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第十二話
キール、歪んだ恋をする(キール視点)
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俺の名前はキール。人族によく間違われるがハーフエルフだ。
普段は髪で隠しているが、耳が人族と比べて少し外側に尖っているのが特徴だ。
母親はエルフで、王都で出会った人族と恋に落ち、俺が生まれた。
(※注・母親と記載していますが勿論両方男です)
だがその人族には妻子がいた。母親は俺を連れて故郷の村へ戻ったが、村内ではハーフエルフは忌み嫌われる存在だった。
謂れのない噂話を囁かれ、煙たがられ、執拗に虐められた。
俺は家に閉じこもり、母親が俺の為に買ってくれた大好きな本をひたすら読んで過ごした。
ところが、唯一味方だった母親がある日を境に外出して家に戻って来なくなった。事故に遭ったのか、俺が捨てられたのか分からない。
周りは誰も助けてくれず、食べ物も底をつきた。このままだと死んでしまう。
俺は大事な本だけを鞄に詰めて村を出た。
しかし大きくなって初めて村の外へと出た自分は当然行くあてもなく、一銭も所持していない為何日も路頭に迷った。
身元も不明な俺を何処も雇ってくれない。
途方に暮れながら街道を歩き続け、この本屋の前で倒れていたのを店主ノインさんに助けられて現在に至る。
昔から本が好きだったので本屋の仕事は自分に合っていた。真面目に働き、雇われて一年で頑張って貯めたお金で住む場所を借り、そこから通いで勤め続けている。
五年間、一度も休まず、脇目も振らずこの本屋で働いてきた。恋愛の本を手に取る度に、俺には恋愛なんて必要ない。一生独身で過ごす。そのつもりだった。
でもある日ーーヤマトに出会った。
艶やかな黒髪に白い肌、少し茶色がかった大きな瞳が印象的だった。
初めて抱いた感情、一目惚れだった。
感情を表現するのが苦手で人との会話もあまり得意ではない俺にも、ヤマトは初めから気さくに話しかけてくれた。
俺はそれが嬉しくて、ヤマトともっと話したい。ヤマトのためになるなら。ヤマトに喜んでもらえるなら。そう思って掃除の仕方から取り扱っている本の種類、レジの打ち方、本の品出し、補充の仕方等丁寧に教えた。
ヤマトは俺の事を信頼し慕ってくれるようになった。
しかし、その表の顔とは別に俺には裏の顔がある。
事の発端はヤマトが仕事初日の時に遡る。
店内をウロウロ動いていたヤマトの姿が無い事にふと気付き、買い付けの話を早めに終わらせて店内を探したら……
口を塞がれ、中年小太りの男に股間を無理矢理触られているヤマトを見つけた。
その時の、顔を赤くして悶え喘ぎ苦しむヤマトの顔にゾクゾクしてしまい……俺は不謹慎にも性的に興奮してしまった。
ヤマトのあの可愛い顔を、俺の腕の中で快楽と羞恥と苦痛で歪ませ、悶えさせてみたい。
あの中年小太りの男に俺の姿を重ねて想像した。下半身が物凄く疼き熱をもった。こんなに興奮したのは初めてだ。
それからというもの、俺は常にヤマトの事を目で追い、盗み見るようになった。
ヤマトはとても美人で可愛い。色んな客がヤマトの事を下心のある下衆な目で見ているのが分かる。
客達は何かにつけてすぐヤマトを呼び、あろう事か手を握ったりお尻を触ったり抱きついたりしている。腹が立ってしょうがない。
しかし、腹が立つのと同時にその行為を陰で覗き、興奮している自分がいた。最低だ。
でもあまりそういう客を野放しにすると、ヤマトが本屋を辞めてしまうかもしれないので途中で止めに入る。
ヤマトに感謝されるが心が少し痛む。
(ヤマト……俺はヤマトが思っている程いい奴じゃない……)
喉まで出た言葉をグッと飲み込み、仕事に戻った。
* * * * *
ヤマトが働き出して一ヶ月が経った水曜の夜。俺はノインさんから頼まれた仕事が終わらず泊まり込みで徹夜で仕事をする事にした。
ノインさんは少し遠くの街まで仕入れに行くとかで夕方に出て行った。明日の夜まで帰って来ないとの事。まぁ明日は定休日だから俺とヤマト二人でも問題は無いだろう。
閉店後、ランプの灯りの下で本の伝票整理の続きをしていたら、店内の掃除と戸締りを終えたヤマトがこちらへやってきて俺の横に座り、何か手伝う事はないか聞いてきた。
心遣いは嬉しいが、難しい作業なのでヤマトには負担をかけさせたくない。
チラッと横目でヤマトを見た。手持ち無沙汰でもじもじしている。
(……可愛い……)
ギュッと抱きしめたい衝動に駆られる。抱きしめた姿を想像しただけで顔が少し火照ってしまった。駄目だ駄目だ、今は仕事に集中しないと……
ヤマトに先に上がるように言うと、ヤマトは
「キール、もしかして熱あるんじゃないか? 顔が赤くなってるけど……」
そう言って俺の額にふわっと手を当ててきた。
(((……!!)))
想定外の事に思わずヤマトの手を掴み、大丈夫だから、と思わず慌てて立ち上がってしまった。
動揺している俺の顔を、ヤマトがジッと見つめる。ぐっ……!! 心臓の音がバクバクと鳴り出す。俺はどうにかなりそうだった。この手を離したくない。
ヤマトは何かあったら呼んでねと言い、二階から着替えを取ってくると風呂場の方へと歩いて行った。
(ヤマトがお風呂……)
悶々と想像し、思わず生唾を飲む。
今日は俺とヤマトの二人だけ。夢にまで見たヤマトの裸を見るチャンスだ。
いやいや、でも流石に風呂を覗くのは……。風呂を覗いてもし見つかりでもしたらヤマトには引かれ嫌われる、ここもクビになるかもしれない。かなりリスクが高い。
覗きたい衝動を抑え、熱を持って静まらない下半身も抑え俺は仕事の続きをした。
普段は髪で隠しているが、耳が人族と比べて少し外側に尖っているのが特徴だ。
母親はエルフで、王都で出会った人族と恋に落ち、俺が生まれた。
(※注・母親と記載していますが勿論両方男です)
だがその人族には妻子がいた。母親は俺を連れて故郷の村へ戻ったが、村内ではハーフエルフは忌み嫌われる存在だった。
謂れのない噂話を囁かれ、煙たがられ、執拗に虐められた。
俺は家に閉じこもり、母親が俺の為に買ってくれた大好きな本をひたすら読んで過ごした。
ところが、唯一味方だった母親がある日を境に外出して家に戻って来なくなった。事故に遭ったのか、俺が捨てられたのか分からない。
周りは誰も助けてくれず、食べ物も底をつきた。このままだと死んでしまう。
俺は大事な本だけを鞄に詰めて村を出た。
しかし大きくなって初めて村の外へと出た自分は当然行くあてもなく、一銭も所持していない為何日も路頭に迷った。
身元も不明な俺を何処も雇ってくれない。
途方に暮れながら街道を歩き続け、この本屋の前で倒れていたのを店主ノインさんに助けられて現在に至る。
昔から本が好きだったので本屋の仕事は自分に合っていた。真面目に働き、雇われて一年で頑張って貯めたお金で住む場所を借り、そこから通いで勤め続けている。
五年間、一度も休まず、脇目も振らずこの本屋で働いてきた。恋愛の本を手に取る度に、俺には恋愛なんて必要ない。一生独身で過ごす。そのつもりだった。
でもある日ーーヤマトに出会った。
艶やかな黒髪に白い肌、少し茶色がかった大きな瞳が印象的だった。
初めて抱いた感情、一目惚れだった。
感情を表現するのが苦手で人との会話もあまり得意ではない俺にも、ヤマトは初めから気さくに話しかけてくれた。
俺はそれが嬉しくて、ヤマトともっと話したい。ヤマトのためになるなら。ヤマトに喜んでもらえるなら。そう思って掃除の仕方から取り扱っている本の種類、レジの打ち方、本の品出し、補充の仕方等丁寧に教えた。
ヤマトは俺の事を信頼し慕ってくれるようになった。
しかし、その表の顔とは別に俺には裏の顔がある。
事の発端はヤマトが仕事初日の時に遡る。
店内をウロウロ動いていたヤマトの姿が無い事にふと気付き、買い付けの話を早めに終わらせて店内を探したら……
口を塞がれ、中年小太りの男に股間を無理矢理触られているヤマトを見つけた。
その時の、顔を赤くして悶え喘ぎ苦しむヤマトの顔にゾクゾクしてしまい……俺は不謹慎にも性的に興奮してしまった。
ヤマトのあの可愛い顔を、俺の腕の中で快楽と羞恥と苦痛で歪ませ、悶えさせてみたい。
あの中年小太りの男に俺の姿を重ねて想像した。下半身が物凄く疼き熱をもった。こんなに興奮したのは初めてだ。
それからというもの、俺は常にヤマトの事を目で追い、盗み見るようになった。
ヤマトはとても美人で可愛い。色んな客がヤマトの事を下心のある下衆な目で見ているのが分かる。
客達は何かにつけてすぐヤマトを呼び、あろう事か手を握ったりお尻を触ったり抱きついたりしている。腹が立ってしょうがない。
しかし、腹が立つのと同時にその行為を陰で覗き、興奮している自分がいた。最低だ。
でもあまりそういう客を野放しにすると、ヤマトが本屋を辞めてしまうかもしれないので途中で止めに入る。
ヤマトに感謝されるが心が少し痛む。
(ヤマト……俺はヤマトが思っている程いい奴じゃない……)
喉まで出た言葉をグッと飲み込み、仕事に戻った。
* * * * *
ヤマトが働き出して一ヶ月が経った水曜の夜。俺はノインさんから頼まれた仕事が終わらず泊まり込みで徹夜で仕事をする事にした。
ノインさんは少し遠くの街まで仕入れに行くとかで夕方に出て行った。明日の夜まで帰って来ないとの事。まぁ明日は定休日だから俺とヤマト二人でも問題は無いだろう。
閉店後、ランプの灯りの下で本の伝票整理の続きをしていたら、店内の掃除と戸締りを終えたヤマトがこちらへやってきて俺の横に座り、何か手伝う事はないか聞いてきた。
心遣いは嬉しいが、難しい作業なのでヤマトには負担をかけさせたくない。
チラッと横目でヤマトを見た。手持ち無沙汰でもじもじしている。
(……可愛い……)
ギュッと抱きしめたい衝動に駆られる。抱きしめた姿を想像しただけで顔が少し火照ってしまった。駄目だ駄目だ、今は仕事に集中しないと……
ヤマトに先に上がるように言うと、ヤマトは
「キール、もしかして熱あるんじゃないか? 顔が赤くなってるけど……」
そう言って俺の額にふわっと手を当ててきた。
(((……!!)))
想定外の事に思わずヤマトの手を掴み、大丈夫だから、と思わず慌てて立ち上がってしまった。
動揺している俺の顔を、ヤマトがジッと見つめる。ぐっ……!! 心臓の音がバクバクと鳴り出す。俺はどうにかなりそうだった。この手を離したくない。
ヤマトは何かあったら呼んでねと言い、二階から着替えを取ってくると風呂場の方へと歩いて行った。
(ヤマトがお風呂……)
悶々と想像し、思わず生唾を飲む。
今日は俺とヤマトの二人だけ。夢にまで見たヤマトの裸を見るチャンスだ。
いやいや、でも流石に風呂を覗くのは……。風呂を覗いてもし見つかりでもしたらヤマトには引かれ嫌われる、ここもクビになるかもしれない。かなりリスクが高い。
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