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第十七章「死を告げる者」
温泉で聞き込み?
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「あれ、」
独特なデザインの着物(地元衣装なのかな?)を風呂上りに苦労して着ていると、見たことのある人が温泉に入ってきた。紫色の髪に赤い瞳。
(あの変なセリフを言ってた男だ)
いつもマントで体を隠していたが、さすがに温泉では脱ぐようだ。あの傷だらけの体が光の下に現れ、その痛々しい傷の数々に目を背けてしまう(いや、見てるのは失礼だから背けた方がいいよな)。
「こんばんは」
横を通り過ぎたので、軽く声をかけてみたが。
「…」
予想通り無視された。そのまま温泉の中に入っていく。相変わらず愛想のない男だ。俺も人の事は言えないけども。
(…そういえばこの宿には雪崩に巻き込まれた人も滞在してるんだよな)
だったらあの人も雪崩の関係者だろうか。傷だらけなのも雪崩のせいとしたらつじつまが合う。
(もしかしたら何か情報を聞けるかも)
「あの、すみませんっ」
苦労して着た着物を脱ぎ捨てて、彼を慌てて追いかけた。温泉の中に再度入る。かなりのスピードで走っていた為、入ってすぐにあった水溜りに足をとられ転びかける。
ツルッ!!
「うわあ!」
「…」
「っ、え…あ!」
いつまでたっても体が落ちないと思えば、マント男の彼が支えてくれていた。腕を引っ張って起こしてくれる。
「すみません!」
俺が自分で立てるようになると、さっと手を放し、そのまま重い足のりで温泉の方に向かっていく。
(また助けられた…)
無意識にその背中を追いかけてしまい、マント男になんだと苛立ちを込めた顔で睨まれた。わたわたと言い訳をする。
「えっと…その、俺は別に怪しいものじゃ、なくて…!話をしたいというか…!」
「男が好き…なのか…?」
「はあ?!!」
何を根拠に、と思ったが俺にしつこく付きまとわれたからそう思ったのだと察した。
「こ、恋人いますし!そういうのじゃなくて…!ほんとに、警戒しないでください…!」
ぼそぼそと照れながら言うと、男は一瞬下を向いて、それからまた温泉に向かって歩いていった。
(これは…どっちなんだろう)
ついていっていいのだろうか。いや、ここまできたらウザがられようと気にしていられるか。俺は一刻も早く情報を掴み、我らの愛するリリに会いに教会に戻らなければいけないのだから。
(…よしっ)
嫌われる覚悟で踏み込んだ。ぴちゃりと音を立て、男と同じ温泉に少し距離を開けて入る。恐る恐る様子を見てみたが、特に嫌がるそぶりは見せてこない。
(よかった)
彼はリラックスしたように目を瞑っていた。その姿を意味もなくボーっと見つめていると
「…なんだ」
目を開けずに口だけを動かし問われる。まるで俺が見てるのを知ってるかのような口調で驚いた。
「えええっと、俺はルトっていうんですけど、あなたは」
「…レイ」
「ふーん、綺麗な名前ですね」
「敬語も必要ない」
「そ、そうで…わかった」
目を瞑ったままの相手に話しかけ続ける、というちょっと奇妙な状況にドキドキしつつ本題を切り出した。
「レイも、雪崩に巻き込まれたのか?」
「…あぁ」
やっぱりそうか。その傷もそうなのか、とも聞きたかったけど流石にそれは控えた。
「そっか、俺も旅行できててさ、困っちゃうよな」
「…すまない……」
「ん?なんでレイが謝るんだよ」
「雪崩は俺のせいでもある…」
「え…?」
焦って横を見ると、いつの間にか目を開けていたレイがこっちを見つめていた。
「!」
その瞳はとても冷たく濁った色をしているのに、なぜか俺は
(助けてと言われてる気がする)
怖いとは思えなかった。
「…」
「…」
しばらくそうやって見つめ合ってると、温泉の出入り口の扉が開いた音がする。
「おーい、ルトー?いつまで入ってんだよー」
ザクだ。振り向こうとしたその時、体中にゾワリと嫌な鳥肌が立った。ぴりぴりと肌に刺すような張り詰められた空気。この感覚は何度も味わった。ザクが怒り狂って暴走したときに感じる“殺気"だ。
(一体何が起きて…!?)
何があったんだと焦ってザクの方を見れば―――怒りに顔を歪め、黒い靄を漂わせる半暴走状態のザクがいた。その視線の先にはレイがいる。
「ちょ、ザク!なにやってるんだ!落ち着…うわっ!!」
物凄い勢いで俺たちの所に飛んできて、レイから隠すように俺を背中の後ろに引っ張ってくる。俺は呆気にとられて、見ているだけしかできなかった。
(ど、どうしたんだ、ザクのやつ…?)
『てめえっレイス!!ルトに近づくんじゃねえ!!!』
レイに噛み付かんばかりに吠えるザク。その姿には怒りというより焦りの色の方が強い気がした。レイ本人は目を瞑ったまま静かに温泉に入っていて、その温度差が逆に不安を煽った。
独特なデザインの着物(地元衣装なのかな?)を風呂上りに苦労して着ていると、見たことのある人が温泉に入ってきた。紫色の髪に赤い瞳。
(あの変なセリフを言ってた男だ)
いつもマントで体を隠していたが、さすがに温泉では脱ぐようだ。あの傷だらけの体が光の下に現れ、その痛々しい傷の数々に目を背けてしまう(いや、見てるのは失礼だから背けた方がいいよな)。
「こんばんは」
横を通り過ぎたので、軽く声をかけてみたが。
「…」
予想通り無視された。そのまま温泉の中に入っていく。相変わらず愛想のない男だ。俺も人の事は言えないけども。
(…そういえばこの宿には雪崩に巻き込まれた人も滞在してるんだよな)
だったらあの人も雪崩の関係者だろうか。傷だらけなのも雪崩のせいとしたらつじつまが合う。
(もしかしたら何か情報を聞けるかも)
「あの、すみませんっ」
苦労して着た着物を脱ぎ捨てて、彼を慌てて追いかけた。温泉の中に再度入る。かなりのスピードで走っていた為、入ってすぐにあった水溜りに足をとられ転びかける。
ツルッ!!
「うわあ!」
「…」
「っ、え…あ!」
いつまでたっても体が落ちないと思えば、マント男の彼が支えてくれていた。腕を引っ張って起こしてくれる。
「すみません!」
俺が自分で立てるようになると、さっと手を放し、そのまま重い足のりで温泉の方に向かっていく。
(また助けられた…)
無意識にその背中を追いかけてしまい、マント男になんだと苛立ちを込めた顔で睨まれた。わたわたと言い訳をする。
「えっと…その、俺は別に怪しいものじゃ、なくて…!話をしたいというか…!」
「男が好き…なのか…?」
「はあ?!!」
何を根拠に、と思ったが俺にしつこく付きまとわれたからそう思ったのだと察した。
「こ、恋人いますし!そういうのじゃなくて…!ほんとに、警戒しないでください…!」
ぼそぼそと照れながら言うと、男は一瞬下を向いて、それからまた温泉に向かって歩いていった。
(これは…どっちなんだろう)
ついていっていいのだろうか。いや、ここまできたらウザがられようと気にしていられるか。俺は一刻も早く情報を掴み、我らの愛するリリに会いに教会に戻らなければいけないのだから。
(…よしっ)
嫌われる覚悟で踏み込んだ。ぴちゃりと音を立て、男と同じ温泉に少し距離を開けて入る。恐る恐る様子を見てみたが、特に嫌がるそぶりは見せてこない。
(よかった)
彼はリラックスしたように目を瞑っていた。その姿を意味もなくボーっと見つめていると
「…なんだ」
目を開けずに口だけを動かし問われる。まるで俺が見てるのを知ってるかのような口調で驚いた。
「えええっと、俺はルトっていうんですけど、あなたは」
「…レイ」
「ふーん、綺麗な名前ですね」
「敬語も必要ない」
「そ、そうで…わかった」
目を瞑ったままの相手に話しかけ続ける、というちょっと奇妙な状況にドキドキしつつ本題を切り出した。
「レイも、雪崩に巻き込まれたのか?」
「…あぁ」
やっぱりそうか。その傷もそうなのか、とも聞きたかったけど流石にそれは控えた。
「そっか、俺も旅行できててさ、困っちゃうよな」
「…すまない……」
「ん?なんでレイが謝るんだよ」
「雪崩は俺のせいでもある…」
「え…?」
焦って横を見ると、いつの間にか目を開けていたレイがこっちを見つめていた。
「!」
その瞳はとても冷たく濁った色をしているのに、なぜか俺は
(助けてと言われてる気がする)
怖いとは思えなかった。
「…」
「…」
しばらくそうやって見つめ合ってると、温泉の出入り口の扉が開いた音がする。
「おーい、ルトー?いつまで入ってんだよー」
ザクだ。振り向こうとしたその時、体中にゾワリと嫌な鳥肌が立った。ぴりぴりと肌に刺すような張り詰められた空気。この感覚は何度も味わった。ザクが怒り狂って暴走したときに感じる“殺気"だ。
(一体何が起きて…!?)
何があったんだと焦ってザクの方を見れば―――怒りに顔を歪め、黒い靄を漂わせる半暴走状態のザクがいた。その視線の先にはレイがいる。
「ちょ、ザク!なにやってるんだ!落ち着…うわっ!!」
物凄い勢いで俺たちの所に飛んできて、レイから隠すように俺を背中の後ろに引っ張ってくる。俺は呆気にとられて、見ているだけしかできなかった。
(ど、どうしたんだ、ザクのやつ…?)
『てめえっレイス!!ルトに近づくんじゃねえ!!!』
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