腐男子が男しかいない異世界へ行ったら色々と大変でした

沼木ヒロ

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第三十四話

腐男子、帰路につく

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「ヤマト君っ……すまない、私の責任だ、許してくれ……!」

 一階の廊下をロタと歩いていたら、俺を探していたディルトさんと早々に会えたが……
 ロタが、俺が人違いで襲われた事を話した途端、ディルトさんは両膝を床につき、俺の胸に抱きついて謝罪の言葉ばかりを口にして離れない。
 たまたまその辺りにいた周りの人達が、若干引いているのが分かる……

「あ、あの、俺がビックリしてディルトさんから逃げちゃったせいもあるし……
 襲われて凄く怖かったけど、途中でロタが助けに来てくれたし、俺もう大丈夫ですから……
 ディルトさん、た、立って下さい」

 俺も恥ずかしいし、ディルトさんも仮にも騎士団長なんだからこんな醜態を晒すのはもうやめて……!

 ディルトさんはゆっくり立ち上がり
「……他部隊の団員とはいえ、ヤマト君の同意無しに酷い事をして本当にすまなかった。
 ロタ、責任持って奴等の部隊長への報告と、厳しい処分を求める様にしてくれ」
「……了解しました、ディルトさん」

「さぁ、ヤマト君、私が送っていこう」

 ディルトさんが俺の手を引っ張り、馬車が止めてある場所の方へ向かって歩き出した。

「あ……ヤマト君……」

 ロタがそう言いながら俺のもう片方の手を引っ張ったので、俺とディルトさんは立ち止まった。

「何だ、ロタ。お前はヤマト君を襲った犯人達を早く探し出せ。頼んだぞ」

 淡々とした口調でディルトさんが話すとロタは唇をグッと噛み、俺の手を離した。

「…………分かりました。
 ヤマト君、気をつけて帰ってね」

 ロタは俺の頭を名残惜しそうに撫で、きびすを返し、廊下を歩いて行った。



* * * * *



 地下の駐車場で、今まで乗っていた馬車とは違う馬車に乗り、騎士団本部を後にした。
 騎士団員の人が前の御者ぎょしゃ席に座り、馬の手綱を持って馬車を動かしてくれるそうなので、俺とディルトさんは客車の方に乗り込み、俺の隣りにディルトさんが並んで座った。
 こちらを見ていた団員の人にディルトさんが合図し、ゆっくり馬車が動き出した。

 しかし馬車に揺られる事数十分、俺とディルトさんはずっと無言のまま座っていた。

(……何だか気まずいな……ディルトさんも狭そうだし、向かい側に移ろうかな)

 席を立ってディルトさんの向かい側の席へ行こうとしたら、手首を掴まれ、強制的にディルトさんの膝の上に座らされた。しかも向かい合って……

(このカップルみたいな座り方、確かキールともした様な……)

 俺のすぐ目の前にディルトさんの顔がある……
 益々気まずくなって話す言葉を選んでいると

「……怖い思いをさせてしまったね……まだ怖いかい」

 ディルトさんが悲しそうな顔をしながら、俺の唇を撫でた。

「……いいえ、大分落ち着きました……ありがとうございます」

 目を合わせられず伏し目がちにお礼を言うと、ディルトさんに抱きしめられ、頭を撫でられた。

「……ヤマト君……今日は本当にすまなかった。
 もうキミが逃げ出すような事はしないから、また会っては貰えないだろうか」

 元はと言えば俺がディルトさんから逃げて騎士団本部の中に入ったせいで、間違われて襲われてしまったのだ。
 まぁ、逃げてなかったとしても、結局ディルトさんに襲われてたかもしれないのだが……

 逃げ出すような事はしない、とそこまで言ってくれているディルトさんを拒否する事が出来ず、俺は縦に頷いた。

「……本当かい? ありがとう、嬉しいよ、ヤマト君……」

 ディルトさんはそう言うと、より一層強く俺を抱きしめた。

 結局、俺は本屋に着くまでずっとディルトさんの膝の上で抱かれたまま、馬車で揺られていたのだった。
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