腐男子が男しかいない異世界へ行ったら色々と大変でした

沼木ヒロ

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第十一話

腐男子、強制的にご奉仕をする

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 働いて一ヶ月が経ったある水曜日の夜。
 徹夜でしなければいけない作業があるとかで、いつも通いで働いていたキールが泊まり込みで仕事をする事になった。
 ノインさんは少し遠くの街まで仕入れに行くとかで夕方に出て行った。明日の夜まで帰って来ないらしい。まぁ明日は定休日だからノインさんがいなくても問題は無いだろう。

 閉店後の静かな店内でキールの伝票をめくる音と、ペンを走らせる音だけが鳴り響いている。
 き、気まずい。そういえばキールと二人きりで過ごすのはこれが初めてかもしれない。

「キール、何か手伝う事はない?」
 重い空気に堪え兼ねて俺は手伝いを申し出た。
 キールは伝票をめくる手を止める事なく
「……いや、俺一人で大丈夫。先に上がってて」
と、ボソッと呟いた。
 でもふとキールの顔を見ると頬がほんのり赤く染まっていた。
 今夜は少し肌寒いのに……風邪か?

「キール、もしかして熱あるんじゃないか?顔が赤くなってるけど……」
 そう言って俺はキールの額に手を当てた。
ただでさえノインさんが不在なのだ。その上ベテランのキールまで風邪で倒れられでもしたら俺が物凄い心細いじゃないか。

 キールはビックリした様子で俺の手を掴み、
「……お、俺は大丈夫だから……!」
と立ち上がり、珍しく顔を真っ赤にしてあわてふためいている。
 いつも無愛想だから新鮮な反応だな、とキールの顔を見つめる。本当に腹が立つ程のイケメンっぷりだな。

 キールに手を掴まれたまま、お互い見つめ合って無言で立ち尽くす。気まずい……。
「そ、そう……それならいいんだけど……。何かあったら遠慮なく呼んでね」
 そうキールに伝え、先に休ませてもらう事にした。

 お風呂と簡単な食事を済ませて二階の部屋に戻り、ベッド横の棚にある本を眺めた。
 貰った給料で、異世界で初めてBL小説を昼休憩の時に三冊購入しここに置いていたのだ。
 どれから読もうか悩んだ結果、その中の一冊を手に取り、ベッドで横になりながら読んだ。
 人族ヒューマンと猫耳族の、種族を超えたラブコメ。受けの人族ヒューマンの可愛さに悶えつつ、読み進めていくうちに……睡魔に襲われていつの間にか眠りの世界に入っていた。


* * * * *


 夜中、ふと目が覚めた。ボヤッと天井が見える。
 仰向けで、本を胸元に乗せたまま眠ってしまったようだ。
 トイレにでも行こうかな。そう思って起き上がろうとすると、左手を誰かに掴まれ、何かを握らされて上下に強制的に動かされている。

(何だ? 誰かが俺の左手に何かを握らせてる?)

 いつの間にか、本を読む為につけていたランプが消えていて部屋は薄暗かった。顔は動かさずに目だけで左の方を見ると……
 そこには見たことのある金髪。キールが俺のベッドの横にしゃがみ、何と……自慰をしていた。
 いや、正確には俺の左手に超デカイブツを握らせて自慰をしていた。
 それに気付いた瞬間、頭がパニックになる。

(なっ……ななななな……!! 何してんだよ! 俺に何握らせてくれちゃってんだよ!)

 俺が起きている事はキールにはバレていないらしく「ヤマト……」と小声で呟きながら俺の手を使って自慰を続けている。
 生温かくてガッチガチなキールのブツを握らされて上下に手を動かされ、その手の動きに合わせて卑猥ひわいな音が響き、思わず顔が熱くなる。

 うわーっ……どうしよう。
 キールってこういう事しそうにないと思っていたけど……いつも無表情で淡白な感じだから。
 でも一応男の子だったって事か。
 いやいやいやいやいや、でも何故に俺の部屋で俺の手を使って? 大胆すぎない? 色々とすっ飛ばしてるよね?
 ここでもし俺が起きたらどうするつもりだ?
 どうするも何も、逆ギレしたキールに襲われて俺のお尻が終わる未来しか見えてこない。それだけは嫌だ。
 ここは気付かないフリをして黙ってやり過ごすしかない。
 俺はそーっと顔をキールとは反対側の右側の壁の方に向き、寝ているフリを決め込んだ。

「ヤマト……ヤマトッ……」

 キールの息遣いが段々荒くなってきた。
 俺の左手もかなり激しく上下に動かされている。
 地味に痛い……けどもうすぐ終わりそうなのでされるがままにしておくと、生温かい液が俺の左手にボタボタッとかかった。

(終わったみたいだ……良かった……)

 俺がホッと安堵しているとキールは液まみれの俺の左手を舌で舐め出したので、思わず手がビクッとなった。
 じっくりねっとり、指の股まで一本一本ゆっくりと舌を這わせて舐め上げている。
 くすぐったくて全身がゾワゾワする。
 ってか、それ自分のアレだよね。よく舐められるな……俺は絶対無理だ……

「はぁ……はぁ……ヤマト……愛してる……」

 キールはそう呟きながら、俺の左手を舐め続けている。くすぐったいのでやめて欲しいが、我慢して寝たふりを続ける。

(キール……俺の事が好きなのか……)

 仕事中はそんなそぶり一ミリも見せなかったのに。
 あ、そういえばさっき二人きりになった時、様子が変だったなぁ。風邪じゃなくて俺の事が好きで……そういう訳か。
 でもこれから仕事の時、顔合わせ辛いじゃんか。
 いや、俺は寝ている事になっているから、変に意識せずに普通に接すれば良いんだろうけど……

 しかしあれだな、俺が元の世界で持っていたBL本にもこういうシチュエーションあったな。
 攻めのブツを受けの子に握らせて無理矢理ご奉仕させる、みたいな。まさか自分が強制的にご奉仕させられる立場になるとは……

 キールは俺の左手を舐め回すのに満足したのか左手を解放し、俺の頭を撫で、髪の毛にキスをしてようやく出て行った。
 扉が閉まった音。誰もいないのを確認して俺は起き上がり、深い溜息をついたのだった。
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