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19.聖女様、別邸に着く

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 別邸に着き、私はスタッグ様に連れられ、彼の部屋へと向かう。

「エネマ、私は彼と2人きりでお茶をしたいと存じます、エネマは馬車で待機をしていてください」

 扉の前に着き、私はエネマにそう指示をした。

「……お言葉ですが、そうしますと、聖女様をお守りすることが……」
「彼がいるから大丈夫です」

 私はスタッグ様に向いてそう言った。
 彼は平然そうに見えるが、目はそうではなかった。

「……かしこまりました、馬車で待機しています」

 エネマは頭を下げ、その場から去っていった。
 ……スタッグ様を見て若干しかめっ面をしているようでしたが……気のせいでしょう。

「……さ、参りましょうか? 『スタッグ様』」
「……」

 彼が扉を開け、私たちは部屋へと入った。



 部屋の中には、既に温かいお茶と茶菓子がテーブルの上に添えられていた。

「さて、お茶にしましょうか、聖女様」
「そうですね」

 私たちは各々席に着き、『お茶会』を始めることにした。
 王城が出すだけあって、お茶と茶菓子はとても美味だった。
 お茶は仄かな苦みや渋みを感じつつも、茶菓子の甘さがそれに丁度良かった。
 ……何故そんなことを思っているほど余裕なのかと申しますと。

「……」
「……」

 彼が何も話題を切り出さなかったからです。
 人を呼びつけておいてこれって何なのでしょうか?

「あの」
「……なんだよ?」

 誰もいなくなったからか、彼は以前のような乱暴な口調になっていた。

「いや、ここまで呼んでおいて何も発言されないというのはいかがなものでしょうか?」
「……」

 スタッグ様は図星を着かれたのか、再び黙ってしまった。
 ……いじめてやろう。

「はぁ、残念ですね。せっかくあの『死ぬほどつまらない話』を聞けると思いましたのに」
「……」
「ここまで来るのって結構時間かかりましたよね? 私はやりたいことを我慢してここまで来たというのに、これでは約1時間無駄にしたことと同じになりますね」
「……」

 彼は黙り続け……下を向いた。
 ……なんでしょう、腹が立ちますね。

「黙ってないで何か言ってくださいよ! それでも男ですか!」
「……うぅ」

 彼はようやっと口を開いた。
 そして……片手で自信の目を抑えた。

「俺だって……面白い話をしたいんだよ……」
「いやあの……」

 彼は……項垂れた。
 な、何なんですかいきなり……。
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