理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?

鳴田るな

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 メニュー選びにかなり時間をかけたせいか、普段は争奪戦の激しい学生食堂のテーブルはまばらに空いていた。

 窓際の席を確保すると、殿下は早速、メイン料理に手をつける。

「サンドイッチは食べたことがあるけど――他の国では学生が食べるものだと聞いたから」

 とはにかむようにおっしゃりながら、ナイフとフォークであっという間に一口サイズに切り分けていく。とろりとしたチーズは希望通りたっぷり増量されていて、すっかりご満悦の表情だ。

 ハンバーガーをこんなに優雅に食べる人、はじめて見た……。

 ずっと眺めていたかったが、殿下のお食事の邪魔をしてはいけないし、ぼーっとしていて食べ終わった殿下をお待たせするようなことがあってもいけない。
 わたくしも惣菜パンにかぶり――つこうとして、今日は申し訳程度に小さくちぎってから食べるようにする。

 そういえば確か、皇国の食事は、作るのも食べるのも効率的な物が好まれるのだ。
 素材の味そのままというか、焼くか煮るかして塩を振りましたみたいなメニューが王道なのだそうだ。

 だからお肉類も、ステーキで出てくることが基本だ。挽肉を他の材料と混ぜて……という工程を踏むハンバーグは、そもそも目にかかる機会が少ないらしい。

 一方我が国では、食に手間をかけることはむしろ好まれている。何かと保守主義でお堅いのだが、美食の追求という点においては、結構先鋭的でもあった。
 伝統的でおもてなしが評判に関わったりする国だからこそ、歓待の一部である料理文化が花開いたのかもしれない。

「…………」

 殿下がふと手を止めて、わたくしの方に顔を向けた。
 そわそわと、何度か自分の手元とわたくしの食べ物で視線を往復させる。
 ピンときたわたくしは、一度断ってから席を立ち、ナイフをもらってきて菓子パンの端を小さく切る。

「殿下、毒味は済ませておりますので」
「……!」

 途端にぱあっと表情が明るくなる。

 そうですよね、「自分の食べてるこれちょっとあげるから、それ少し味見させて」も庶民食の王道ですよね……。

 なお、ご褒美にはチーズケーキの一口目をいただいてしまった。
 良かったのかな、せっかくの好物なのに……と思ったけど、殿下は始終ニコニコしていらっしゃったので、まあいいか、と思った。


 無事に二人とも完食した。
 庶民文化をまだまだ堪能したいらしい殿下は、わたくしの申し出を断り、トレーの片付けまでご自分でなさるおつもりのようだ。

「殿下、そこにゴミ箱があるので、燃える物燃えない物を分別して捨ててください。それから、使った食器をゆすいでいただきます。生ゴミも流してください。お皿がある程度綺麗にできたら、そこの運搬装置に返却を……」
「シャンナ、食器が流れていくよ! 彼らはどこに行くんだい?」
「厨房の……皿洗いする所じゃないですかね……?」
「うわあ、話に聞いたことはあったけど、実物は初めて見たなあ……!」

 殿下は本当に、なんでもないことにもいちいち喜んでくださる。
 庶民と大差ない生き方をしてきた自分を、この日はじめて肯定的にとらえられるような気がした。

 ほっとして次の授業に移動しようとした瞬間――背後でガシャンと嫌な音が鳴った。
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