理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?

鳴田るな

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「殿下、お声がけいただいたことはありがたいのですが、控えめに申し上げて……その、人選ミス、ではないでしょうか」
「人選ミス?」

 殿下は面白そうにわたくしの言葉を繰り返し、首を傾げた。

 まぶしい。なんでわたくし、今こんなキラッキラな人に刃向かうようなこと言ったんだろう。命を以て詫びた方がいいのでは? いやそうではない。頑張れわたくし、正気を保つのよ。

「殿下は隣国から、見聞を広めるためにこの国へいらしたのではないでしょうか。我が国のことを学ぶにしろ、学園で過ごしやすくしたいにせよ、わたくしでは力不足に感じます。その、わたくし一応男爵令嬢ということになっていますが、ほとんど平民と変わらないというか――」
「うん、そう。皇室からも国からも出た今だからこそ、これまで関わる機会のなかった世界を知りたくて」

 なるほど、素晴らしいお考えですね!
 ……あれ? わたくし今、辞退の流れに持っていくつもりだったのだけど、「むしろきみが適任者だよ」って更に包囲網が狭められてない?

「ねえ、シャンナ。きみは昨日、階段から突き落とされて危うく死にかけたんだよ? たまたまぼくが通りがかったからことなきを得たし、今日は無事に婚約破棄されたみたいだ。とはいえ、まだきみの身が安全になったとも、将来がよくなったとも言えない。違うかな?」

 その話題を出されると痛い。

 そう、わたくしは既に、殿下に二度も助けてもらっている。一度目は命を、二度目は円滑な婚約破棄を。もし対等な身分の人間同士だったとしても、借りが累積している状態だ。

 その対価に自分の意に従えということであれば、話はわかりやすい。

 わたくしがぐ、と詰まったのを見透かすように、形の良い切れ長の青い目がすうっと細められた。

「王国は伝統で動くらしいが、帝国では適材適所こそ求められるもの。ぼくは皇室の人間だからね、きみにはもっとふさわしい場所があるように感じた。だけど錯覚かもしれないし、きみにはきみの事情がある。だからまずは知り合うところから始めたい……こういうところで、ひとまず納得してはもらえないかな」

 正直に言うなら、どう考えても不釣り合いすぎて、殿下の本当の目的が全く見えない。この人はわたくしに、何を期待しているのだろう。

 けれど皇室の方の事情や考えがわたくしに見抜けるはずもなし、もし察せたとしてもどのみち答えは一択だ。

「かしこまりました、殿下……不肖シャリーアンナ=リュシー=ラグランジュ――その、精一杯殿下の学園生活が充実するよう、お世話させていただきます……?」
「うん。ありがとう、シャンナ。これからよろしく」

 こうしてわたくしは、皇子殿下のお世話係になってしまった。

 しかも翌日早速、殿下にさらに借りを積み上げることになるのだ。
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