【声劇用】コメディ声劇脚本

憑 桜兎 -Yoru Sakuto-

文字の大きさ
1 / 1

倒された魔王は無職だから。

しおりを挟む

三人用。20分~25分。

――――――――――――――――――――


オウマ(♂):世界征服目前だった。世間知らず。あるのは威厳だけ。履歴書すら書けない。

ケケ(♀):魔界の職業案内所の受付嬢。日々、魔物や勇者を相手にしているため肝が据わっている。

ダンリ(♂):魔王を倒し無職にした張本人。バカ。こいつも無職。


――――――――――――――――――――


(SE:カラスの鳴き声)
(SE:乾いた地の情景)


オウマ
「……ここだな。だぶん。この儂が…こんな……。少し前まで闇の軍勢を率いていたはずの、この儂が。まさかこんなところに、足を踏み入れなければならないとは。くっ…これも再起の為!」

(SE:PC・ガヤ・足音等)


(SE:呼び出し音)

ケケ(マイク越しの声)
「受付番号427番でお待ちの方~。受付番号427番でお待ちの…暗…黒神…あー。オウマ様。4番窓口へお越しくださ~い。」

オウマ
「ふむ。儂を呼んだか?下等な人間が…死にたいのか?」

ケケ
「あー、はい。えーと、担当のケケです。仕事柄死にたいのは山々ですねぇ。有給残ってるので死ねませんけど。で、オウマさんですねぇ…今日はの件で宜しいですか?」

オウマ
「再就職の支援…だと?何をバカな。儂は再び世界を支配するためのを頂きに来たのだ。」

ケケ
「はいはい。ですねぇ。かしこまりました。」

(SE:PCタイピング)


ケケ
「はい、では…履歴書拝見しますね。………んー…と?【性別:超越者】ってなんですか?あと、住所書いてくださいね。」

オウマ
「書いてあるではないか。」

ケケ
「え…これ住所って言わないですけど。」

オウマ
「いや、儂の居場所は【奈落の底、最深地獄にある玉座】で間違いない。」

ケケ
「あー、そうですね。そうでしたね。ただ…先週、勇者一行によって更地になりましたよね?ここ数日で、キャンプ場になってるみたいですよ~。」

オウマ
「あ、いや、あぁ。そう……だ。」

ケケ
「あと、この職歴の欄もなんですか?【数千年の間、あらゆる種族を恐怖のどん底に陥れていた】って…。これで再就職はイベント関係くらいしか見つからないですよ?」

オウマ
「何を言う。儂は数万の軍勢を動かしていたのだぞ。」

ケケ
「あー…マネジメント経験ありなんですかね?どんな感じで管理してましたか?」

オウマ
「逆らう者は消滅させた。恐怖こそが統治である。」

ケケ
「パワハラじゃないですか。完全アウトですね。今の時代、即SNSで炎上からのイメージ失墜。どこも雇いませんよ。もっと部下を労わったり…なんかしてなかったんですか?」

オウマ
「……部下を労わるとはなんだ?」

ケケ
「(溜息)…。先が思いやられますね。次は…資格についてですが…。【破壊魔法・デリート】。えーと、ExcelエクセルとかWordワードは使えますか?」

オウマ
「エ…ク…セル…。強力な魔法か?」

ケケ
「まぁ、ある意味強力ですけどね。魔法では無いですけどね。これ使えないと…再就職は厳しいですよ。」

(SE:タイピング音)


ケケ
「では、魔法スキルを確認させてください。あ、危害は無いように抑えてくださいね。」

オウマ
「ほう、良かろう!儂の力、見せてくれよう!…【深淵より来たり絶望の楔…メテオ・レイン】!」

(SE:複数の小さな石が転がる音)

オウマ
「…なぜだ。儂の魔力が…枯渇、だと?どういうことだ!?」

ケケ
「あ、言い忘れてましたね。魔法封じの結界張られてるんです。そもそもここでメテオとか困ります。話聞いてました?」

オウマ
「貴様…儂をもてあそんでいるのか!?」

ケケ
「至って真面目です。その指先から出てる小さな火、丁度いいですよ。喫煙所の着火係とか…すぐ採用されると思います。」

オウマ
「わ、儂の偉大なる魔力をタバコに使えだと!?そんなちっぽけでは無いぞ!」

ケケ
「そうですか。残念です。」

(SE:書類をめくる音)


(SE:勢いよく扉が開く音)
(SE:足音)

ダンリ
「おはよぉ~うございまぁ~す♪ケケさ~ん!いい仕事ありましたぁ?」

オウマ
「っ!?このバカそうな声は…」

ダンリ
「うわ!」

オウマ
「やはり…勇者ダンリ……。」

ダンリ
「えぇ…魔王がこんなところで何してんだよ~。って、俺が更地にしたから魔王でも無いのか。ごめんな♪城のローン残ってたんだろ?」

オウマ
「黙れ黙れ黙れぇぇええぇ!どの面下げて儂の前に現れた!」

ケケ
「うるさ……」

ダンリ
「いやぁ、俺もさ?魔王倒しちゃったから、仕事なくなっちゃって。英雄とは言われるけど…平和だと剣を振り回す俺って、ただの危険人物なんだよ。だから、今はコンビニのアルバイトで食いつないでるんだよ。」

ケケ
「ダンリさんは接客態度が素晴らしですから、どこでも重宝されますよ?オウマさんとは正反対ですねぇ。」

ダンリ
「ありがたいんだけどねぇ…。なんて言うかなぁ、こう…命のやり取り?みたいな?そう言う熱いバトルみたいなやつが、物足りないんだよねぇ。……あ、オウマ、今お前も無職だろ!?俺と起業しようぜ!」

オウマ
「キギョウ…?なんだそれは。」

ダンリ
「あー、うん。俺とさ、【レンタル討伐代行とうばつだいこうサービス】始めようぜ!」

オウマ
「レンタル…討伐?代行?」

ダンリ
「そうそう!俺がお前を…魔王を追い詰めるふりしてさ、観光客を盛り上げるショーをやるんだよ。取り敢えずお前が【グハハハハハ、この村を滅ぼしてやるぅ!】とか言って、俺が【やめるんだ!】って現れる。良い案だろ!」

オウマ
「ほう。我の威厳を保ちつつ、報酬を得られると言う事だな?」

ケケ
「その通りです。うんうん、それいいですね。そうすればオウマさん、職歴にって書けます。自治体に申請すれば補助金も出ますし。」

(SE:資料をめくる音)
(SE:タイピング音)


ケケ
「では…方針が決まったので、こちらの契約書にサインをお願いします。えーと……ここです。」

オウマ
「……。む?【暴力禁止】…【不適切な発言禁止】、【残業代は無しとする】…?勇者ダンリ、これは…儂に得があるのか?」

ダンリ
「まぁまぁ、良いから良いから。チャチャッとサインしてくれよ♪終わったらラーメン奢るから、食いに行こうぜ!」

オウマ
「ラーメン…か……。ふむ、こってり…か?」

ダンリ
「当たり前だろ♪背油マシマシでな!」

オウマ
「おぉ!…(咳払い)。致し方ない。うむ、これも胃袋を満たし、力を蓄えるため…。」

(SE:印を押す)


ケケ
「はい、確認しますねぇ。…大丈夫ですね、ありがとうございます。これで契約成立です。では明日から駅前の広場で【魔王降臨ショー】を開催してください。それと、衣装は自前でお願いします。クリーニング代は経費で落ちませんので、自腹でお願いしますね。」

オウマ
「なに!?自腹で、自ら洗えと言うのか!?……なんたる屈辱くつじょくだ。儂の時代よ…戻って来てくれ…。」

(SE:ゴソゴソと布擦れ)


ダンリ
「よし、先ずは証明写真だな。はい、ポーズ!」

(SE:シャッター音)
(SE:フラッシュ)

オウマ
「うわ!貴様…何をする!」

ケケ
「(溜息)…手続きは終わりましたので、ご退場願います。」

ダンリ
「はいは~い♪ありがとねぇ~ケケさん♪」

オウマ
「あ、ちょ…おい…!」

(SE:二人の足音)


ケケ
「…。受付番号428番でお待ちの方~。受付番号428番でお待ちの……あー。ケロべロス様。4番窓口へお越しくださ~い。」

(SE:唸り声)

ケケ
「えーと…頭それぞれで、別々の職業をご希望ですね。…まぁ、無理ですね。頭は別々でも…体は一つですからね…難しいなぁ…。」



END
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...