理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?

鳴田るな

文字の大きさ
77 / 95

30.稀代の悪女の物語 前

しおりを挟む
 マノン――それは王国では、伝説の悪女の名前として知られている。

 けして悪人でなかった。策謀を巡らせ、誰かを陥れたわけではない。彼女は常に、愛されて愛していただけだった。

 だがおかげで結構な人数の男性と、その関係者の女性を不幸にした事実は否めなかった。
 そしてついには、王国一とも呼ばれるスキャンダルを巻き起こし――報いを受けて断罪された。

 平民からあやうく王妃まで上り詰めかけたそのドラマティックな生涯は、一代成り上がり記、及び没落記として、庶民には非常に人気の題材であると聞く。
 一方で、王国の貴族階級では、マノンの名前はタブー中のタブーだ。何ならマから始まる名前を女児につけることすら、相当忌避されていたぐらいである。

 マノンはふわふわした桃色の髪に、魅惑的なまなざしだった。きらきらして吸い込まれそうな、非常に印象的な緑色の目を持っていたのである。

 元々は、田舎の村娘に過ぎなかった。だが幼女の頃から遺憾なく愛される才能を発揮した。その結果、十六の年には、男爵令嬢として社交界に出てくることになった。

 洗練された美男美女揃いの宮廷でも、マノンの愛らしさは飛び抜けて目立ったらしい。
 その緑色の目に見つめられたが最後、誰もが夢中になって愛をささやかずにいられない――そういう女性だったと聞く。

 だが、マノンには欠点として、物事を深く考えない性質があった。おまけに倫理観が欠如していた。

 天使のような見目の女は、自分を気持ち良くしてくれる存在であれば、誰でも本気で愛した。
 一応かろうじて年齢の下限制限はあったようだが、老若は十代から死にかけの老体まで、男女はどちらでもNGなし、身分? 気にしません。見た目? 多様性っていいわよね。配偶者? 恋にそんなもの必要でしょうか――まあそんな感じで、本当に徹底した来る者拒まず主義だったらしい。

 たとえそこに悪気や悪意なかろうと、痴情のもつれメイカーと言えよう。

 彼女を巡っての恋のさや当ては次第に過激さを増していき、ついには「結婚するために今の地位・身分を捨てる」と言い出す男まで出てきた。

 よろしくないことに、このうちの一人が王子殿下であらせられた。しかも次期王候補として、最も有力視されていたお方だった。
 そしてさらにまずいことに、彼は階級国家たる王国の頂点に立つ男のくせに、田舎の元平民女との婚姻に対して、かなり本気だった。王妃として迎えられぬならと、駆け落ち計画まで練るほどに。

 関係者はこの洒落にならない大恋愛を知ると、まあ当たり前だが激怒した。
 そしてさるやんごとなきお方が、一言おっしゃられた。

「いい加減あの淫乱ピンクに引導を渡す時期では?」

 ――こうして王国を揺るがせた悪女は、華やかな世界から追放されることになった。非常に評判の悪い貴族との、即時強制結婚という形で。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...