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第五話

腐男子、貞操の危機

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「まぁまぁ、ちょっと待ちなよ」
 今にも俺を刺しかねない熊男の後ろの方から優しい声がした。
 さっき熊男とキスしていたエルフ男だ。
 エルフ男の声を聞いて熊男も後ろを振り返った。
 あ、そういえば俺、ピンチの時は時間停止能力使えるんだった。
 見つかった瞬間使えば良かったのか。
 次は忘れず使おう。

「キミ、見た事無い服装だけどどこから来たの? 迷子にでもなった?」
 エルフ男は怯えて固まっていた俺に近付き、優しい笑みを浮かべた。
 良かった、エルフ男の方は穏やかな性格のようだ。
 そして俺、制服姿のままだ。やっぱこの服装だと目立つのかな。いずれ何とかしなきゃ。

「あの、俺、ヤマトっていいます。何かで気を失っていたようで、起きたらあの森の中で倒れていたんです。
 何故森の中で倒れていたのかは思い出せなくて……」

 うん、間違ってはいない。
 一度死んで異世界転移したって事は多分信じてもらえないだろうから、その事については伏せた。
 すると、エルフ男が俺の肩に手をやり抱き寄せた。

「可哀想に……キミ、可愛い顔しているからきっと悪い奴らに殴られて誘拐でもされたんだろうね。
 おいで、家の中で少し休んでいくといい」

 そう言って俺を家の中に招き入れた。
 ここは素直に従った方が良いと判断し、おとなしくエルフ男について行き家の中へ入る。
 熊男はバツが悪そうに頭をポリポリ掻きながら、俺達の後に続いた。


* * * * *


 俺は先程二人がキスを致していた場所の椅子に座った。
 二人はお茶でも持ってくるね、と奥の台所の方へと姿を消した。

 家の中は以外と広く、家具は必要最低限置いてある程度。
 壁には木の実やドライフラワー、縄、斧などが掛けられていた。
 ザ・山奥の丸太小屋、といった感じだ。
 電気やガスは当然無いのだろう。

(あー、俺、これからどうやって生きていけばいいのかな)
 そんな事をボーッと考えていると、熊男とエルフ男がコップと木の実の様な食べ物が入ったお皿を俺の方へ持ってきてくれた。
 暇なので鑑定スキルを試しにこの二人に使ってみる事にした。
 俺は心の中で「鑑定……」と念じ二人を見つめると、目の前に文字が浮かび上がってきた。
 アソコの長さとか好きな体位とかマジで余計な情報が多数表示されたが、それらは飛ばし飛ばしでざっと流し読む。
 
 熊男の方は……
【名前 ゲン】
【年齢 35歳】
【種別 人族ヒューマン
【性行為時立場 攻め】
【性的嗜好 サディスト・童貞喰い・強姦バイストフィリア・3P】


 エルフ男の方は……
【名前 カミユ】
【年齢 108歳(人族ヒューマン年齢だと30歳位)】
【種別 エルフ】
【性行為時立場 攻め・受け(リバ)】
【性的嗜好 緊縛・監禁陵辱・死体愛好ネクロフィリア


……えーっと……
 何か見てはいけないものを見てしまった気がする。
 二人とも最後の一行が恐ろしいんだが。
 俺、ここに居てはいけない気がしてきたよ。
 あわよくばここで寝泊まりさせて貰おうと思っていたがとんでもなかった。
 とにかくこの家から出た方が良さそうだ。

「あ、あの、俺ちょっと用を思い出したんで……」
 そう言って席を立とうとしたら、エルフ男がいつの間にか俺の背後に回り、うなじをべろんと舐めてきた。

《ヒィィィッ!!》

 全身がゾワゾワっとし、体がビクンと動いた。
 舐められた箇所に手を当てエルフ男の方を向く。

「ウフフ……可愛い反応するんだね。こういう事されたのは初めて?」
 エルフ男は続けて俺の左耳を甘噛みし、胸元をまさぐってきた。

「キミが悪いんだよ……そんな可愛い顔をして、無防備なフリをして僕達を誘っているんだろう?」
 エルフ男が耳元で囁いた。
 何だこれ……こ、怖い……
 顔から血の気が引いていった。
 やめて、と言いたいのに恐怖で声が出ない。
 こういう言葉攻めをする攻めは好きなのだが、それは二次元の世界だから良いのであって、三次元の俺に対しては求めていない。
 言葉攻めをする攻めに対し「いいぞ、もっとやれ!」と毎度毎度胸を熱くしていたが、今なら受けの子の気持ちが分かる。
 受けの皆今までごめんなさい!!

 俺がアレコレ混乱している間にエルフ男は舌舐めずりしながら俺の横にしゃがみ、ズボンのベルト辺りに手を伸ばしてきた。
 更に、側にいた熊男は壁に掛けてあったロープを取り、俺の体をロープで縛り出した。

 あ、これ本当にヤバイやつだわ。
 このままいくと俺、ロープで身動きが取れなくなった後、この二人に犯されるんだ、きっと。
 そしてチート能力で妊娠……
 ウワァァァーッ!! 考えたくない! 考えたくないっ!!

 俺はすがる思いで心の中で時間よ止まれ、と念じた。
 すると、二人の動き、ロープの動きがピタリと止まった。
 よし、やったっ!! 成功した!!

 俺は急いで縄をほどき、その丸太小屋から無事逃げ出す事が出来たのだった。
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