理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?

鳴田るな

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 学生達が一斉に教室を飛び出していく中、皇子殿下はううん、と気持ちよさそうにのびをなさる。

 優雅だ。行動の一つ一つが絵になる人である。貴族、特に保有魔力の高い人間は総じて整った容貌になるものだが、その中でも殿下は別格だ。レオナールだってなかなかの色男だったのに、殿下の隣に立つと完全に凡人と化していた。皇族すごい。

 感心しているわたくしに、彼は振り返り、またまぶしい笑みを浮かべた。

「大衆食堂に行こうか、シャンナ」
「……ご冗談ですか?」
「至って本気だよ?」

 わたくしは真顔で、殿下は笑顔。なんだかこの構図、安定してきたような気がするな。

 お昼休みなので食べに行こう、という提案自体は自然だ。
 どこに行きたいかもすぐわかるし、案内することに限って言えばわたくし程度でも問題なく任務遂行できるだろう。
 しかし殿下がお望みなのは大衆食堂――ここがちょっと雲行きの怪しい部分なのだ。

 そもそもこの王立学園は、その昔、貴族の子弟のために建てられた。王侯貴族によくある、王都に妻子を預けさせて反乱を抑止する政策の一環というところだ。

 設立当初は貴族男子のみ受け入れていたが、そのうち優秀な平民が学生に加わり、そして今では女子も加わっている。我が国は伝統的に保守派なので、身分や性別を問わぬ教育なんて革新的概念は、当然隣の皇国から輸入した文化となる。

 要するに建前では平等をうたっているが、明確な階級があるということだ。
 そして皇子殿下のなさることであれば、基本は受け入れられるだろうが、まあわざわざ平民層に手を出すとなると……やっぱりちょっと、色んな方面から反感買うんじゃないかな……。

「殿下、一応この王立学園の不文律として、高貴なお方は庶民と食卓を共にしません。ご存じでしょうか?」
「うん。だから大衆食堂とプライベートレストランに別れているのでしょう?」
「ご存じの上で、大衆食堂をあえて選ばれる、と」
「だってせっかく遊学中なのだもの、皇室ではできないことを経験してみたいじゃないか。それともシャンナもプライベートレストラン利用者で、大衆食堂は使ったことがないとか?」
「いえわたくしは……どちらかといえば食堂利用者ですが……」

 正確に言えば、食堂で購入した軽食を誰もいない所まで行って一人でもそもそ食べるのが、わたくし本来のランチスタイルだ。ぼっち飯ばんざい。

(郷に入っては郷に従えとも言いますが、確かに皇室からはじめて外に出られた殿下が、未知の刺激を求められるのも当然のこと……)

「ちなみに参考までにお聞きしたいのですが、昨日まではどのような昼食を? レストランをご利用だったのですか?」
「いや? 昨日までは知っている人がいなかったから、迎賓館に用意してもらって転移魔法で移動していたよ。今日はシャンナと食べるつもりだったから、お昼は大丈夫って言ってあるんだ」

 毎度のことですがさらっとすごいことを全然すごくない風に言うんですよね、この人。ああそんなに目を輝かせて……これはもう、腹をくくって行くしかないか。

 トラブルの懸念は払拭できていないけれど、一応は王立学園内なので、平民層のエリアとて別に世紀末のような治安であるわけでなし。
 まずは行ってみて、駄目そうだったら殿下には隠れていただいて、わたくしが二人分のランチを調達し、どこか人のいない場所で食べる――こんな感じのプランで行こうかな。


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