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5 理解不能な展開
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視線を巡らせれば、きちんと外行きの服装であるユウくんが、コンビニ袋を手に提げて立っている。
「とりあえず、食べやすそうなの買ってきた。起きれる?」
ユウくんが淡々とした口調でそう言いながら俺が占領しているベッドに腰かけ、袋の中身を取り出す。冷えている果物ゼリーは、今の俺にはすごく食べたいものだった。起き上がろうとするけれど、身体に力が入らない。っていうか、特に腰。俺がプルプルしていると、ユウが手を貸して起き上がらせてくれて、背中にクッションを入れてくれた。
「……ありがとう、ユウくん、だよな?」
「那須裕也。裕也でいいよ、高瀬永太サン」
俺が恥ずかしく思いつつも礼を言うと、ユウくん――裕也くんが改めて名乗った。そうか、俺は名前も知らない男とセックスをしたのか。ますます普段の偉そうな口ぶりの数々を思い出し、いたたまれなくなる。あっちが俺の名前を知っているのは、店のコに聞いたのか、警察手帳を見たのかもしれない。
っていうか俺は今素っ裸だが、職務中の装備はどうした? そのことに気付き、俺が顔色を青くしていると。
「高瀬さんの仕事道具なら、一緒に居た若い子に押し付けておいたよ」
すぐに裕也くんがそう言ってきて、俺はホッと安堵する。どうやら田中が持ち帰ったようだ。確かにオヤジさんから、その手の注意のメッセージはなかった。どこまでもお世話になったようで、本当に申し訳ない。
そんな俺に、裕也くんはゼリーを開けてスプーンで掬うと、「はい」と突き出してくる。つまり「ほら、『あ~ん』して?」状態だ。いや、さすがにそのくらいは自分でできるんだが? けれど裕也くんが無表情でそのまま待機で、スプーンを引っ込める様子がないので、俺は仕方なくパクッとする。すると裕也くんはすぐに次を掬い、それを俺が食べて、と繰り返し、ゼリーを完食した。
え、俺はなにをさせられているんだ?
「冷凍チャーハンもあるけど、食べられる?」
「……腹は空いている」
というわけで。
足腰が立たない俺は裕也くんから、まずまだ素っ裸だったのにTシャツを貸してもらってそれを着て、下着までコンビニで買って来てくれたのを穿く。それからリビングに移動して――正確にはお姫様抱っこで連れて行ってもらったのが、すごく恥ずかしい。
それから冷凍チャーハンを温めてもらい、ありがたくご馳走になる。
「あの、裕也くん。俺よく覚えていないんだけれど、どうしてここにいるのか、教えてもらってもいいか?」
俺がテーブルに向かい合って座る裕也くんに恥を忍んで尋ねれば、裕也くんは「あの様子だと、そうだろうね」と答えてくれた。
やはり見回り中に発情期になってしまった俺を、たまたまその場に居合わせたαの裕也くんが保護したらしい。念のために常に持ち歩いている抑制剤をジャケットのポケットから探り出して飲ませたようだが、案の定薬が弱くて効かなかった。
一応見回り中の対応で使う抑制剤もあったが、そちらは装備品であるので田中の手に渡っているのだろう。Ωの警察官が自前の抑制剤を持っているのは当たり前だし、そちらを当てにする方が確実と考えるのが普通だ。
それで結果俺は発情期衝動をセックスで発散するしか手段がなく、裕也くんはその発散に付き合ってくれたらしい。介抱相手が可愛らしいΩであればまだ役得だっただろうが、よりによって俺である。ハズレくじを引かせたみたいで、本気で申し訳ない。
「謝罪とお礼は改めてする。酷いことを押し付けてすまなかった」
申し訳なさ過ぎてまともに顔が見れず俯いてしまった俺は、裕也くんがどんな顔をしているのか見えていない。裕也くんもしばし無言で、ただ俺がチャーハンを食べるスプーンのカチャカチャとした音だけが響いていると。
「なぁ、セックス初めてだった?」
「むぐっ!?」
唐突にどストレートに聞かれて、俺はチャーハンを吹き出すところだった。
「とりあえず、食べやすそうなの買ってきた。起きれる?」
ユウくんが淡々とした口調でそう言いながら俺が占領しているベッドに腰かけ、袋の中身を取り出す。冷えている果物ゼリーは、今の俺にはすごく食べたいものだった。起き上がろうとするけれど、身体に力が入らない。っていうか、特に腰。俺がプルプルしていると、ユウが手を貸して起き上がらせてくれて、背中にクッションを入れてくれた。
「……ありがとう、ユウくん、だよな?」
「那須裕也。裕也でいいよ、高瀬永太サン」
俺が恥ずかしく思いつつも礼を言うと、ユウくん――裕也くんが改めて名乗った。そうか、俺は名前も知らない男とセックスをしたのか。ますます普段の偉そうな口ぶりの数々を思い出し、いたたまれなくなる。あっちが俺の名前を知っているのは、店のコに聞いたのか、警察手帳を見たのかもしれない。
っていうか俺は今素っ裸だが、職務中の装備はどうした? そのことに気付き、俺が顔色を青くしていると。
「高瀬さんの仕事道具なら、一緒に居た若い子に押し付けておいたよ」
すぐに裕也くんがそう言ってきて、俺はホッと安堵する。どうやら田中が持ち帰ったようだ。確かにオヤジさんから、その手の注意のメッセージはなかった。どこまでもお世話になったようで、本当に申し訳ない。
そんな俺に、裕也くんはゼリーを開けてスプーンで掬うと、「はい」と突き出してくる。つまり「ほら、『あ~ん』して?」状態だ。いや、さすがにそのくらいは自分でできるんだが? けれど裕也くんが無表情でそのまま待機で、スプーンを引っ込める様子がないので、俺は仕方なくパクッとする。すると裕也くんはすぐに次を掬い、それを俺が食べて、と繰り返し、ゼリーを完食した。
え、俺はなにをさせられているんだ?
「冷凍チャーハンもあるけど、食べられる?」
「……腹は空いている」
というわけで。
足腰が立たない俺は裕也くんから、まずまだ素っ裸だったのにTシャツを貸してもらってそれを着て、下着までコンビニで買って来てくれたのを穿く。それからリビングに移動して――正確にはお姫様抱っこで連れて行ってもらったのが、すごく恥ずかしい。
それから冷凍チャーハンを温めてもらい、ありがたくご馳走になる。
「あの、裕也くん。俺よく覚えていないんだけれど、どうしてここにいるのか、教えてもらってもいいか?」
俺がテーブルに向かい合って座る裕也くんに恥を忍んで尋ねれば、裕也くんは「あの様子だと、そうだろうね」と答えてくれた。
やはり見回り中に発情期になってしまった俺を、たまたまその場に居合わせたαの裕也くんが保護したらしい。念のために常に持ち歩いている抑制剤をジャケットのポケットから探り出して飲ませたようだが、案の定薬が弱くて効かなかった。
一応見回り中の対応で使う抑制剤もあったが、そちらは装備品であるので田中の手に渡っているのだろう。Ωの警察官が自前の抑制剤を持っているのは当たり前だし、そちらを当てにする方が確実と考えるのが普通だ。
それで結果俺は発情期衝動をセックスで発散するしか手段がなく、裕也くんはその発散に付き合ってくれたらしい。介抱相手が可愛らしいΩであればまだ役得だっただろうが、よりによって俺である。ハズレくじを引かせたみたいで、本気で申し訳ない。
「謝罪とお礼は改めてする。酷いことを押し付けてすまなかった」
申し訳なさ過ぎてまともに顔が見れず俯いてしまった俺は、裕也くんがどんな顔をしているのか見えていない。裕也くんもしばし無言で、ただ俺がチャーハンを食べるスプーンのカチャカチャとした音だけが響いていると。
「なぁ、セックス初めてだった?」
「むぐっ!?」
唐突にどストレートに聞かれて、俺はチャーハンを吹き出すところだった。
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