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第五十一話
腐男子、助け出す
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結局、キールの膝の上に座ったり、王子の膝の上に座ったりしているうちに王都へと無事着いた。
馬車の揺れや振動での疲れはあまり無いけど、二人に散々うなじや首筋を舐められ、更に胸や尻を触られて中途半端にムラムラしてしまった……そっちの方で疲れてしまった。
それにしても、御者の男が急いでくれたお陰でいつもより早めに着く事ができた。
馬車から降りて男にお礼を言い、王子を先頭に騎士団本部の正面玄関から堂々と中へ入り、その辺にいた団員の人にディルトさんを呼んできてもらった。
「シリウス様……探しましたよ! 今まで何処に……!
それにヤマト君達、何故シリウス様と一緒に……?」
慌てた様子で息を切らしながら走ってきたディルトさんは、俺達三人を見て不思議そうに聞いてきた。
「あぁ、その話はまた後でする。心配かけてすまなかった。
それより、副長のロタは騎士団本部に帰って来ているか?」
王子が尋ねると、ディルトさんは眉をひそめた。
「いえ、昨日からここには帰って来ていないようです。
毎日朝礼には顔を出していたのに、昨日も今朝も姿を見せませんでした……ロタが何か……?」
シリウスは俺の顔を見て目配せをした。
ロタはやっぱり二週間の見張りの帰りに襲撃され、捕らえられているのか?
ディルトさんに詳しい話は後でしますと伝えて別れ、王子の案内で騎士団本部から城の内部へ侵入した。
華やかな赤絨毯の廊下に面した、ある一室に入る。その部屋の本棚の奥に石畳の隠し通路があり、その先に下へと続く階段があった。
人一人通るのがやっとな位の狭い階段を三人で並んで下って行くと、薄暗くヒンヤリと湿った空気の部屋に出た。
天井から床下までが低く、胸位の高さの小さな鉄製のドアが等間隔で並んでいる。
天井が低いので圧迫感があり、ゴゥンゴゥンと、換気扇の回転する音が静まり返った室内に響いている。ここが地下牢獄か。
「……はっ、これは殿下!! この様な場所に一体何用でしょうか?」
牢獄の入り口近くの椅子に座っていた鉄の鎧を身に付けた見張りの男が、こちらに気付き慌てて立ち上がった。
「人を探している。第二騎士団副長のロタはここにいるか? いるのなら連れて帰りたい。こちらの手違いで、間違えて捕らえてしまった様だ」
王子が見張りの男に近寄り、牢獄の扉の方を見つめた。
「ハ、ハイ、ロタ副長ならこちらに……」
見張りの男はツカツカと奥方向へ歩き出し、並んでいるドアのうちの一つの前で立ち止まり、腰につけていた鍵で解除し、重たそうなドアを開けた。
中を見ると、畳二畳位の小さな部屋で、顔の口端に血と殴られたような跡があるロタが、壁にもたれて座っていた。
「ロタ!!」
俺は思わず叫び、部屋の中のロタに駆け寄った。
「えっ、ヤマト君……!? な、何でこんな所に」
「良かった……ロタ無事で良かった……!」
俺は嬉しさのあまりロタに抱きつき、目から涙がこぼれ落ちたのを隠すように、ロタの胸板へ自分の顔を埋めた。
* * * * *
その後、ロタを連れて上の階の廊下へ出た所で、王子はお目付役らしき執事の格好をした人に酷く怒られながら、ディルトさんと沢山の使用人達に揉みくちゃ状態にされて連れて行かれた。
後ろを振り返り、何か言いたげな表情をしていた王子に手を振って見送った後、ロタが俺の方にポンと手を置いて呟いた。
「ヤマト君、ありがとう……
俺情け無いなぁ、ヤマト君を守るハズが、逆に助けて貰っちゃって」
力なく笑ったロタの口元の痣と血の跡が痛々しくて、胸がズキッとした。
「いや、俺は何も……シリウスのお陰だよ。
それより、口の……痛そうだな」
ロタの口端を指でそっと触ると、その手をロタが握ってきた。
「んー、これ位大丈夫だよ。
昨日の朝、本屋を出発してからまさか待ち伏せされて襲われるとは思ってなくて、油断してた。
二人倒してやったけど、三人に羽交い締めにされてさぁ。
目隠しと猿轡と手首を縛られて、気がついたらここに閉じ込められてたよ。
でも何でヤマト君じゃなくて俺なんだろうね」
「あぁ、実はね……」
俺は王子から聞いた事も踏まえて順を追ってロタに説明した。
「何だ~、シリウス様と話してたの、諜報機関の奴等だったんだぁ……
ヤマト君の身辺調査とついでに護衛か……俺、余計な事しちゃったな」
ロタは両手の指を首の後ろで組み、アハハ、と口を開けて笑った。
「いや、そんな事ないよ。
ロタは俺の身を案じて手紙で教えてくれたり、二週間も夜の見張りをしてくれたんだから、俺は凄く感謝してるよ」
「ヤマト君……」
ロタは俺の腰に手を回し、顔をゆっくりと近付けてきて……
「ハイ、そこまで。
副長さんも無事だったし、ヤマト、もう帰ろう」
キールが俺の手首を持ち、ロタから離した。
危なかった、あのままだと流されてキスするところだった。
「じゃ、じゃあロタ、俺達帰るから……」
「うん、また本屋に会いに行くね。気をつけて帰って」
ロタに手を振り、俺とキールは騎士団本部を後にした。
キールにはぐれないようにと手を繋がされ、しばらく通りを二人で歩いた。
ロタも無事だったし、王子も城へと戻った。ホッと安心していると、急にお腹が空いてきた。
「お腹空いた……」
「そういえば、もうお昼だね。
どこかで食べて帰ろうか」
俺とキールは雰囲気が良さそうな定食屋に入り、昼食を済ませた。
二人共日替わりランチを注文して、俺はメインが魚のフライのもの、キールはメインが肉野菜炒めのものを食べた。
安くて量も結構あって、お腹がパンパンに膨れた。
「ふー、美味しかったねー、でもお腹苦しい……食べ過ぎちゃった……」
お腹をさすりながら歩いてると、キールも俺のお腹をさすってきた。
「ホントだね、凄い張ってるね。ちょっと休憩して行く?」
「あー、そうだなぁ、少し休憩したいかも」
俺がそう返事をすると、キールは俺の手を握って歩き出した。
道端に良さそうなベンチがあったけど、なぜかスルーして何処かへ向かっている。
「キール、俺あそこのベンチで良かったんだけど……」
「あのベンチよりゆっくり休める良いところがあるから、そこ行こう」
そういえば、キールはノインさんと王都へ何回か来た事があって、俺より詳しいんだっけ。
俺は大人しく手を引かれるまま、キールについて行った。
キールは大通りをどんどん進んでいき、途中狭い路地へと入り、着いたよ、と言いながら看板も何も出ていない建物の中へと入った。
(ん? ここは……何のお店だ?)
俺が疑問に思っているのをよそに、キールは入り口を入ってすぐのカウンターで何やら話をして鍵を受け取り、俺の手を引っ張って鍵に書いてある番号と同じ部屋へ……って、アレ……ここってもしかして……
部屋に入ると、ドアの鍵が自動で閉まった。
鍵が閉まったのにギョッとし、更に部屋の中を見ると……中央に大きなベッドが一つに、枕が二つ……薄暗い照明、そして奥にガラス張りの浴室…………
間違いない、ここってラブホなんじゃ…………
ラブホ来た事ないけど、漫画では見た事があるからどういう室内かは知ってた。
異世界にもラブホってあるんだな…………って今はそれどころじゃない。
「ハァ……ヤマト、やっと二人きりになれたね……」
キールがドアの前で呆然としている俺を抱きしめ、耳を舐めながら囁いてきた。
「ぅあっ……! キール……あ、あの……」
「……行きの馬車でヤマトを抱っこしてる時からずっと挿れたかった……
ねぇ、ヤマト、いいでしょ……?」
キールは俺の頬から首筋にキスをしながら、俺のブラウスのボタンを外しだした。
(あぁぁ、俺休憩したいって言ったけど、コッチの休憩じゃない……!!)
俺は時間停止能力を使って逃げるか、このままキールに身を委ねるかを心の中で激しく葛藤した。
馬車の揺れや振動での疲れはあまり無いけど、二人に散々うなじや首筋を舐められ、更に胸や尻を触られて中途半端にムラムラしてしまった……そっちの方で疲れてしまった。
それにしても、御者の男が急いでくれたお陰でいつもより早めに着く事ができた。
馬車から降りて男にお礼を言い、王子を先頭に騎士団本部の正面玄関から堂々と中へ入り、その辺にいた団員の人にディルトさんを呼んできてもらった。
「シリウス様……探しましたよ! 今まで何処に……!
それにヤマト君達、何故シリウス様と一緒に……?」
慌てた様子で息を切らしながら走ってきたディルトさんは、俺達三人を見て不思議そうに聞いてきた。
「あぁ、その話はまた後でする。心配かけてすまなかった。
それより、副長のロタは騎士団本部に帰って来ているか?」
王子が尋ねると、ディルトさんは眉をひそめた。
「いえ、昨日からここには帰って来ていないようです。
毎日朝礼には顔を出していたのに、昨日も今朝も姿を見せませんでした……ロタが何か……?」
シリウスは俺の顔を見て目配せをした。
ロタはやっぱり二週間の見張りの帰りに襲撃され、捕らえられているのか?
ディルトさんに詳しい話は後でしますと伝えて別れ、王子の案内で騎士団本部から城の内部へ侵入した。
華やかな赤絨毯の廊下に面した、ある一室に入る。その部屋の本棚の奥に石畳の隠し通路があり、その先に下へと続く階段があった。
人一人通るのがやっとな位の狭い階段を三人で並んで下って行くと、薄暗くヒンヤリと湿った空気の部屋に出た。
天井から床下までが低く、胸位の高さの小さな鉄製のドアが等間隔で並んでいる。
天井が低いので圧迫感があり、ゴゥンゴゥンと、換気扇の回転する音が静まり返った室内に響いている。ここが地下牢獄か。
「……はっ、これは殿下!! この様な場所に一体何用でしょうか?」
牢獄の入り口近くの椅子に座っていた鉄の鎧を身に付けた見張りの男が、こちらに気付き慌てて立ち上がった。
「人を探している。第二騎士団副長のロタはここにいるか? いるのなら連れて帰りたい。こちらの手違いで、間違えて捕らえてしまった様だ」
王子が見張りの男に近寄り、牢獄の扉の方を見つめた。
「ハ、ハイ、ロタ副長ならこちらに……」
見張りの男はツカツカと奥方向へ歩き出し、並んでいるドアのうちの一つの前で立ち止まり、腰につけていた鍵で解除し、重たそうなドアを開けた。
中を見ると、畳二畳位の小さな部屋で、顔の口端に血と殴られたような跡があるロタが、壁にもたれて座っていた。
「ロタ!!」
俺は思わず叫び、部屋の中のロタに駆け寄った。
「えっ、ヤマト君……!? な、何でこんな所に」
「良かった……ロタ無事で良かった……!」
俺は嬉しさのあまりロタに抱きつき、目から涙がこぼれ落ちたのを隠すように、ロタの胸板へ自分の顔を埋めた。
* * * * *
その後、ロタを連れて上の階の廊下へ出た所で、王子はお目付役らしき執事の格好をした人に酷く怒られながら、ディルトさんと沢山の使用人達に揉みくちゃ状態にされて連れて行かれた。
後ろを振り返り、何か言いたげな表情をしていた王子に手を振って見送った後、ロタが俺の方にポンと手を置いて呟いた。
「ヤマト君、ありがとう……
俺情け無いなぁ、ヤマト君を守るハズが、逆に助けて貰っちゃって」
力なく笑ったロタの口元の痣と血の跡が痛々しくて、胸がズキッとした。
「いや、俺は何も……シリウスのお陰だよ。
それより、口の……痛そうだな」
ロタの口端を指でそっと触ると、その手をロタが握ってきた。
「んー、これ位大丈夫だよ。
昨日の朝、本屋を出発してからまさか待ち伏せされて襲われるとは思ってなくて、油断してた。
二人倒してやったけど、三人に羽交い締めにされてさぁ。
目隠しと猿轡と手首を縛られて、気がついたらここに閉じ込められてたよ。
でも何でヤマト君じゃなくて俺なんだろうね」
「あぁ、実はね……」
俺は王子から聞いた事も踏まえて順を追ってロタに説明した。
「何だ~、シリウス様と話してたの、諜報機関の奴等だったんだぁ……
ヤマト君の身辺調査とついでに護衛か……俺、余計な事しちゃったな」
ロタは両手の指を首の後ろで組み、アハハ、と口を開けて笑った。
「いや、そんな事ないよ。
ロタは俺の身を案じて手紙で教えてくれたり、二週間も夜の見張りをしてくれたんだから、俺は凄く感謝してるよ」
「ヤマト君……」
ロタは俺の腰に手を回し、顔をゆっくりと近付けてきて……
「ハイ、そこまで。
副長さんも無事だったし、ヤマト、もう帰ろう」
キールが俺の手首を持ち、ロタから離した。
危なかった、あのままだと流されてキスするところだった。
「じゃ、じゃあロタ、俺達帰るから……」
「うん、また本屋に会いに行くね。気をつけて帰って」
ロタに手を振り、俺とキールは騎士団本部を後にした。
キールにはぐれないようにと手を繋がされ、しばらく通りを二人で歩いた。
ロタも無事だったし、王子も城へと戻った。ホッと安心していると、急にお腹が空いてきた。
「お腹空いた……」
「そういえば、もうお昼だね。
どこかで食べて帰ろうか」
俺とキールは雰囲気が良さそうな定食屋に入り、昼食を済ませた。
二人共日替わりランチを注文して、俺はメインが魚のフライのもの、キールはメインが肉野菜炒めのものを食べた。
安くて量も結構あって、お腹がパンパンに膨れた。
「ふー、美味しかったねー、でもお腹苦しい……食べ過ぎちゃった……」
お腹をさすりながら歩いてると、キールも俺のお腹をさすってきた。
「ホントだね、凄い張ってるね。ちょっと休憩して行く?」
「あー、そうだなぁ、少し休憩したいかも」
俺がそう返事をすると、キールは俺の手を握って歩き出した。
道端に良さそうなベンチがあったけど、なぜかスルーして何処かへ向かっている。
「キール、俺あそこのベンチで良かったんだけど……」
「あのベンチよりゆっくり休める良いところがあるから、そこ行こう」
そういえば、キールはノインさんと王都へ何回か来た事があって、俺より詳しいんだっけ。
俺は大人しく手を引かれるまま、キールについて行った。
キールは大通りをどんどん進んでいき、途中狭い路地へと入り、着いたよ、と言いながら看板も何も出ていない建物の中へと入った。
(ん? ここは……何のお店だ?)
俺が疑問に思っているのをよそに、キールは入り口を入ってすぐのカウンターで何やら話をして鍵を受け取り、俺の手を引っ張って鍵に書いてある番号と同じ部屋へ……って、アレ……ここってもしかして……
部屋に入ると、ドアの鍵が自動で閉まった。
鍵が閉まったのにギョッとし、更に部屋の中を見ると……中央に大きなベッドが一つに、枕が二つ……薄暗い照明、そして奥にガラス張りの浴室…………
間違いない、ここってラブホなんじゃ…………
ラブホ来た事ないけど、漫画では見た事があるからどういう室内かは知ってた。
異世界にもラブホってあるんだな…………って今はそれどころじゃない。
「ハァ……ヤマト、やっと二人きりになれたね……」
キールがドアの前で呆然としている俺を抱きしめ、耳を舐めながら囁いてきた。
「ぅあっ……! キール……あ、あの……」
「……行きの馬車でヤマトを抱っこしてる時からずっと挿れたかった……
ねぇ、ヤマト、いいでしょ……?」
キールは俺の頬から首筋にキスをしながら、俺のブラウスのボタンを外しだした。
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