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後
しおりを挟むさて、まずは本日の本命、眼鏡屋に足を踏み入れる。
わたくしが本当にほしい眼鏡は、この見えすぎてしまう精霊眼とやらを抑制するものだ。ただ、このオプションつきが簡単に見つかるとは思っていなかった。
「はあ、見えすぎる魔力を見えなくする……? 申し訳ございません、当店ではそのような品物の取り扱いはございません」
ですよね。ダメ元での問い合わせだったので、全然大丈夫です。店員さんにぺこりと頭を下げる。
たぶん侯爵家から送られてきたのは、こういった街頭のお店というより、屋敷に呼びつけるお抱えの職人に作らせたりするものなんだろうなあ。
「残念だったね、シャンナ。別のお店を探しに行く?」
「いえ、ここで買っていこうかなと」
「単純に目を隠す用の奴ってことか?」
「はい。このお店が一番大きいですし」
仮にこの後目当ての特殊眼鏡が奇跡的に見つかったとしても、おそらく直接物が置いてある形ではなく、注文になると思うのだ。そしてオーダー式の特殊眼鏡だった場合、わたくしのご予算で足りない可能性が高い。
ロジェは眼鏡には用事も興味もなさそうだが、殿下は興味津々の様子でずらりと並ぶフレームを眺めている。
「シャンナにはどういう形が合うかなあ。丸めの方がいいの?」
「そうですね、四角に近いような形をしていると、やっぱりピリッとした印象になるようなので」
「だからって瓶底はやめろよ、本当に」
「わかりましたってば……」
わたくしはできるだけ地味で無難な丸形眼鏡を選ぼうとするのだが、殿下があれこれ試着するだけでもと持ってくるので随分時間がかかった。
まあわたくしのことはどうでもいいのだが、ついでに殿下もかけてみて「似合う?」なんて聞いてくる場面があり、「お似合いです!!」と食い気味に返してしまった。
いやあ、何着てもかっこよく着てしまう方ですねえ……惚れ惚れする……。
ちなみにロジェは、彼的に大不評らしいまん丸黒フレームを殿下につけさせて、爆笑していた。こらこら、お店の人の迷惑になることをしてはいけませんよ。
結局当初の予定通り、シンプルな楕円ベージュのフレームを選ぶことにした。
「……どうですか? 多少はましになりました?」
「んー。そうだな、レンズが光を反射するし、多少目元が隠れそうだ」
「ぼくはシャンナの目、可愛い形をしていると思うけどね……」
気のせいだろうか、殿下はわたくしが眼鏡を装備したらちょっぴり残念そうだ。
しかしこの全方面から「目つき悪い」と不評な目元を可愛いなんて表現する御仁がいらっしゃるとは……。
「皇国はつり目の方がモテるんだっけ? 王国は垂れ目の童顔が美人の条件だからな。女だと特に」
「そうだね、全体的にきりっとした見た目の人が好まれると思うよ」
二人の会話を聞きながら店を出ると、ふわっと何か良い香りが風に乗ってきた。
近くで屋台が出ているようだ。
「シャンナ! 立ち食いができる!!」
「いや皇子サマはともかく、そっちは一応令嬢なんだけどいいのか……?」
「わたくし、毎日のお昼ご飯は惣菜パンと菓子パンですのよ、ロジェくん」
「今すぐ悔い改めろ」
なんだか怒られてしまった。
ロジェくん、食事ネタでは結構厳しい人なのかもしれない。
皆で一つずつ、あつあつの揚げパンを買って、食べながら歩く。
「こういうのがやりたかったんだ」
ロジェはあっという間に食べきってしまったが、殿下は大事に一口ずつ味わっている。
わたくしも幸せな気持ちになりながら、あつあつがちょっと冷めるまでを待った。
……猫舌だから、仕方ない。
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