Terminal~予習組の異世界召喚

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ep0.プロローグ

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某年10月。 

 都内にある男女共学の高等学校。2年の教室。
 その教室では、生徒達が教室で集まっていた。

教室では、不良とカーストされる半数と優等生とされる半数が、距離をおいて陣取っていた。仲良くは出来ないが関わる事もないと冷めたクラスであった。
不良達は、朝から大きな声で談笑。優等生は、受験に向けての勉強に取り組んでいた。一応はバランスの取れているクラスであるが例外も存在した。

「おは……よ」
「……」

教室のドアを二人の男女が開けて入ってきた。一人は、学生服の上から緑のフード付きコートを着た身長185センチはあろうかと言う長身の男子。金髪に、瞳の色も青という外国人の血が流れる爽やか系な白人。 彼は教室の入り口の枠を窮屈そうに潜り挨拶する。もう片方は、一応は女生徒の制服ではあるが上からパーカーを羽織る身長150前後の少女。流れるような黒髪は、腰まで伸び顔も10人が10人とも認める美少女である。さらに制服の上からでも分かる豊満な胸と括れた腰や長い手足など下手なモデルよりスタイルがよかった。しかし、教室に入るなり無愛想な表情で席に荷物を置く彼女。

 まさに対極の存在が同時に襲来した。男は教室の廊下側の一番前の席に座り眠そうな目を擦っていた。彼が使えば学校規定の机や椅子が小さく見える。少女は、教卓の前の席に荷物を置くとスタスタと男の方へ歩みより彼の膝の上に腰掛けた。

「ん? どうした?」
「どうしたじゃない。課題を手伝えと言ったのはお前だ。オレの指導を受けられるんだから有りがたく思え」

 ちなみに言うと急に膝に座った少女を疑問に思ったのが最初に話した男。上から目線で一人称が『オレ』なのが少女である。膝の上で勝手にノートを開きだした少女は男のネクタイを引き勉強を始める。

「うわー、相変わらず変わり者カップルだな」
「確か1ヶ月ぶりだよね学校来るの」
「確か桜井って暴走族と喧嘩して停学になったんだっけ?」
「影虎君が~停学で来ないのは分かるけど~。それで如月まで休むのってありなわけ?」
「暴走族とやりあうとか、漫画かっての」
「でもでも、あの二人頭が良いから停学なんて痛くないんしょ」
「真面目に来てても勉強すら勝てないんだもんね~。聞いてるガリ勉君ガリ勉ちゃん達?」

不良グループが二人の事を話し、ソレによって馬鹿にされた優等生組が二人の男女、桜井影虎と如月椿を睨む。桜井影虎は、校内外でも有名な不良で喧嘩騒動は一年中起こす問題児。だが、問題が多い割には、学業は優秀、普段は温厚なので教師も手を焼いている。
 如月椿は、全国模試でもトップ10に入る上に運動神経も抜群で優等生。けれど人付き合いが苦手で確執が多く、自ら敵を増やしてしまう性格で更に変わった癖も多く何度もトラブルを起こす少し変人。
 クラスの中でも一層目立つ二人は、学校中が認めざるを得ないカップルでもある。

 二人は飛行機事故で家族を亡くし同じ孤児院で育った。昔から片時も離れず過ごした男女が交際関係に流れた例である。椿は影虎にしか心を開かず、影虎は椿の後処理のために喧嘩や暴力沙汰を起こすため二人合わせて要注意人物として認識されていた。

 そんな空気も何処吹く風か、二人の世界に入っている彼らを止めるものは居ない。別に止めても影虎が怒るわけではないが、一度調子に乗った一人が椿に手を出し泣かせたことで影虎の一撃で窓から転落した事があった。婦女暴行を行った生徒を影虎が止めた形なので問題にならなかったがクラスメイトは彼らを遠巻きにした。

「なぁなぁこの証明問題間違えてないか?」
「そんな馬鹿なはず……ちょっと待ってろ」

影虎が椿の解説を否定したことで、彼女は自分の席にある教科書を取りに向かった。その時、教室の回りが闇に染まり、教室全体が大きく揺れ始めた。

混乱する不良達と冷静に机の下に潜る優等生達。震度は4程度でしばらくすれば収まると思っていた。

「離れるな椿」
「う、うん」

 そんな中、呆然としている椿を影虎が呼んだ。彼の声で意識が回復した椿は、走って彼に抱きつく。それを影虎は受け止め、彼女の後頭部を抑え、彼女の小さな体を守るように抱き締める。

 そんな時、突然教室の床が消滅する。一瞬で黒い闇となった床の上に居た全員が落下する。何故か机や椅子だけは、落下せず生徒達の体が落ちていく。深い闇の底へと。

最初に落ちた数名以外が机や椅子に捕まる。だが、それを許さないように闇のそこから黒い触手が伸びてきて生徒達を強制的に引きずりこむ。

「なんだよこれはうぁあああ」
「いや、いや、だれかたす」
「此は夢だ此は夢だぁああああああ」

瞬く間に落下していくクラスメイト達。残ったのは椅子に腰かけていた影虎と椿だけだった。だが彼らにも黒い触手が襲いかかる。

「椿怖いか?」

彼が少女に質問した時、黒い触手が少女を狙って飛来する。それを影虎は素手で受け止め腕力のみで防ぐ。グイグイ下に引っ張られるのを耐えながら胸に抱いた護るべき対象に微笑みかける。

「いいや。オレは大丈夫。いつか必ず来ると思っていたし待っていたんだから」
「そうだな。まさか、本当に来るなんてな。数奇な運命だよ本当」

二人が話している間も黒い触手が数を増やして襲い掛かるが、目の前の机の足を片手で掴んだ影虎がソレを振り回すことで触手が消えていく。そうすると周囲の黒い空間と真下の闇が薄くなっていく。

「行かないって手もあるぜ? この下がどんな場所か、何がいるかもわかんねぇんだ」
「少なくとも、この状況で冷静なお前みたいな化物が居れば安心だ。行くぞ」
「わかったよ。掴まってろよ」

椿の意思を聞き出し、何か理由ありげな二人は黒い触手の手を借りず自分から闇に飛び込んだ。二人の顔には、笑みと希望、そして決意が宿っていた。
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