理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?

鳴田るな

文字の大きさ
76 / 95

しおりを挟む

 わたくしが拍子抜けして、変な声を出してしまったのも仕方ないと思う。

 だって、今日の流れ的に、ここは「なんで婚約破棄なんて言い出したんだ? 撤回しないの?」とかまず詰められる所のはずじゃない?

 侯爵閣下はわたくしの向かいで腕を組み、顎をのせてみせる。

「レオナールはもう二度ときみの前に姿を見せない。それならきみも、無理に我が家と婚約破棄をする必要はなくなるだろう?」
「……えっと。あの……申し訳ございません、わたくしにはお話の意味がわからなくて」
「どんなタイプの子が好みなのかな? 金髪碧眼の優男かい? いいよ。きみの好みの子を用意してあげる。それなら何の問題もないだろう?」
「待って……待ってください。あの、絶対に聞き間違いだと思うのですけど……まさか閣下、レオナール・・・・・とわたくしの婚約破棄は認めるけれど、デュジャルダン侯爵家との縁談は無効にならなくて……だからかわりに、別の相手を用意すると。そのようなことをおっしゃっているわけでは、ありませんよね?」
「その通りだけど? どうして驚くことがあるのかな」

 奇妙に若々しい男は、当然の顔で小首を傾げた。

 ――絶句する。
 カップとかお菓子とか、手にしていなくて良かった。たぶん落としていた。

「わ、わかりません……だって、レオナールは侯爵家の大事な跡取り息子でしょう?」
「跡取りはね。必要な時に必要なだけ、いるものだよ。あれはまあ、不出来だったが、忠実ではあったのだけどね」

 ――駄犬は所詮駄犬だね。恐ろしく若い男は、のんびりとそんなことも付け足した。

 わたくしは震える手をぎゅっと握りしめる。
 これはもう、ずっと無意識にも意識的にも避けていた問いを向けるしかない。

「閣下、お聞かせください。そもそも未来の侯爵夫人にわたくしがいいと言い出したのも、あなたであったと聞いています。わたくしは何一つ特筆するような才能のない、名ばかり男爵家の娘です。あなたが無理に侯爵家に迎えたがる理由など、何一つ――」
「きみ相手なら、このまま三文芝居を続けるのも悪くはないけど。その枕詞も、そろそろやめないかい?」

 侯爵閣下はすっと立ち上がり、あっという間に距離を詰める。
 わたくしは逃げる間もなく彼の腕と腕の間に閉じ込められた。ぞぞぞぞぞっ、と背筋に悪寒が走る。

 けれどわたくしが何か言ったり行動を始める前に、デュジャルダン侯爵はそっと小さく囁いてきた。

「私はずっと待っていたんだよ、マノン・・・

 ――その名前を出された瞬間。

 わたくしはもう、動くどころか何も考えられなくなってしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...