動物に成り切るしか能がないと言われて追放された私、慰謝料代わりにもらったゴミアイテムで街に現れたモンスターを倒したら英雄になった件

立風館幻夢/夜野一海

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第42話 貫く爪

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「殺す……全てを……殺す」

 ドラゴンロードは街中で殺人の限りを尽くしていた。
 その姿は、覚醒したばかりのロードモンスターに似ていた。
 殺害という欲求に支配され、人々を襲い続ける。
 街中は悲鳴で覆われ、覚醒することのなかった死体が転がっていた。

「おらぁ! 死ねや怪物め!!」
「こいつを倒せば、また報酬ゲットですね」

 カロン、ニクスをはじめとした冒険者たちは、報酬目当てにドラゴンロードに立ち向かう。
 しかし、果敢に立ち向かったは良いものの、帰らぬ人となった冒険者も多数いた。
 カロンは剣を振りかぶり、荒々しくドラゴンに攻撃を仕掛けた。
 しかし、命中はしているものの、致命傷を与えられているわけではなった。

「死ね……死ね……死ねえええええええええええ!!」

 ドラゴンロードは、カロンに目掛けて攻撃を仕掛ける。
 しかし……。

「カロン、邪魔です」
「おい! ニクス! 俺がいるんだから攻撃すんじゃねぇ!!」

 ニクスは援護と呼べるかもわからない射的で、ドラゴンロードに攻撃を仕掛けた。
 矢がカロンに命中しそうになるも、間一髪で当たらなかった。

「ぐはぁ……はぁ……はぁ……」

 ドラゴンロードは、矢の攻撃に苦しんでいた。
 それもそのはず……。

「苦しいですか? そうですよねぇ、この矢には毒を塗ってあるのですよ、さぁて……早いところ死んでいただけませんかねぇ?」

 ニクスは矢に毒を塗っていた。
 それを聞いたカロンは……怒りを露わにし、ニクスに向かって来た。

「おい! そんなあぶねぇのをこっちに向けて放つんじゃねぇよ!」
「当たっていないでしょう?」

 2人は苦しんでいるドラゴンロードの様子から、余裕だと判断し、口論を始めてしまった。

「そういう問題じゃねぇ!! 俺を死なせる気か!!」

 カロンは砂を掴んで、ニクスの弓にぶっかけた。
 すると、ニクスはこの世の終わりかのような表情を見せ、弓を掌で拭き始めた。

「カロン! なんてことを!!! あぁ……愛しの弓ちゃん……汚れがこんなに……綺麗にしなきゃ……綺麗にしなきゃ……」
「ふん! そうやって一生拭いてろ! 俺は報酬が欲しいんだよ! 報酬が!! 死んだら元も子もねぇだろうが!!」
「貴方は金しか頭にないんですか!? 貴方の馬鹿は一級品ですね! あぁ……早く綺麗にしないと……」
「なんだとこの野郎!! 黙って俺の言う事を聞け!!」

……そんな口論の場に、2人が余裕と判断した怪物が襲い掛かる。
ドラゴンロードは爪を立て……2人に向かって攻撃を仕掛けた。

「死ね……死ねえええええええええええええええええええええ!!」

ドラゴンロードの両腕が……それぞれ、2人の肉体を貫いた。
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