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第十七章「死を告げる者」
不気味なセリフ
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「…え!?」
マント男の目が真っ赤に染まっていた。白目の部分まで真っ赤。そして、それと対照的に病的なほどに白い唇が小さく動いた。
ゾクリ
(…嫌な感じがする)
マント男が商売人である男を指差し、何かを宣告するように言った。
『おまえ…しぬ…』
「?!」
男はそういってまたマントをかぶり直した。
(待て、今…こいつ“死ぬ"って言ったよな…?!)
商売人は一瞬何を言われたのかわからない、という顔をしたあと、すぐにユデダコのような真っ赤の顔になる。
「何意味わかんねえこといってやがる!!」
「あ、兄貴っ!!」
痩せた部下っぽい男が口を出してきた。かなり慌てたよう様子で。
「あいつとは口をきかない方がいいっす、あいつ不気味なんすよ…!」
「っちい!!あんなのただの噂だろおが!」
「品物は三日後までならもちます、一日は待てますよ…!だからあいつとは関わらない方が…」
「うっせえなあ…わかったよ!おい、明日は絶対馬車をだせよ!!」
そういって商売人は逃げるように去っていった。
(なんだ?急に…?不気味なのはわかるけど、噂…?)
俺はぼーっと彼らの後ろ姿をみたあと、すぐに起き上がってマント男の姿を探す。ちょうど宿の二階に向かうところだったので、声をかけた。
「あの!」
「…」
何も反応せず、階段を上がっていくマント男。めげずに再度声をかけた。
「あの…俺、ルトっていうんだ、さっきは助けてくれてありがとう!」
「…」
そこで足を止め、男はくるりと振り返った。階段の上にいるためかなり目線が高い。下からだとマントの中が見えて、その赤い瞳も見ることができた。ザクとは違う、少し濁った赤い瞳。
『おま……が…』
「え?」
ぼそぼそと何かを呟いたかと思えば、今度こそ階段の奥に消えてしまった。
「…行っちゃった。なんか…変な奴だな」
目があんなに充血するなんて人間の体でありえるのだろうか。病気じゃないといいが。
どんどんどん!
「え?」
窓が外側から強い力で叩かれている。何かと思えば、猫ザクが窓の外で鼻水をたらしながら座っていた。
=開けろ!開けろー!!凍えるっつの!!!=
「あ…!ごめん」
それから30分ほど、ザクに文句を言われ続けるルトなのであった。
「ったく、温泉が混浴じゃねえとか何考えてんだよ~商売のやる気がねえなあ」
「はあ…何期待してたんだよ馬鹿ザク」
午後も結局待機しているだけで終わってしまい、仕方なく俺たちは気晴らしにと宿の温泉にやってきた。
(温泉か…)
もぞもぞと服を脱いでいく。ザクはもう脱ぎ終えて、さっさと中に入ってしまった。
「うう…さむ」
服を脱ぐと一気に寒さが厳しくなった。
(早く入ろ…)
爪先立ちのまま早足で進む。
ガララッ
「おお…すご、」
温泉も宿と同じで落ち着いたデザインで統一されていた。ほどよく木々が植えられていて、景観も素晴らしい。外観もだが全体的に落ち着く感じなのが俺的に好みだった。大きな窓が外の広大な風景を見せてくれるから、まるで森の中にいるみたいな気分になる。温泉は三つあり、それぞれ効能とかが違うらしい。夜中ということもあって人はほとんどいない。
「あ、」
石で囲まれた露天風呂の中にザクがいることに気付いた。ザクはもたれかかるようにつかっており、大きな月を見上げている。
(ザク…)
念入りに体を洗ってからそっちの方に向かった。気配で気付いたザクが振り向いてくる。
「お、ルト」
「さむい…しぬ…」
「けけ、死なねえって、ほら」
お湯から手を出して引き寄せられる。滑らないよう気をつけながらゆっくりと腰を下ろした。5m四方の露天風呂に二人きり。ちょっと、というか多分結構いい雰囲気だった。
「き、…きもちいいな」
「んー」
「あ、あ…あんまり人いないな」
「だなー」
「…」
(あれ…?)
生返事しか返ってこず、気を遣った自分が馬鹿みたいで恥ずかしくなった。
「はあ…」
俺はため息をついて、ぼーっと頭上の月を眺めた。
(やっぱりザク、ちょっとおかしい…かも…?)
いつもなら手を出してくる所なのに、静か過ぎるというか、大人しすぎて。何度も肩透かしをされて、調子が狂ってしまう。
(それか…期待してるのは俺だけ…だったりして…)
いやいや、そんなわけないだろ。…そんなわけは…ない、よな。突如浮かんだ疑惑を必死に頭を振ってかき消した。
マント男の目が真っ赤に染まっていた。白目の部分まで真っ赤。そして、それと対照的に病的なほどに白い唇が小さく動いた。
ゾクリ
(…嫌な感じがする)
マント男が商売人である男を指差し、何かを宣告するように言った。
『おまえ…しぬ…』
「?!」
男はそういってまたマントをかぶり直した。
(待て、今…こいつ“死ぬ"って言ったよな…?!)
商売人は一瞬何を言われたのかわからない、という顔をしたあと、すぐにユデダコのような真っ赤の顔になる。
「何意味わかんねえこといってやがる!!」
「あ、兄貴っ!!」
痩せた部下っぽい男が口を出してきた。かなり慌てたよう様子で。
「あいつとは口をきかない方がいいっす、あいつ不気味なんすよ…!」
「っちい!!あんなのただの噂だろおが!」
「品物は三日後までならもちます、一日は待てますよ…!だからあいつとは関わらない方が…」
「うっせえなあ…わかったよ!おい、明日は絶対馬車をだせよ!!」
そういって商売人は逃げるように去っていった。
(なんだ?急に…?不気味なのはわかるけど、噂…?)
俺はぼーっと彼らの後ろ姿をみたあと、すぐに起き上がってマント男の姿を探す。ちょうど宿の二階に向かうところだったので、声をかけた。
「あの!」
「…」
何も反応せず、階段を上がっていくマント男。めげずに再度声をかけた。
「あの…俺、ルトっていうんだ、さっきは助けてくれてありがとう!」
「…」
そこで足を止め、男はくるりと振り返った。階段の上にいるためかなり目線が高い。下からだとマントの中が見えて、その赤い瞳も見ることができた。ザクとは違う、少し濁った赤い瞳。
『おま……が…』
「え?」
ぼそぼそと何かを呟いたかと思えば、今度こそ階段の奥に消えてしまった。
「…行っちゃった。なんか…変な奴だな」
目があんなに充血するなんて人間の体でありえるのだろうか。病気じゃないといいが。
どんどんどん!
「え?」
窓が外側から強い力で叩かれている。何かと思えば、猫ザクが窓の外で鼻水をたらしながら座っていた。
=開けろ!開けろー!!凍えるっつの!!!=
「あ…!ごめん」
それから30分ほど、ザクに文句を言われ続けるルトなのであった。
「ったく、温泉が混浴じゃねえとか何考えてんだよ~商売のやる気がねえなあ」
「はあ…何期待してたんだよ馬鹿ザク」
午後も結局待機しているだけで終わってしまい、仕方なく俺たちは気晴らしにと宿の温泉にやってきた。
(温泉か…)
もぞもぞと服を脱いでいく。ザクはもう脱ぎ終えて、さっさと中に入ってしまった。
「うう…さむ」
服を脱ぐと一気に寒さが厳しくなった。
(早く入ろ…)
爪先立ちのまま早足で進む。
ガララッ
「おお…すご、」
温泉も宿と同じで落ち着いたデザインで統一されていた。ほどよく木々が植えられていて、景観も素晴らしい。外観もだが全体的に落ち着く感じなのが俺的に好みだった。大きな窓が外の広大な風景を見せてくれるから、まるで森の中にいるみたいな気分になる。温泉は三つあり、それぞれ効能とかが違うらしい。夜中ということもあって人はほとんどいない。
「あ、」
石で囲まれた露天風呂の中にザクがいることに気付いた。ザクはもたれかかるようにつかっており、大きな月を見上げている。
(ザク…)
念入りに体を洗ってからそっちの方に向かった。気配で気付いたザクが振り向いてくる。
「お、ルト」
「さむい…しぬ…」
「けけ、死なねえって、ほら」
お湯から手を出して引き寄せられる。滑らないよう気をつけながらゆっくりと腰を下ろした。5m四方の露天風呂に二人きり。ちょっと、というか多分結構いい雰囲気だった。
「き、…きもちいいな」
「んー」
「あ、あ…あんまり人いないな」
「だなー」
「…」
(あれ…?)
生返事しか返ってこず、気を遣った自分が馬鹿みたいで恥ずかしくなった。
「はあ…」
俺はため息をついて、ぼーっと頭上の月を眺めた。
(やっぱりザク、ちょっとおかしい…かも…?)
いつもなら手を出してくる所なのに、静か過ぎるというか、大人しすぎて。何度も肩透かしをされて、調子が狂ってしまう。
(それか…期待してるのは俺だけ…だったりして…)
いやいや、そんなわけないだろ。…そんなわけは…ない、よな。突如浮かんだ疑惑を必死に頭を振ってかき消した。
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