理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?

鳴田るな

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 やがて応接室のような場所に通されると、侯爵閣下はまたもや音もなく現れた使用人達に、お茶とおいしそうなケーキを用意させる。

 それにしても、足音どころか気配も殺して歩く人達ですね……何なの? 特殊な訓練でも受けているの? 侯爵閣下が結構神経質で、音を立てるとガミガミ言ってくるとか?

「わざわざ来てもらったのだから、このぐらいのもてなしはさせておくれ」
「ありがとう存じます。いただきます」

 わたくしは社交辞令を述べて微笑みを浮かべ、カップを手に取る。

 まあ、一応。マナーと、後は……この重苦しい雰囲気的に、口をつけるぐらいはね。しておかないとね。なんだか許してもらえなさそうな雰囲気がね。

 わたくしがソーサーにカップを戻すと、侯爵閣下は目を細められた。

「遠慮せず、おかわりだって用意しているのだからね。それともうちのお茶は、味が合わなかったかな?」

 わあい。もっと飲めって。ちゃんと飲めって。あああどうしよう、来たばかりだけどもう帰りたい。

 鈍いわたくしでもさすがにわかりますって。これ十中八九何か入ってますよ! 自白剤かな! 自白剤程度なら可愛いものかもしれないな! 割とド直球に毒飲んで死ねよって言われてるのかもですからね!!

 階段ダイブ前のわたくしであれば、けれど偉くて雰囲気を持っている人にこんな圧をかけられたら「はいわかりました」と言って即全部飲み干したことだろう。何なら用意されているケーキにも食らいついたはずだ。

 けれど今のわたくしは、殿下の付き人を務めて理不尽耐性も多少身についた女。そして殿下と「また会いましょう」の約束をしている以上、この屋敷からなんとか無事に帰る所までがミッションなのである。

 ごくっと喉を鳴らしてから、なんとか表情を取り繕う。

「絶品です、わたくしのような卑小の身にはもったいないほどの高級品で。ただ今日はわたくし、その……とても、緊張しておりまして。何かご無礼がありましたら、お許しくださいませ」

 良かった。いったんは黙ってくれた。しかし、気まずい沈黙が流れる。

 ……呼び出してきたのはあちらだけど、用事があるのはわたくしなのだし、こういう場合、やっぱりこちらから切り出すべきですよね。話題が話題なだけに、とても言いづらいですが……!

「あの。本日は、その……」
「レオナールはきみに婚約破棄を申し出たそうだね。きみはそれを受理したと」
「はい、その通りです」

 途中からあちらが引き取ってくださったので助かりました。しかして再び高まる緊張。
 いえ、わたくし、この屋敷の敷居をまたいでからずーっと心臓がバクバクなのですけどね。ああ胃が痛い。キリキリする。さっき「緊張で物入りません」って言い訳をしたわけだけど、ただの事実を言っていただけでもある。

「いいよ。きみもあの程度じゃ物足りないということだろう。むしろ悪かったね、何年もあれを許嫁《いいなずけ》にしたまま放っておいて」
「……へ?」
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