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第九話
腐男子、店内で襲われる
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開店して二時間程経過した。
お客さんも何人かやってきてあっちこっちで立ち読みしたり、購入したり、客同士談笑したりしている。
ノインさんはレジカウンターの中の椅子に腰掛け、時々レジを打ったり、何かの帳面をつけたりしている。
キールの方は常連らしき人と本の買い付けの話をしていた。
金髪で背も高いので遠くから見てもよく目立つ。
俺はノインさんに言われたように、黙々と本棚の空いた部分に在庫を補充して回っていた。掃除と整頓も兼ねている。
補充用の本は本棚の上に重ねてあったり、足元に置いてある木箱の中に入っているので、探して本と本の隙間に入れていった。
同じ題名で、抜けている巻数を探して入れるだけなので割と簡単で単純な作業だ。
今、俺が補充しているのは今朝も見た恋愛小説のコーナー。やはり全てのカップリングがBLで思わずニマニマしてしまう。
一度諦めた腐男子生活を再び異世界でも送れる事になるとは……!
俺は目ぼしい本をチェックしながらウキウキな気分で仕事を続けた。
人族×ドワーフのラブコメとか、虎人達の切ない愛の物語もいいな。
給料を貰ったらいくつか購入して楽しもう。
ニヤケながら本の補充を続けていると、後ろから突然誰かにお尻を触られた。
《!?》
ビックリして振り返ると、中年の小太りの男が後ろに立っていた。薄汚れた茶色の、薄い生地の服を着ている。服装からして村人? 農家の人? といった感じだった。
その男は、俺に抱きついてきて更にお尻を撫で回した。
「さっきから見てたけど、キミ、凄く可愛いねぇ。新人さん?」
ハァハァ荒い息遣いをしながら俺の頬を舐めてきた。
うぎゃあぁぁぁぁ!! 気持ち悪い!!
ゾワゾワ寒気がして吐き気が込み上げてくる。
ここの恋愛小説のコーナーは入り口やレジからは見えず死角になっている。
監視カメラがある訳も無く、他の客やレジにいるノインさんには気付いてもらえていない。
「あのっ……そういうのは辞めてもらえますか? 俺、仕事中で……んぐっ!」
キッと睨みながら文句を言ったが、言い終わらないうちに小太り男が俺の口を塞ぎ、もう片方の手を俺のズボンの中に入れてきた。
「シーッ、静かにね。いやね、キミのその可愛い顔を見てたらムラムラしてきてね~。
ちょっと触らせてよ。気持ちよくさせてあげるからさぁ」
そう言ってその小太り男は俺の股間を触りだした。
俺はズボンの中に入れられている手を、両手で掴み剥がそうとしたが、ビクともしない。何て力だ。
俺は口を塞がれて声も出ず、股間を弄っている手も退けられず、されるがままの状態になってしまった。
ウゥッ、嫌だ……気持ち悪い……
何で俺ばかりこんな目にあわなきゃいけないんだよ……!
頭では嫌だと分かっているのに、反対に体は徐々に反応していった。これも男の性か。悲しい。
「ん……んぐっっ……うぐっ……!」
「ゲヘ……気持ちいい? おじさんにもっとキミのお顔を見せておくれ……」
男の止まらない手に耐え切れず声が漏れる。
嫌悪感、羞恥心、色々な感情が混ざり合って顔が熱を持って紅潮していく。涙も溢れてきた。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……誰か助けて……
って、そう言えば時間停止の能力、今日使えるじゃんか!
直ぐに使ってこの場を切り抜けよう、そう思っていると
「お客さん、ウチの店員にそういう事されちゃ困るんだけど」
聞き覚えのあるイケメンボイスが小太り男の後ろから聞こえてきた。キールだ。
恐ろしく冷たい瞳でこちらを見下ろしていた。思わず俺までゾッとする。
キールは俺の口を塞いでいた小太り男の手を掴み、外へ無理矢理連れて行った。
(た、助かったーー)
全身の力が抜け、へなへなと座り込む。
前に幼女天使が『お主の顔つき、体つきなら何もせずともあちらから寄ってくるじゃろう』とか言っていたが、いくらなんでも寄り過ぎだろ、コレ。
まだこの世界に来て間もないのに立て続けにピンチき過ぎだ。
全部この顔のせいなのか? フルフェイスのマスクでもつけた方が良いのかな。息苦しそうだが。
少しするとキールが店の中に入ってきた。
あの小太り男を追い払ってくれたらしい。
「あ、あの……ありがとう……」
「…………」
俺の側を通ったのでお礼を言うと、キールは無言で俺の方をチラリと見て、そのまま奥へと去って行った。
絶対、あんなのも一人で対処できないなんて情けない奴だな、って思われたな。
俺は肩を落とし、再び在庫補充の仕事に取り掛かったのだった。
お客さんも何人かやってきてあっちこっちで立ち読みしたり、購入したり、客同士談笑したりしている。
ノインさんはレジカウンターの中の椅子に腰掛け、時々レジを打ったり、何かの帳面をつけたりしている。
キールの方は常連らしき人と本の買い付けの話をしていた。
金髪で背も高いので遠くから見てもよく目立つ。
俺はノインさんに言われたように、黙々と本棚の空いた部分に在庫を補充して回っていた。掃除と整頓も兼ねている。
補充用の本は本棚の上に重ねてあったり、足元に置いてある木箱の中に入っているので、探して本と本の隙間に入れていった。
同じ題名で、抜けている巻数を探して入れるだけなので割と簡単で単純な作業だ。
今、俺が補充しているのは今朝も見た恋愛小説のコーナー。やはり全てのカップリングがBLで思わずニマニマしてしまう。
一度諦めた腐男子生活を再び異世界でも送れる事になるとは……!
俺は目ぼしい本をチェックしながらウキウキな気分で仕事を続けた。
人族×ドワーフのラブコメとか、虎人達の切ない愛の物語もいいな。
給料を貰ったらいくつか購入して楽しもう。
ニヤケながら本の補充を続けていると、後ろから突然誰かにお尻を触られた。
《!?》
ビックリして振り返ると、中年の小太りの男が後ろに立っていた。薄汚れた茶色の、薄い生地の服を着ている。服装からして村人? 農家の人? といった感じだった。
その男は、俺に抱きついてきて更にお尻を撫で回した。
「さっきから見てたけど、キミ、凄く可愛いねぇ。新人さん?」
ハァハァ荒い息遣いをしながら俺の頬を舐めてきた。
うぎゃあぁぁぁぁ!! 気持ち悪い!!
ゾワゾワ寒気がして吐き気が込み上げてくる。
ここの恋愛小説のコーナーは入り口やレジからは見えず死角になっている。
監視カメラがある訳も無く、他の客やレジにいるノインさんには気付いてもらえていない。
「あのっ……そういうのは辞めてもらえますか? 俺、仕事中で……んぐっ!」
キッと睨みながら文句を言ったが、言い終わらないうちに小太り男が俺の口を塞ぎ、もう片方の手を俺のズボンの中に入れてきた。
「シーッ、静かにね。いやね、キミのその可愛い顔を見てたらムラムラしてきてね~。
ちょっと触らせてよ。気持ちよくさせてあげるからさぁ」
そう言ってその小太り男は俺の股間を触りだした。
俺はズボンの中に入れられている手を、両手で掴み剥がそうとしたが、ビクともしない。何て力だ。
俺は口を塞がれて声も出ず、股間を弄っている手も退けられず、されるがままの状態になってしまった。
ウゥッ、嫌だ……気持ち悪い……
何で俺ばかりこんな目にあわなきゃいけないんだよ……!
頭では嫌だと分かっているのに、反対に体は徐々に反応していった。これも男の性か。悲しい。
「ん……んぐっっ……うぐっ……!」
「ゲヘ……気持ちいい? おじさんにもっとキミのお顔を見せておくれ……」
男の止まらない手に耐え切れず声が漏れる。
嫌悪感、羞恥心、色々な感情が混ざり合って顔が熱を持って紅潮していく。涙も溢れてきた。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……誰か助けて……
って、そう言えば時間停止の能力、今日使えるじゃんか!
直ぐに使ってこの場を切り抜けよう、そう思っていると
「お客さん、ウチの店員にそういう事されちゃ困るんだけど」
聞き覚えのあるイケメンボイスが小太り男の後ろから聞こえてきた。キールだ。
恐ろしく冷たい瞳でこちらを見下ろしていた。思わず俺までゾッとする。
キールは俺の口を塞いでいた小太り男の手を掴み、外へ無理矢理連れて行った。
(た、助かったーー)
全身の力が抜け、へなへなと座り込む。
前に幼女天使が『お主の顔つき、体つきなら何もせずともあちらから寄ってくるじゃろう』とか言っていたが、いくらなんでも寄り過ぎだろ、コレ。
まだこの世界に来て間もないのに立て続けにピンチき過ぎだ。
全部この顔のせいなのか? フルフェイスのマスクでもつけた方が良いのかな。息苦しそうだが。
少しするとキールが店の中に入ってきた。
あの小太り男を追い払ってくれたらしい。
「あ、あの……ありがとう……」
「…………」
俺の側を通ったのでお礼を言うと、キールは無言で俺の方をチラリと見て、そのまま奥へと去って行った。
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