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第十七章「死を告げる者」
ナイトメア
しおりを挟む「……っ」
「はは、流石にそんなに怯えられると悲しいな。初めて会った時みたいにまた懐いてくれたらいいのに」
「…お前は、俺やザクにひどいことをした」
「そう?ルトがちゃんと俺の言うことを聞いていればもう少しマシな結末になってただろうけどな」
「…お前は、何がしたいのか…わからない…」
喋りながら、ぼーっと頭の芯が溶けてきた。暖炉と背中から伝わってくるレインの熱で体が温まってきたのか、強い睡魔が襲ってくる。
「さ、ルトは一回寝たほうがいい。次に目を開けたら俺の話をしてあげるから」
「レイン、の…?」
「そう、だからおやすみ、ルト」
(誰が、おやすみ、だ…)
どうしてもレインには素直になりたくない。けど、体はもう限界で、俺はそのままずるずるとレインにもたれかかった。
絶対ザクが、助けに来てくれるはずだ。
だからそれまでは…。
よしよしと髪を撫でられる感触を感じながら、吸い込まれるように意識を手放した。
それから俺はずっとうなされるように眠り続けた。
その間、レインが誰かと話すような声が聞こえた気がしたけど、すぐに気を失ってしまったからよくわからなかった。
長い長い眠りの間、俺は同じ夢をずっと見ていた。
ザクが俺を呼んでる夢。
今にも泣きそうな、苦しそうな声で俺の名前を呼んでる。肩にはずっしりと雪が積もっていて、どれだけ長く探してくれているのかが一目でわかった。
(ザク…)
その横には何故かレイもいて、一緒に俺の名前を呼んでいた。そうやって二人が並んでいるのは変な気がして、でも少し…嬉しくて、俺は夢の中で笑ってしまった。
(ここだ、俺はここだよ…)
手を伸ばす。
しかしそこで
『ルト、お前は近いうちに死ぬ』
突然現れた黒い影に手を阻まれて、二人の元には行けなかった。
(待って、待って…ザク…)
俺には気付かずザクたちは森の奥に去っていってしまう。
(ああ、そうか…俺は…死ぬんだった…)
なら、ザクは俺のところに来ちゃダメだ。死の世界にザクをつれていけない。このまま見つからない方が、ザクのためなんだ。俺は手を下ろし二人の小さくなっていく背中を黙って見送り、また深い眠りにつくのだった。
次に目を開けたとき、俺は牢屋のような場所にいた。灰色の壁に錆び付いた鉄格子。牢屋の隅にはドブネズミが何匹か餌を漁っていた。
「…?」
のろのろと上半身を起こし、自分の体を見下ろす。
「?!」
そこで冷水をかぶったかのように頭が真っ白になる。
(ど、どうして俺…裸なんだ?!)
自分が何も身につけてないことに気付いてギョッとした。キョロキョロと辺りを見回して服を探すが、牢屋の中には当然何もない。
『お、人間が起きたぞ』
「?!」
一人戸惑ってると牢屋の外にいたネズミたちが鼻をひくつかせながら喋りだした。「わあ?!」っと俺は飛び起きて牢屋の端に逃げ込む。
「なっなんだ、ネズミがしゃべ…??」
『何って悪魔だけど?』
「?!」
ネズミが悪魔だと名乗ってきて更に驚く。
「あ…悪魔…が、なんでこんな近くに…ってかここはどこだよ…?!!」
『それは教えちゃダメだって言われてるしな~』
「言われてるって誰に??」
『レイン様』
「!!」
その名前を聞いて鳥肌が立つ。
「レインが…近くにいるのか?!」
『近くにいるよそりゃね』
「…」
心臓がバクバクとうるさいほど鳴っている。
(ここがレインの…基地なのか?俺は監禁されてるってこと?)
ネズミ達はニヤニヤと俺の動揺する姿を眺めてから口を開いた。
『くく、にしても、噂通りのうまそうな体だなあ』
「?!」
『みんな話してるぜ。誰から食おうって順番争いしてる』
「な、なにを…」
ネズミが下衆い笑みを浮かべる。その瞳が俺の体を舐めるように見ていると気付いてゾッとした。
『ま、それはレイン様の許可が下りてからだからだけどさ。くく、楽しみだなあ』
「…勝手に妄想してろ…てか、お前、なんか布かして」
『はあ?なんで』
「いいから、…頼む」
『くく、俺様に“頼む"なんて言葉使ってくれるなんて嬉しいなあ、レイン様も、今までのご主人も、誰も言ってくれなかったのに。…ま、どうせ布なんてあっても逃げられないしいいか。よし、俺様がもってきてやるよ』
ネズミはそういったあと、牢屋の先にある通路に消えていった。しばらくして、毛布を持って現れる。
『ほらよ~』
牢屋の隙間から押し込むようにして渡された。
「ありがとう」
『くく、お礼言われちゃった~ほんとかわいいな人間~』
「…」
ネズミの茶化すような言葉は無視して、牢屋のすみで毛布を巻き付けた。目を瞑り、今の状況を整理していく。
(ここがレインの言っていた“基地"だとして、悪魔がごろごろいるってことはここは悪魔の世界なのか?それとも人間界?)
どっちにしろ最後に俺がいたあの山小屋からは程遠い気がする。
(ザク、こんな所まで探しにこれるのかな…)
牢屋で閉じ込められているということは、今から拷問でもされるのだろうか。それとも悪魔共に殺されるのか。どっちにしろここにいてはいけない、ということだけはわかった。なんとしてでも脱走しなければ。
『あ、そうだ、また毛布もってきてやるよ』
ネズミは思い出したかのように言ってくる。
『毛布なんてすぐに引き裂かれちまうだろうからな』
「は?」
どういう意味、と言おうとしたときだった。
バタン
牢屋の先にあるたった一つの扉が開いた。ギギギ…と重苦しい音をたてながら開くそれから目が離せない。
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