15 / 95
6.高貴なお方が庶民食堂をご所望です(なお好物はチーズ) 前
しおりを挟む
授業中は特に何事もなく過ぎた。
いやまあ、ちらちら「なんであいつが殿下と一緒にいるんだろ」と飛んでくる視線は感じたが、さすがに座学中は面と向かって絡まれはしなかった。
皇子殿下は衆目にさらされることに慣れきっているようで、堂々とした態度である。
まあ彼の場合、うるさいと思ったら振り返って微笑めば、それでこと足りるというのもあるのだろう。高貴な美形の笑みは力である。
わたくしも、ひそひそクスクス攻撃にはそこそこ耐性のある人間だった。
レオナールが遊び相手に選ぶような女学生は、大体お一人様というより複数人で行動するタイプが多かった。あの手のものは相手にしなければ別の暇つぶしに趣味が移るものなので、徹底無視に限る。
……と思っていたらヒートアップしたミーニャという前例ができてしまったので、多少検討の余地はあるかもしれない。
そもそもレオナールは、本当にミーニャと仲良くしていたのだろうか? 腕を組んでいるところなら何度も見たけれど、最近のあれこれを思うに、レオナールはむしろ彼女を煙たがっていたのではないか? 野心家のミーニャが一方的にアタックをかけていたのでは説が、わたくしの中で浮上している。
まあ、あの二人にはこれ以上こちらから関わる気はないので、当人達の恋愛模様は是非二人だけで片付けてほしいと思う。
ああ、それにしても久しぶりだ、このチクチク感……学園に入学したばかりの頃も、「デュジャルダン侯爵が是非にと指名した婚約者があれ?」ってすっごい針のむしろだったもの。
(学校に仲の良い人間がいなくても困りはしない――むしろ都合が良かったぐらいなのだけど、この先のことを考えると、今のままも心もとないのよね。殿下は自分の国に来ない? なんておっしゃってくださったけど……)
ちらりと横をうかがい見れば、皇子殿下は黒板を見つめ、講義に耳を傾けていらっしゃるようだった。真面目な方だ……。
(世話係として成果を示せば、殿下が本当に条件のいい仕事先を紹介してくれるかも……だめだめ、シャンナ。なんとなく目の前の幸運に漂った結果が、階段突き落とし未遂だったでしょう。もっと自分のことは自分でなんとかしないと)
はあ、とため息を吐いてしまう。
(……と言ってもなあ、わたくし基本的には深いことを考えたくない人間なのよね……。まあ、当面は皇子殿下の学園生活が少しでも楽しくなるように、できることをしてみよう。それしかないわ)
ちょうどわたくしの思考もまとまったところで、午前の科目終了を告げる鐘が鳴った。
いやまあ、ちらちら「なんであいつが殿下と一緒にいるんだろ」と飛んでくる視線は感じたが、さすがに座学中は面と向かって絡まれはしなかった。
皇子殿下は衆目にさらされることに慣れきっているようで、堂々とした態度である。
まあ彼の場合、うるさいと思ったら振り返って微笑めば、それでこと足りるというのもあるのだろう。高貴な美形の笑みは力である。
わたくしも、ひそひそクスクス攻撃にはそこそこ耐性のある人間だった。
レオナールが遊び相手に選ぶような女学生は、大体お一人様というより複数人で行動するタイプが多かった。あの手のものは相手にしなければ別の暇つぶしに趣味が移るものなので、徹底無視に限る。
……と思っていたらヒートアップしたミーニャという前例ができてしまったので、多少検討の余地はあるかもしれない。
そもそもレオナールは、本当にミーニャと仲良くしていたのだろうか? 腕を組んでいるところなら何度も見たけれど、最近のあれこれを思うに、レオナールはむしろ彼女を煙たがっていたのではないか? 野心家のミーニャが一方的にアタックをかけていたのでは説が、わたくしの中で浮上している。
まあ、あの二人にはこれ以上こちらから関わる気はないので、当人達の恋愛模様は是非二人だけで片付けてほしいと思う。
ああ、それにしても久しぶりだ、このチクチク感……学園に入学したばかりの頃も、「デュジャルダン侯爵が是非にと指名した婚約者があれ?」ってすっごい針のむしろだったもの。
(学校に仲の良い人間がいなくても困りはしない――むしろ都合が良かったぐらいなのだけど、この先のことを考えると、今のままも心もとないのよね。殿下は自分の国に来ない? なんておっしゃってくださったけど……)
ちらりと横をうかがい見れば、皇子殿下は黒板を見つめ、講義に耳を傾けていらっしゃるようだった。真面目な方だ……。
(世話係として成果を示せば、殿下が本当に条件のいい仕事先を紹介してくれるかも……だめだめ、シャンナ。なんとなく目の前の幸運に漂った結果が、階段突き落とし未遂だったでしょう。もっと自分のことは自分でなんとかしないと)
はあ、とため息を吐いてしまう。
(……と言ってもなあ、わたくし基本的には深いことを考えたくない人間なのよね……。まあ、当面は皇子殿下の学園生活が少しでも楽しくなるように、できることをしてみよう。それしかないわ)
ちょうどわたくしの思考もまとまったところで、午前の科目終了を告げる鐘が鳴った。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる