないように腕を組んでエスコートする。
「これからも多くの夢を見てもらえるように頑張るよ」
出口の扉にはイバンが腕を組んで待ち構えていた。
「よぉ、カルロス。ちょっと困ったことが起きてだな」
「何があったんだい?」
「手違いで馬車を待たせる位置を間違えちまった。ざっと二千歩ほど歩いてもらうぜ」
「二千歩? それなら呼び寄せられる距離じゃないか」
「まあいいじゃねえの。たまにはゆっくりと二人で城下を歩くのもさ」
イバンはウィンクしながら扉を開く。
カルロスとアレクシスは開かれた扉の先を見て、ウィンクの意味を知る。
教会の前は広場になっていて馬車がすれ違える幅の道が伸びている。
普段は教会の周辺ということもあり静寂に満ち、閑散としている。
扉を開けた瞬間にチャペルが鳴り聖歌隊が一斉に讃美歌を歌い始めた。
それすらもかき消してしまいそうな拍手と歓声が巻き起こる。
「カルロス様、アレクシス様!! 結婚おめでとうございます!」
「末永くお幸せにー!!」
「オメデトー!!」
国民が広場に押し寄せていた。こぞって二人を祝福する。
あまりの人の多さに混乱が起きそうだったが、
「我らが誉れ高き親衛隊塔部隊! カルロス様、アレクシス様の晴れ舞台である! 我らの盾で花を添えようぞ!」
その鍛え抜かれた肉体でもって人と道の仕切りとなっていた。
熱狂する人混みの中、花を配る者もいた。
「アレクシス様が愛した花ですよー! これをもってアレクシス様を祝福しましょうー! どうぞどうぞ、持ってて! 一人一本! お金はいらないよー!」
親衛隊に混じって道に流れ込みそうな人間を背中で押し込む騎士見習いもいた。
「うわあ、ほんとかよ。あの頭のおかしそうな人、本当に妃になるのかよ」
教会から離れた場所では屋台を出す商魂逞しい者も。
「さあさあ! 食べてってー! ロデオ新名物豚骨ラーメン! アレクシス様のお墨付きだよー! チャーシューもおいしくなって新登場だよ! あ、一杯注文ですか!? ベン君、豚骨ラーメン一丁!」
カルロスは天を仰いだ後に仕掛人を見た。
「やってくれたな、イバン」
「礼はいらねえぜ」
「……ありがとう、わが友。最高の日になりそうだ」
そして隣の愛する人を見る。
「わあ! わあ! わあ! 王都中の人たちが集まっているみたいですわ!」
目を輝かせながらも涙を浮かべていた。
「みんな、僕たちのために集まってくれたんだね」
「私たちのためですか。まあ、なんとお返しすればよろしいのでしょう。私、嬉しさで胸がいっぱいですわ。返しようがございませんわ」
「今はとりあえず、幸せだってことを皆に伝えればいいと思うよ」
「ど、どうすれば? 私、このような場は慣れておりませんので」
「それじゃあ……アレがいいんじゃないかな?」
アレと聞いてアレクシスはふふふと微笑む。
「よろしいのですか? 流行ってしまいますわよ」
「あはは、それはどうだろうね」
「ええ、でも、そうですわね。アレがうってつけなのでしょう」
アレクシスは腰に手を当て、口に手を添える。
「おーっほっほっほ!」
お決まりの高笑いを披露した。
その高笑いは決して流行らなかったがしかし、皆を笑顔をもたらした。
平等に、分け隔てなく、光を届ける太陽のように。
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仏も破顔の三度の感想ありがとうございます……!
たった今後日談を含めて完結しました!
今度こそ真の完結です!
構成の話ですがマリアが幼馴染ではないとイバンの会話で発覚した後に王都の話、黒幕の情報を挟み込んだほうがよかったかなと反省しています。
その後の話もいろいろと頭の中で構想はしているのですが、いつ発表できるかはこの作品の人気次第としか言いようがありません。
短編程度なら出力できるのですがどれも話の都合上アレクシスが出てこないので読んでくれる方が現れるかどうか……。
書き上げたい気持ちはものすごくあるのですが……。
最後になりますが拙作を最後まで読んでいただき、また金よりも貴重な感想を残していただき感謝しきれないほど嬉しいです。
別の作品でも同じように楽しんでいただけるよう頑張ります。
本当にありがとうございました。
二度も感想いただきありがとうございます!
異世界ファンタジーなだけあり、世界観をぶち壊すつもりで思い切ってみたのですが受け入れてもらい、そして楽しんでいただけたようで何よりです。
自信をもって自分の思う面白いを詰め込んでいるつもりですがこうして感想としてメッセージで送っていただくと本当に救われた気持ちになります。
最後までどうか、どうか、お楽しみください!
ありがとうございました!
あらすじがとても面白く興味を持ったので、28ページまで一気読みさせていただきました。
初めは凄くポジティブで、全く相手の話を聞かない主人公にこの物語はどうなっていくんだ? とハラハラしていました。
しかし読み進めていくうちにコメディとして大変面白く、その上で感動する部分も多々ありました。彼女の言動により周りが変わっていく物語なんですよね。
特に、どんなことでもめげなそうな彼女がある出来事により落ち込んでしまい、その時相手から言われた言葉はとても印象深いです。(内容はネタバレになるため省きます)そして彼もまた、同じ気持ちを持ちながらも素直な胸の内を吐露する。そこで主人公が心動かされる場面がとても好きです。
人の話を聞かず、自分がこうと思えば無鉄砲に突き進んでいく。我が道をひた歩く彼女は、初めは扱い辛いタイプの人なのだろうかと感じます。
しかし我が道を行くけれども、優しさも持っていれば恥じらいもある。
そんな主人公に読者もいつしか引き込まれていく物語だなと感じました。
とても魅力的で面白い主人公だと思いました。
全体的にスピード感もあって、一ページでキリの良いところでまとまっている作品なのでとても読みやすかったです。この先もハラハラする展開のようで続きが非常に楽しみな作品だと思いました。
まずは拙作を読んでいただきありがとうございます。そして事細やかな感想まで残していただき感謝の言葉が足りません。
緩急つけた捉えどころのないジェットコースターのような作品ですが楽しんでいただけたのであれば何よりです。
説明から例のシーンかなと推察します。私もあのシーンはお気に入りです。
実は本筋にあまり必要のない寄り道パートなので楽しんでいただけたるか不安でしたが気に入っていただけたら救われた気持ちになります。
主人公であるアレクシスが第一印象は面食いのやべーやつ(その後も終始面食いのやべーやつなのですが)にしてからいろいろな彼女の側面を提示していく流れを拾ってくれる方が現れてほっと一安心というか救われた気持ちです。
web小説らしくテンポを重視を心がけて書いていた私ですがその執筆スピードに自分自身も驚いてしまっています。
区切りどころが文字数かそれとも展開かでいつも悩んでいます。キリのいいところと褒めていただけると自信がついた気になります。今後の参考にさせていただきます。
この後の展開も楽しんでいただけるように全力で執筆に取り組んでいます。
婚約破棄された原因やその他諸々発覚していきますが主人公のアレクシスは変わらず面食いで復縁に向けて突き進んでいきます。
最後になりますが物語を読んでいただいたこと、感想をいただいたこと、本当に感謝しきれません。
どうか引き続き、物語をお楽しみください。長文失礼しました。