腐男子が男しかいない異世界へ行ったら色々と大変でした

沼木ヒロ

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第五十四話

腐男子、やらかす

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(やっと離れた……)

 キールに引きずられ、エバン君が俺の下半身からズルズルと離れていった。
 乱れたエプロンと少しずらされた下着とパンツを直していると、エバン君は、正気に戻ったのかハッとした表情をして地面に両手を付き、土下座をしだした。

「ぼ……僕、なんて事……! ごめんなさいごめんなさい!!」
「あぁぁ、エバン君やめて、頭上げてって!」

 思わずエバン君の方へ駆け寄り、両肩に手を置いて上体を起こした。

「ごめんなさい……お取引先の方になんて事……
 今発情期で……今朝遅刻しそうになってつい、抑制薬飲むの忘れて……
 今までは飲み忘れても大丈夫だったんですけど、ヤマトさんの匂いがあまりにも……その、今まで嗅いだ事の無い興奮する匂いで……
 これからは気を付けます、だから契約解除だけは……」

 エバン君が震えながら、再び土下座をした。
 頭の上にある大きな猫耳が、後ろ向きに寝ている。
 小さい頃猫を飼ってたから知ってるけど、確かこの耳の動きは怒ってるか恐怖心を抱いている時の動きだ。

「あの、大丈夫です、契約解除も何も、気にしてませんから。だから立って下さい」

 俺はそう言いながらエバン君の手を握り、引っ張り起こした。

「……ありがとうございます、ヤマトさん…………僕なんかに気遣ってくれるなんて、お優しいんですね」

 エバン君がやっとニコッと笑ってくれた。
 さっきまで後ろ向きに寝ていた猫耳も元に戻ってピクピク動いている。
 うわー、猫耳萌える。それに発情期とか、本当に猫みたい。
 
 俺はエバン君の事が知りたくなって、久しぶりに鑑定能力を使ってみることにした。


【名前 エバン】
【年齢 17歳】
【身長 168センチ】
【体重 58キロ】
【種別 猫人族びょうじんぞく
【職業・役職 本取次店店員】
【趣味 読書・買い物】
【好きなタイプ 明るく優しくて思いやりがある人】
【性行為時立場 攻め・受け(リバ)】
【好きな体位 騎乗位・後背位・立ち後背位】
【局部の長さ 17センチ】
【初体験年齢 15歳(かかりつけ医による検査という名の行為)】
【性的嗜好 体臭愛好症 オスフレジオラグニア嗜尿症 ウロラグニア


 エバン君、俺の一つ年上だったんだ。
 それにしても、この世界の人は揃いも揃って皆アソコがデカイな……
 俺、日本人の平均サイズなのに、異世界ここでは小さく感じてしまうよ。自信を無くしそうだ。

 そして初体験の相手、これは良いのだろうか。かかりつけ医って事は病院の先生なんでしょ? 先生×患者とか、二次元の世界なら萌えてしまう所だけど、実際に遭遇したら事件も事件、アウトだよなぁ。この世界ではセーフなんだろうか。
 性的嗜好の所も体臭愛好症は今さっきので分かったけど、二つ目の……尿って字が気になるんだけど……

 エバン君の見てはいけないものを見てしまって色々考えていると、エバン君が俺の手を握り返し見つめてきた。

「ヤマトさん、許して頂いてこんな事を言うのもなんですけど、先程好きと告白したのは本当の気持ちです……こんな気持ちになったのは生まれて初めてなんです。
 だからその、僕何番目でも何十番目でも構いません、ヤマトさんのつがいの中の一人にして貰えませんか?」

 檸檬レモンの様な綺麗な黄色の瞳をウルウル潤ませ、すがるような表情で俺を見ている。

 つがいも何も、昨日キールと恋人になったばかりだし、更に恋人を増やすのはまだ早い……というか全然考えてなかったんだけど……

 でも、エバン君のこの猫耳が凄く可愛くて萌えるんだよなぁ。
 今すぐ恋人は無理でも、友達からだったら別に良いかな。
 そんな事を考えながら、エバン君の頭の上でピクピク動いている猫耳がふと気になり、何となく触った。
 うわーっ、モッフモフだ……柔らかくて手触り最高っ……!
 手の平で撫でたり、指で包みながら揉んだりしていると

「っはぁっ……ヤ、ヤマトさん……嬉しい……!」
「ヤマト……そんなぁ……!」

 何となく猫耳を触ったつもりが、エバン君は顔を赤らめて息を荒げだし、キールは悲しそうな声を上げ、頭を抱えて青ざめている。

「えっ、俺何かマズイ事した……?」

 俺は何がなんだか分からず、エバン君の耳に手を置いたまま、キールとエバン君の顔を交互に見た。
 キールはショックそうな顔をして衝撃的な事を口にした。

「……猫人族の耳、性感帯なのは知ってるよね……?
 つがいの話をしている時に耳を触る行為は、一生を添い遂げるつがいになる事を了承した、オッケーしたって意味だよ……猫人族的に、だけど」

「っえぇぇぇぇ!? 知らない! 俺そんなの知らない!!」

 急いでエバン君の耳から手を離したが、時すでに遅かった。エバン君は

「ふ……不束者ですがよろしくお願いします……僕凄く嬉しいです……!」

 などと言いながら俺の体をギュッと抱きしめてきた。

 え、待って、キールが恋人になった翌日にエバン君とも恋人に……展開早すぎない!? 俺別にエバン君とは友達からで良かったのに! まさかの恋人二人目とか、なんで俺、エバン君の耳触っちゃったんだよバカヤロー!

 キールに同棲の話もまだ切り出していないうちに二人目の恋人ができてしまい、俺は頭がいっぱいいっぱいになり、呆然としたままエバン君に抱かれ続けたのだった。
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