僕のΩは案外可愛い?

らんね

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三章 落ちないΩ

105 お迎えは案外地味目(当社比)

佳澄さんと約束した、連休明けの平日。
 ホテルに行くのに、佳澄さんが家の近くまで香坂を迎えに来てくれるらしい。
 ホテルはここらのエリアの都心部にあって、公共交通機関だとバスと電車を乗り継いでいくことになる。バイクでもそこそこの距離だから、そろそろ暖かくなってきた季節だから汗をかくだろうし。それに一人で有名ホテルに入るのって、僕らみたいな若造には敷居が高いよね。
 そんなわけで、佳澄さんとの待ち合わせにしているのは、表通りの交番前だ。ここを指定したのは純粋にわかりやすいからと、安全面ね。なにせ佳澄さんはお金持ちな人だから、うっかり誘拐事件とか発生したら嫌じゃん?
 その交番前に香坂と見送りの僕が行くと、既に教えらえれた通りの車が止まっていた。

「おぉ~い、怜くん!」

車の横に立って気楽に手を振ってくる佳澄さんだけれど、護衛付きないかにもお金持ちそうな女性に、今日交番勤務の二人組に「何事?」っていう顔で野次馬されている。でも今日の護衛の人数は見た目に少ない方で、車も前に公園イベントで見たのよりは控え目だ。外国の高級車だけれど、少なくともデカくはない、普通に日本の道路事情にマッチした車種だった。
 これは、相当話し合いがされたんだろうな。そして結果佳澄さんが勝利したと。そうだよね、αって究極自分のΩに弱いもんね。押しまくれば最後は言うこと聞いちゃうよね。

「お久ぁ、彼氏くんとはイベントぶりだねぇ」
「お久しぶりです、僕のΩをよろしくお願いします」

見送りの僕は、佳澄さんをガードする護衛の壁越しに挨拶をする。いやね、別に香坂一人で合流してもいいんだろうけれどさ、一応僕からのアピールだ。香坂は僕っていうα持ちのΩだから、そんなに警戒しなくてもいいぞっていうね。なにせ佳澄さんの夫氏は、全方向で威嚇してくるα様だから。

「ちゃんと怜くんを家まで送り届けてあげるから、ご安心めされよ!」

そう言って胸を張る佳澄さんにとって、Ωって今みたいにガチガチに護衛されているものだっていう常識になっているっぽいから、そこは心配していない。

「楽しんでおいでよ」

そして僕は、緊張しているっぽい香坂の頬にチュッとキスをする。

「……っお前ぇ!」
「行ってらっしゃい」

香坂が照れているけれど、人前で自分からキスするのは平気なくせに、僕からキスされるのは恥ずかしくなるって。こういうところって僕のΩは可愛いよね、ホント。

 ~~~side 香坂

前島に見送られて車に乗ったけれど、もう緊張してきた。この車、前に公園で見たのよりは小さめとはいえ、こんな高そうなのに乗ったことねぇよ。

「緊張するよねぇ、私は国産の安物にしてよって言ったんだけれど、これが妥協の限界なんだって」

そんな俺に、佳澄さんが隣から笑いかけてくる。ちなみに、俺と佳澄さんとの間にでっかい熊のぬいぐるみが挟んである。なんか、この車だったらコレが必要なんだと。いいけどな、俺も前島以外の他人と密着するのは苦手だし。

「や、平気っす。俺が買えないレベルの車だし、得してるし。ホテルバイキングなんてモンも、行ったことねぇし」
「確かにぃ、ホテルって縁がある人とない人って、バッキリ分かれるよね」

俺がなんとか説明すると、佳澄さんがウンウンとなる。マジそれな。俺は修学旅行も小中学校だと泊まりは全部昔ながらの旅館だったし、高校はスキーで合宿所だった。だから実はホテルってそもそもが行ったことがない。

「でもなら、こういう初体験系って、運命な彼氏としたかったかな?」

キラキラした目で言われるけれど、なんかこの人って言葉選びがちょいちょい恥ずいっていうか、こっちのメンタルを直球で抉るところがあるんだよな。

「いえ、そういうこだわりはないっていうか、そうだった嬉しいけど、そうでなくても後で一緒に……いや、なに言ってんだ俺は」

言い繕おうとすればするほど、ドツボに嵌っていく感がある。ヤベェ、俺まで釣られて言葉のチョイスがバグってる。そもそもこんな言い訳していることが、前島のことを考えていたって暴露するようなものなのに。

「いいねぇ、初々しくてこっちが照れるぅ」
「勘弁してください」

車の中は冷房が効いているのに、俺は妙に暑くて汗をかいた。
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