8 / 107
10層ボス ダーペント戦 前編
ロビンは盾を前にして先陣を切る。
「ビクトリアさん! いつもの頼むぜ!」
ビクトリアは言われる前から杖を立てていた。
「はいはい、わかってます。補助魔法、身体強化」
ロビンの全身を白いオーラが覆う。
「ダアアアアア!!」
ダーペントは尻尾を振り回す。ただでさえ巨躯、おまけに岩のように硬い皮膚。それだけで脅威になりえる。
ロビンはそれに対して、
「うおおおおおおおお!!」
果敢に飛び込む。
尻尾が地面に振り落とされる直前、尻を擦りながら滑り込む。
彼がこのような大胆な行動をとれたのはバフのおかげだ。身体強化はその名の通り身体能力を向上させる魔法。クイックはスピード限定だがこちらはスピードだけでなく筋力や動体視力までも倍増させる。
「惜しかったな、デカブツ!」
去り際に短剣で切りつけるが浅い傷しか入らない。
「HPでいうところのダメージ1ってところか!? ゲージも全然変動してないんじゃねえの!?」
わかっていたとはいえ、やはり目の当たりにするとショックは大きかった。
ショックな出来事はそれだけではない。
「っていうか、マチルダさんの魔法二発食らっておいてHPが九割以上も残ってるじゃねえか!?」
あれだけの火力のモロに受けながらまるでダメージが入っていない。
しかしこの事実にマチルドは動揺はしなかった。
「相性……ってところかしら」
腕を組んで敵を観察する。
ヒーラーのビクトリアも加わって後衛陣は作戦会議に入る。
「マチルドはあの敵について詳しくないの」
「あいにく知ってるのは名前だけね」
「名前は知ってるのに敵の情報は知らないの? 弱点とか。街で情報を買ったりしなかった?」
「街では生還者と名乗る者はたくさんいるわよ。どいつもこいつも決まって情報を欲しければ金をよこせってせびってきたわ。そういうのは詐欺のほうが多いの。それに下手に真偽不明の情報収集するとかえって錯綜するし先入観ができちゃうから、あたしは常に自分の目と耳で見聞きしたものを信じるようにしているの」
「なるほど、そういうのもありだね。でも他のダンジョンも潜ったことがあるんだよね? 似たような敵はいなかったの?」
「大蛇とゴーレムは倒したことがある。でも今あたしたちが戦っている敵、ダーペントは本当に初めて。あれはなんなのかしら? 魔物にしては独特な雰囲気を感じずにはいられないのよね」
そう言ってマチルドは優雅にコーヒーを飲み始める。
「こらー!! 戦闘中のコーヒーは禁止だっつったろ!」
こうして彼女たちがコーヒーを飲みながらの作戦会議が開けるのもロビンのおかげだ。
彼が率先して囮になって時間を稼いでいるからだ。効かないとわかっている短剣の攻撃もヘイトを稼ぎ、気を引くためだった。ただし敵を怒らせていることもあるため、その分攻撃力が通常よりも増えていたりする。
「ダアアアアアア!! ダアアアアア!!!」
大蜘蛛とは比べ物にならないほど一撃が重く、速く、鋭い。補助魔法の恩恵を得ながらもロビンは防戦一方。
躱しきれずに尻尾のビンタを盾で受け止める。防御してなお彼のHPの一割が減る。
「ぐおお!? 骨の髄まで響くな、こりゃ!? これがレベル30ってやつかよ!!」
それでもまだ耐えているほう。もしもバフに盾がなければ全身の骨が粉々になっていただろう。
「師匠! やっぱり俺も前線に──」
テオがそう言うと、
「うるせええ!! 何度も言わせるな!! お前はそこで黙って見てろ!!」
らしからず苛立ったように語気を荒げる。
「っふう……すまん。後衛陣。ちょっとスキル『隠密』を使わせてもらうぜ」
「あ、こら! タンクが姿をくらましてどーすんのよ!!」
マチルドの制止も振り切ってロビンはスキル『隠密』を発動する。
スキル『隠密』とはその名の通り、気配を消して姿をくらます。ダンジョンを潜る前からロビンがもっていた唯一のスキル。
戦闘中に発動すれば敵の背後を取れたりと便利ではあるのだが、タンクが使ってしまうと、
「ダアアアアア!!」
ダーペントの首の向きを変えて威嚇する。
「ほらあ! こっちにターゲットが移っちゃうじゃない! あんの役立たず!!」
ヘイトが別の対象に移ってしまう。この場合は魔法二発当てたマチルドに向くことになる。
「大丈夫! これで終わらせる!」
ロビンはまんまとダーペントの背後を取っていた。
「今から必殺の、必殺の……しまった、技名考えていなかった……えーとあれだ、『ロビンアタック』をお見舞いしてやるぜ!」
ロビンアタック。真っ赤な嘘に加えて恐ろしくダサい名前。
しかし一人には大好評のようで、
「ロビンアタック!? なにそれ!? 超かっこよさそう!!!」
テオだけは目を輝かせていた。ビクトリアは呆れを通り越して侮蔑の目。
どちらの視線もズキズキと痛みとして感じながらもロビンは嘘を突きとおす。
「マチルド、よーく見とけよ! 3,2,1でロビンアタックだ! いいな、3,2,1だぞ!」
入念なチェックをしてから、ロビンは全力でダーペントの背後からとびかかる。そして空中でカウントダウンを開始する。
「3,2,1──ロビンアターーーーーーック!!」
大仰な剣の振り下ろし。短剣は爆発を起こすこともなく、カキンと跳ね返る。
「マチルドさん!!??? 話が違いますよ!!!???」
ロビンは全力でマチルドの姿を探すがどういうわけか彼女の姿が見当たらない。
親切なビクトリアが教えてくれる。
「マチルドなら隠密魔法で避難したわよ」
「え、待てよ、それじゃあ今ヘイトが向いてるのって……」
ロビンはゆっくりと頭上を見上げる。
するとばっちりとダーペントと目が合うのだった。
「ビクトリアさん! いつもの頼むぜ!」
ビクトリアは言われる前から杖を立てていた。
「はいはい、わかってます。補助魔法、身体強化」
ロビンの全身を白いオーラが覆う。
「ダアアアアア!!」
ダーペントは尻尾を振り回す。ただでさえ巨躯、おまけに岩のように硬い皮膚。それだけで脅威になりえる。
ロビンはそれに対して、
「うおおおおおおおお!!」
果敢に飛び込む。
尻尾が地面に振り落とされる直前、尻を擦りながら滑り込む。
彼がこのような大胆な行動をとれたのはバフのおかげだ。身体強化はその名の通り身体能力を向上させる魔法。クイックはスピード限定だがこちらはスピードだけでなく筋力や動体視力までも倍増させる。
「惜しかったな、デカブツ!」
去り際に短剣で切りつけるが浅い傷しか入らない。
「HPでいうところのダメージ1ってところか!? ゲージも全然変動してないんじゃねえの!?」
わかっていたとはいえ、やはり目の当たりにするとショックは大きかった。
ショックな出来事はそれだけではない。
「っていうか、マチルダさんの魔法二発食らっておいてHPが九割以上も残ってるじゃねえか!?」
あれだけの火力のモロに受けながらまるでダメージが入っていない。
しかしこの事実にマチルドは動揺はしなかった。
「相性……ってところかしら」
腕を組んで敵を観察する。
ヒーラーのビクトリアも加わって後衛陣は作戦会議に入る。
「マチルドはあの敵について詳しくないの」
「あいにく知ってるのは名前だけね」
「名前は知ってるのに敵の情報は知らないの? 弱点とか。街で情報を買ったりしなかった?」
「街では生還者と名乗る者はたくさんいるわよ。どいつもこいつも決まって情報を欲しければ金をよこせってせびってきたわ。そういうのは詐欺のほうが多いの。それに下手に真偽不明の情報収集するとかえって錯綜するし先入観ができちゃうから、あたしは常に自分の目と耳で見聞きしたものを信じるようにしているの」
「なるほど、そういうのもありだね。でも他のダンジョンも潜ったことがあるんだよね? 似たような敵はいなかったの?」
「大蛇とゴーレムは倒したことがある。でも今あたしたちが戦っている敵、ダーペントは本当に初めて。あれはなんなのかしら? 魔物にしては独特な雰囲気を感じずにはいられないのよね」
そう言ってマチルドは優雅にコーヒーを飲み始める。
「こらー!! 戦闘中のコーヒーは禁止だっつったろ!」
こうして彼女たちがコーヒーを飲みながらの作戦会議が開けるのもロビンのおかげだ。
彼が率先して囮になって時間を稼いでいるからだ。効かないとわかっている短剣の攻撃もヘイトを稼ぎ、気を引くためだった。ただし敵を怒らせていることもあるため、その分攻撃力が通常よりも増えていたりする。
「ダアアアアアア!! ダアアアアア!!!」
大蜘蛛とは比べ物にならないほど一撃が重く、速く、鋭い。補助魔法の恩恵を得ながらもロビンは防戦一方。
躱しきれずに尻尾のビンタを盾で受け止める。防御してなお彼のHPの一割が減る。
「ぐおお!? 骨の髄まで響くな、こりゃ!? これがレベル30ってやつかよ!!」
それでもまだ耐えているほう。もしもバフに盾がなければ全身の骨が粉々になっていただろう。
「師匠! やっぱり俺も前線に──」
テオがそう言うと、
「うるせええ!! 何度も言わせるな!! お前はそこで黙って見てろ!!」
らしからず苛立ったように語気を荒げる。
「っふう……すまん。後衛陣。ちょっとスキル『隠密』を使わせてもらうぜ」
「あ、こら! タンクが姿をくらましてどーすんのよ!!」
マチルドの制止も振り切ってロビンはスキル『隠密』を発動する。
スキル『隠密』とはその名の通り、気配を消して姿をくらます。ダンジョンを潜る前からロビンがもっていた唯一のスキル。
戦闘中に発動すれば敵の背後を取れたりと便利ではあるのだが、タンクが使ってしまうと、
「ダアアアアア!!」
ダーペントの首の向きを変えて威嚇する。
「ほらあ! こっちにターゲットが移っちゃうじゃない! あんの役立たず!!」
ヘイトが別の対象に移ってしまう。この場合は魔法二発当てたマチルドに向くことになる。
「大丈夫! これで終わらせる!」
ロビンはまんまとダーペントの背後を取っていた。
「今から必殺の、必殺の……しまった、技名考えていなかった……えーとあれだ、『ロビンアタック』をお見舞いしてやるぜ!」
ロビンアタック。真っ赤な嘘に加えて恐ろしくダサい名前。
しかし一人には大好評のようで、
「ロビンアタック!? なにそれ!? 超かっこよさそう!!!」
テオだけは目を輝かせていた。ビクトリアは呆れを通り越して侮蔑の目。
どちらの視線もズキズキと痛みとして感じながらもロビンは嘘を突きとおす。
「マチルド、よーく見とけよ! 3,2,1でロビンアタックだ! いいな、3,2,1だぞ!」
入念なチェックをしてから、ロビンは全力でダーペントの背後からとびかかる。そして空中でカウントダウンを開始する。
「3,2,1──ロビンアターーーーーーック!!」
大仰な剣の振り下ろし。短剣は爆発を起こすこともなく、カキンと跳ね返る。
「マチルドさん!!??? 話が違いますよ!!!???」
ロビンは全力でマチルドの姿を探すがどういうわけか彼女の姿が見当たらない。
親切なビクトリアが教えてくれる。
「マチルドなら隠密魔法で避難したわよ」
「え、待てよ、それじゃあ今ヘイトが向いてるのって……」
ロビンはゆっくりと頭上を見上げる。
するとばっちりとダーペントと目が合うのだった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺のレベルが常人では到達不可の領域にある件について ~全ユーザーレベル上限999の中俺だけレベル100億いった~
仮実谷 望
ファンタジー
ダンジョンが当たり前のようにある世界になって3年の月日が流れてずっとダンジョンに入りたいと願っていた青年が自宅にダンジョンが出現する。自宅の押し入れにダンジョンが出現する中、冷静に青年はダンジョンを攻略する。そして自分だけがレベル上限を突破してレベルが無尽蔵に上がり続けてしまう。そうしていづれは最強への探索者として覚醒する青年なのであった。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~
仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。
ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。
ガチャ好きすぎて書いてしまった。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。