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第五十六話
腐男子、約束をする
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「それじゃあヤマトさん、僕そろそろ仕事があるので帰りますね! また明日!」
エバン君は超がつく位のとびきりの笑顔で手を振り、馬車に乗りこんで帰って行った。
あーー、なんで俺エバン君の耳触っちゃったんだろう……
一生を添い遂げる番になる事をオッケーしちゃった、って事は俺、エバン君の嫁に……
後悔しながらエバン君の馬車を見続けていると、横にキールがやって来て手を握ってきた。
「……いずれこうなるとは思ってたけど……もう少しヤマトを俺一人で独占したかったな……」
キールはそう言って少し寂しそうな顔をした。
「……何かゴメン、俺よく分からずにエバン君の耳触っちゃって。まさかそんな意味があるとは思わなくて」
俺はキールの手を握り返してそう呟くと「ヤマトは謝らなくて大丈夫だよ」と言いながらおでこにキスをして、エバン君が持ってきた段ボールを抱えて店へと歩いて行った。
キールに同棲の事を話しそびれちゃったけど、よく考えたらエバン君とも恋人になっちゃったから、俺がキールの家に同棲するのは駄目な気がするなぁ……
ノインさんに話して、もう少し本屋で住み込みで働かせて下さいってお願いしよう。
俺は地面に落ちた箒とちりとりを拾い、今後の事をモヤモヤ考えながら掃除の続きをした。
* * * * *
キールとエバン君、二人の恋人になって数日が経過した。
エバン君とはプラトニックなお付き合いが続いていた。
また前みたいに、股間に顔を埋められて匂いを嗅がれたりするんだろうかと思っていたけど、そういった素ぶりは一切見せなかった。
それどころか、手作りの昼飯を差し入れしてくれたり、手紙を貰ったり、仕事が終わるのをお店の外でわざわざ待っていてくれているので少し話したり。
お互い仕事をしているので長い時間会えていないけど、体だけの関係じゃない所に俺は癒されていた。
キールはというと、エバン君とは正反対にスキンシップが激しくなった。
さすがにノインさんや他のお客さんの前では何もしてこないけど、俺が倉庫部屋へ行った時、昼休憩の時、勤務を終え二階の自室に着替えに行った時等にちょこちょこ姿を見せてはキスを求められ、体を触られた。
俺にキスしたり、触れる事で安心するとかなんとか言ってたから……キールの事も好きだし、特に拒否する理由も無いので応えてあげている。
そして明日は木曜、二人と付き合いだして初めての定休日。デートとかするのかな、と内心ドキドキしていたんだけど、キールはエバン君が働いている取次店の上司の人との約束があるらしい。エバン君も同席するとかで、明日は丸一日空いてしまった。
んー、明日は何をして過ごそうかな。そう思いながら平台に本を積んでいると、後ろから誰かに肩をトントンと叩かれた。
いらっしゃいませ、と挨拶をしながら振り返ると白い制服姿の騎士団長、ディルトさんが立っていた。
「久しぶり、ヤマト君。元気してたかい?」
ニコッと爽やかに微笑むディルトさん、相変わらずイケメンだ。綺麗な蒼い髪に眼鏡の奥の蒼い瞳が爽やかさをより一層引き立たせていた。
「ハイ、元気にバリバリ働いてましたよー。
ディルトさん、久しぶりですね。
今日はまた王子用の追加の本を買われに来たんですか?」
「ん、それもあるんだが……その……いや、いい。
ヤマト君、オススメの本をいくつか選んでもらえるかな」
ディルトさんが横を向き、顔を覆うようにして眼鏡を上げながら一瞬口籠った。
「……? 分かりました、いくつかピックアップ済みなので、一緒にその中から選びましょうか」
俺はディルトさんを連れて恋愛小説のコーナーへと向かった。
途中、常連のお客さんと話をしていたキールと目が合ったが、手を軽く振ってそのままディルトさんと歩いて行った。
俺は本棚から本を何冊か取り出し、ディルトさんに一冊一冊渡してあらすじとキャラや世界観等を説明していき、最終的に六冊選び、ご購入頂いた。
ディルトさんを本屋の外まで見送りに行くと、ディルトさんはこちらを振り返りそわそわし出した。
「ヤマト君、今日も本を選んでくれてありがとう。
それと……違う話になるのだが、明日は定休日だろう?
ヤマト君はその、明日は何か予定はあるのかな」
ディルトさんは俺が着ている深緑のエプロンの肩紐部分に手を伸ばし、生地をいじいじと触りながら、顔が赤くなっていった。
わー、デートのお誘いをしてくれてる。
今日声を掛けられた時に口籠っていたのも、もしかしてデートのお誘いだったのかな。
「明日は特に予定無いですよ。二人でどこか遊びに行きます?」
ディルトさんって俺より遥かに身長が高くて年上なんだけど、照れている仕草が可愛いと思ってしまい、冗談っぽく言ってみた。
ディルトさんは驚いた様子でこちらを見た後、みるみると笑顔に変わっていった。
「……ヤマト君……! 勿論だとも。
是非二人で遊びに行こう。キミを連れて行きたい場所があるんだ」
ディルトさんは俺のエプロンの肩紐や胸元を触り続けながら、嬉しそうに喋った。
無意識なのかな、ディルトさんはよく俺のこのエプロンを触ってくるのだ。
そういえば前にエプロン姿を褒めてくれたっけ。
「分かりました、楽しみにしてます」
笑みを浮かべてディルトさんを見上げると、耳まで真っ赤にして横を向いてコクンと頷いた。
(ディルトさんの反応がいちいち新鮮だ……)
ディルトさんは明日の朝九時に馬車で迎えに来ると言い、帰って行くのを見送ってから店内へと戻った。
さっきディルトさんに購入して貰った本棚を見ると全体的に隙間が目立っていたので、二階の倉庫部屋へ在庫本を取りに上がった。
(十五冊位持って下りようかな)
棚に置いてある本と段ボールの中に入っている本の中から探していると、キールがノックして入ってきた。
「団長さん、来てたんだね。またいつもの追加購入?」
キールはそう言いながら、屈んで本を探していた俺の後ろにピタッとくっついてきて、胸の辺りに手を回され後ろから抱きしめられた。
(何かこれ……バックで掘られているみたいなんだけど)
体重を少しかけられてちょっと重たいんだけど、気にしないフリをして本を探し続けた。
「うん、そう、今日も沢山買って貰えたよ」
「そう、それは良かった……外では何を話していたの? 店内に戻ってくるの、少し遅かったよね」
「え? それは……」
明日ディルトさんと二人で出掛けるって事、キールに言ったらどうなるんだろう。
この体勢からして恐らくお仕置きパターン……
でも嘘をつく方が悪い気がして、本当の事を言った。
「明日は……ディルトさんと遊びに行ってくるよ。
キールもエバン君もいないし、暇だから」
そう言った瞬間、キールが乳首の辺りをギュッと掴み、耳をベロッと舐めてきた。
「っうぁぁっ!!」
「まーたヤマトは……俺を怒らせたいの? 怒った俺に虐められたりお仕置きされたいの?
あんまり他の男とフラフラする様なら、手鎖を付けて監禁しちゃうよ」
服の上から乳首をグリグリ弄られ、耳の穴に舌を入れられ、背筋がゾクゾクとした。
お、俺……こんな事をされて変な気分に……!
身の危険を感じていると、フッと体が軽くなった。
キールが俺の体から離れ、胸からも手を離した。
「本当ならこのままここでヤマトにもっとイヤラシイ事をしたかったけど、この辺でやめておくよ。
俺、ヤマトの恋人だし、心配は心配だけど信じてるから。
危なくなったらちゃんと逃げてよね」
キールが振り返って呆然としている俺を抱きしめてきた。
キール、俺を信じてくれてるんだ、嬉しい。
でもこのモヤモヤした変な気分をどうしたらいいんだろうか……
その気にさせておいての放置プレイとかやめて欲しいんですが。
俺は若干モジモジしながら、倉庫部屋から出て行くキールを見送ったのだった。
エバン君は超がつく位のとびきりの笑顔で手を振り、馬車に乗りこんで帰って行った。
あーー、なんで俺エバン君の耳触っちゃったんだろう……
一生を添い遂げる番になる事をオッケーしちゃった、って事は俺、エバン君の嫁に……
後悔しながらエバン君の馬車を見続けていると、横にキールがやって来て手を握ってきた。
「……いずれこうなるとは思ってたけど……もう少しヤマトを俺一人で独占したかったな……」
キールはそう言って少し寂しそうな顔をした。
「……何かゴメン、俺よく分からずにエバン君の耳触っちゃって。まさかそんな意味があるとは思わなくて」
俺はキールの手を握り返してそう呟くと「ヤマトは謝らなくて大丈夫だよ」と言いながらおでこにキスをして、エバン君が持ってきた段ボールを抱えて店へと歩いて行った。
キールに同棲の事を話しそびれちゃったけど、よく考えたらエバン君とも恋人になっちゃったから、俺がキールの家に同棲するのは駄目な気がするなぁ……
ノインさんに話して、もう少し本屋で住み込みで働かせて下さいってお願いしよう。
俺は地面に落ちた箒とちりとりを拾い、今後の事をモヤモヤ考えながら掃除の続きをした。
* * * * *
キールとエバン君、二人の恋人になって数日が経過した。
エバン君とはプラトニックなお付き合いが続いていた。
また前みたいに、股間に顔を埋められて匂いを嗅がれたりするんだろうかと思っていたけど、そういった素ぶりは一切見せなかった。
それどころか、手作りの昼飯を差し入れしてくれたり、手紙を貰ったり、仕事が終わるのをお店の外でわざわざ待っていてくれているので少し話したり。
お互い仕事をしているので長い時間会えていないけど、体だけの関係じゃない所に俺は癒されていた。
キールはというと、エバン君とは正反対にスキンシップが激しくなった。
さすがにノインさんや他のお客さんの前では何もしてこないけど、俺が倉庫部屋へ行った時、昼休憩の時、勤務を終え二階の自室に着替えに行った時等にちょこちょこ姿を見せてはキスを求められ、体を触られた。
俺にキスしたり、触れる事で安心するとかなんとか言ってたから……キールの事も好きだし、特に拒否する理由も無いので応えてあげている。
そして明日は木曜、二人と付き合いだして初めての定休日。デートとかするのかな、と内心ドキドキしていたんだけど、キールはエバン君が働いている取次店の上司の人との約束があるらしい。エバン君も同席するとかで、明日は丸一日空いてしまった。
んー、明日は何をして過ごそうかな。そう思いながら平台に本を積んでいると、後ろから誰かに肩をトントンと叩かれた。
いらっしゃいませ、と挨拶をしながら振り返ると白い制服姿の騎士団長、ディルトさんが立っていた。
「久しぶり、ヤマト君。元気してたかい?」
ニコッと爽やかに微笑むディルトさん、相変わらずイケメンだ。綺麗な蒼い髪に眼鏡の奥の蒼い瞳が爽やかさをより一層引き立たせていた。
「ハイ、元気にバリバリ働いてましたよー。
ディルトさん、久しぶりですね。
今日はまた王子用の追加の本を買われに来たんですか?」
「ん、それもあるんだが……その……いや、いい。
ヤマト君、オススメの本をいくつか選んでもらえるかな」
ディルトさんが横を向き、顔を覆うようにして眼鏡を上げながら一瞬口籠った。
「……? 分かりました、いくつかピックアップ済みなので、一緒にその中から選びましょうか」
俺はディルトさんを連れて恋愛小説のコーナーへと向かった。
途中、常連のお客さんと話をしていたキールと目が合ったが、手を軽く振ってそのままディルトさんと歩いて行った。
俺は本棚から本を何冊か取り出し、ディルトさんに一冊一冊渡してあらすじとキャラや世界観等を説明していき、最終的に六冊選び、ご購入頂いた。
ディルトさんを本屋の外まで見送りに行くと、ディルトさんはこちらを振り返りそわそわし出した。
「ヤマト君、今日も本を選んでくれてありがとう。
それと……違う話になるのだが、明日は定休日だろう?
ヤマト君はその、明日は何か予定はあるのかな」
ディルトさんは俺が着ている深緑のエプロンの肩紐部分に手を伸ばし、生地をいじいじと触りながら、顔が赤くなっていった。
わー、デートのお誘いをしてくれてる。
今日声を掛けられた時に口籠っていたのも、もしかしてデートのお誘いだったのかな。
「明日は特に予定無いですよ。二人でどこか遊びに行きます?」
ディルトさんって俺より遥かに身長が高くて年上なんだけど、照れている仕草が可愛いと思ってしまい、冗談っぽく言ってみた。
ディルトさんは驚いた様子でこちらを見た後、みるみると笑顔に変わっていった。
「……ヤマト君……! 勿論だとも。
是非二人で遊びに行こう。キミを連れて行きたい場所があるんだ」
ディルトさんは俺のエプロンの肩紐や胸元を触り続けながら、嬉しそうに喋った。
無意識なのかな、ディルトさんはよく俺のこのエプロンを触ってくるのだ。
そういえば前にエプロン姿を褒めてくれたっけ。
「分かりました、楽しみにしてます」
笑みを浮かべてディルトさんを見上げると、耳まで真っ赤にして横を向いてコクンと頷いた。
(ディルトさんの反応がいちいち新鮮だ……)
ディルトさんは明日の朝九時に馬車で迎えに来ると言い、帰って行くのを見送ってから店内へと戻った。
さっきディルトさんに購入して貰った本棚を見ると全体的に隙間が目立っていたので、二階の倉庫部屋へ在庫本を取りに上がった。
(十五冊位持って下りようかな)
棚に置いてある本と段ボールの中に入っている本の中から探していると、キールがノックして入ってきた。
「団長さん、来てたんだね。またいつもの追加購入?」
キールはそう言いながら、屈んで本を探していた俺の後ろにピタッとくっついてきて、胸の辺りに手を回され後ろから抱きしめられた。
(何かこれ……バックで掘られているみたいなんだけど)
体重を少しかけられてちょっと重たいんだけど、気にしないフリをして本を探し続けた。
「うん、そう、今日も沢山買って貰えたよ」
「そう、それは良かった……外では何を話していたの? 店内に戻ってくるの、少し遅かったよね」
「え? それは……」
明日ディルトさんと二人で出掛けるって事、キールに言ったらどうなるんだろう。
この体勢からして恐らくお仕置きパターン……
でも嘘をつく方が悪い気がして、本当の事を言った。
「明日は……ディルトさんと遊びに行ってくるよ。
キールもエバン君もいないし、暇だから」
そう言った瞬間、キールが乳首の辺りをギュッと掴み、耳をベロッと舐めてきた。
「っうぁぁっ!!」
「まーたヤマトは……俺を怒らせたいの? 怒った俺に虐められたりお仕置きされたいの?
あんまり他の男とフラフラする様なら、手鎖を付けて監禁しちゃうよ」
服の上から乳首をグリグリ弄られ、耳の穴に舌を入れられ、背筋がゾクゾクとした。
お、俺……こんな事をされて変な気分に……!
身の危険を感じていると、フッと体が軽くなった。
キールが俺の体から離れ、胸からも手を離した。
「本当ならこのままここでヤマトにもっとイヤラシイ事をしたかったけど、この辺でやめておくよ。
俺、ヤマトの恋人だし、心配は心配だけど信じてるから。
危なくなったらちゃんと逃げてよね」
キールが振り返って呆然としている俺を抱きしめてきた。
キール、俺を信じてくれてるんだ、嬉しい。
でもこのモヤモヤした変な気分をどうしたらいいんだろうか……
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