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三章 落ちないΩ
106 ひとまず満喫する side 香坂
ホテルまでは車で高速も含めて三十分程度の距離だった。
「はぁ~、スゲェ」
俺は車から降りて、キレイなビルをポカンと見上げている。
到着したのは駅まですぐという立地にある高級ホテルで、最近できたばかりの建物だからどこも真新しくてキレイだ。佳澄さんから「ランチだから服装は普段着で十分だが、気にするなら襟のあるシャツを着てジーパンスニーカーでなければイイ」と言われていたけれど、不安になってきた。
そんな俺の様子を隣で見ていた佳澄さんが、ケラケラと笑いかける。
「ほらほらぁ、ビビる必要ないからシャンとする!」
「俺、この格好で大丈夫ッスか?」
伺う俺を佳澄さんは背中をバシン! と叩いて、それが結構痛かったんで小さく呻く。
「香坂くんは素がいいから、ブランド物を着ていなくたって映えてるって! ね!?」
「不似合いであることはありません」
佳澄さんが同意を求めた護衛である隣の男性は頷く。この人は次期社長の秘書だと自己紹介された。きっと俺への監視も含めているんだろうな。ガチガチにガードされている佳澄さんを見ていると、前島がああいう性格で良かったってマジで思う。
あと一応、俺は今日もインナーにハイネックを着てはいるけれど、チョーカーが見えるように襟元を折って下げている。なにせ佳澄さんは大企業の次期社長夫人だし、俺が妙なスキャンダルのネタになるのはゴメンだ。同伴相手が男でも、Ωと知れたら「なんだ」ってなるだろうし。
「伝統あるホテルも雰囲気あるけど、新しいホテルもいいわね~♪」
佳澄さんは機嫌良さげにそういうと、俺の背中をぐいぐいと押してくる。
そうやって入ったレストランは、ホテルからの出入り口とは別に、レストランだけの来客用の出入り口があるそうだ。ホテルの庭を眺めながら歩けば、その出入り口が見えてきた。すぐそこが駅前の通りなんだが、それが上手く見えなくなっているのか、シャレてんな。
中に入れば、床に敷かれているカーペットとかのフカフカさとかでまたビビるんだけれど、平然としている佳澄さんがいると、それについていけばいいんだから安心でもある。
「怜くん、あっちだって!」
佳澄さんに手招きされるがままに行けば、予約のカードが置いてあるテーブルがあった。そこには俺と佳澄さんの二人が座って、護衛役の人たちは隣のテーブルに座るようだ。それにしても今日は平日だけれど、それでもそこそこ客が入っていて席が埋まっていて、本当に人気があるんだな。
「早速行こ行こ!」
佳澄さんがワクワク顔で料理がこれでもかと並んでいるエリアに向かうのに、俺も続く。
パンをレストランで焼いているそうで、そちらからいい匂いがしてくるけれど、いきなりパンを食べて腹いっぱいにするのはもったいない。あっちは後でだな。
「炭水化物系は、二周目で行こう!」
佳澄さんも考えることは同じで、どこから攻めるかを二人で話し合っていると、スタッフが「オススメはオムレツですよ」と教えてくれた。
「確かに、あのすごい並んでいるのオムレツだね」
佳澄さんに言われてオムレツのコーナーを見れば、大行列の先では目の前で作りたてを提供してくれている。
「我々が代わりに並びましょう」
俺たちは護衛の人の申し出に甘えることにした。同じくオススメらしいローストビーフも目の前で料理人が切り分けてくれていて、それほど混んでいないからこちらは自分たちでゲットする。なにせ、好みの厚さに切ってくれるそうだからな。
それ以外にも大皿から自分たちで取り分ける和洋中の料理を、佳澄さんと二人でああだこうだ言いながら皿に載せていくけれど、こっちだってどれも出来立てだ。どうやら料理がなくなる早さを計算して作っているみたいで、冷めたり温くなったりしているものはない。こういうサービスとか技術が高級ホテルのレストランなんだな、マジですげぇ。
ひとまず一周目はこんなものかというくらいで席に戻ると、オムレツがもう届いている。ソースはトマトソースをリクエストした。
俺は料理を少量ずつ取って、できるだけたくさんの種類を食べる作戦だ。佳澄さんの方は、食べたいものを食べたいだけな作戦らしい。まあ、それも食べ放題だからこそできる食べ方だもんな。普通の食べ放題の店だと、戸山がその食べ方をする。
まずは、オムレツが冷める前に味わいたい。
「んまっ、卵の味が濃い」
「ん~、ホントだ。オススメされるだけあるわぁ」
それからも二人で感想を言い合いながら食べていると、基本早食いな俺の方が早く皿が空になるわけだ。
「私を待たなくていいから、行っておいでよ」
佳澄さんはそう言うけれど、やっぱ外聞っていうのがあるから、次に行くまでのペースは一応考えて、世間話をしながら佳澄さんを待つ。
それから炭水化物の次にデザートまで巡って、二人で食後のお茶を飲んでいたところで、俺はアレについてをやっと思い出す。
「はぁ~、スゲェ」
俺は車から降りて、キレイなビルをポカンと見上げている。
到着したのは駅まですぐという立地にある高級ホテルで、最近できたばかりの建物だからどこも真新しくてキレイだ。佳澄さんから「ランチだから服装は普段着で十分だが、気にするなら襟のあるシャツを着てジーパンスニーカーでなければイイ」と言われていたけれど、不安になってきた。
そんな俺の様子を隣で見ていた佳澄さんが、ケラケラと笑いかける。
「ほらほらぁ、ビビる必要ないからシャンとする!」
「俺、この格好で大丈夫ッスか?」
伺う俺を佳澄さんは背中をバシン! と叩いて、それが結構痛かったんで小さく呻く。
「香坂くんは素がいいから、ブランド物を着ていなくたって映えてるって! ね!?」
「不似合いであることはありません」
佳澄さんが同意を求めた護衛である隣の男性は頷く。この人は次期社長の秘書だと自己紹介された。きっと俺への監視も含めているんだろうな。ガチガチにガードされている佳澄さんを見ていると、前島がああいう性格で良かったってマジで思う。
あと一応、俺は今日もインナーにハイネックを着てはいるけれど、チョーカーが見えるように襟元を折って下げている。なにせ佳澄さんは大企業の次期社長夫人だし、俺が妙なスキャンダルのネタになるのはゴメンだ。同伴相手が男でも、Ωと知れたら「なんだ」ってなるだろうし。
「伝統あるホテルも雰囲気あるけど、新しいホテルもいいわね~♪」
佳澄さんは機嫌良さげにそういうと、俺の背中をぐいぐいと押してくる。
そうやって入ったレストランは、ホテルからの出入り口とは別に、レストランだけの来客用の出入り口があるそうだ。ホテルの庭を眺めながら歩けば、その出入り口が見えてきた。すぐそこが駅前の通りなんだが、それが上手く見えなくなっているのか、シャレてんな。
中に入れば、床に敷かれているカーペットとかのフカフカさとかでまたビビるんだけれど、平然としている佳澄さんがいると、それについていけばいいんだから安心でもある。
「怜くん、あっちだって!」
佳澄さんに手招きされるがままに行けば、予約のカードが置いてあるテーブルがあった。そこには俺と佳澄さんの二人が座って、護衛役の人たちは隣のテーブルに座るようだ。それにしても今日は平日だけれど、それでもそこそこ客が入っていて席が埋まっていて、本当に人気があるんだな。
「早速行こ行こ!」
佳澄さんがワクワク顔で料理がこれでもかと並んでいるエリアに向かうのに、俺も続く。
パンをレストランで焼いているそうで、そちらからいい匂いがしてくるけれど、いきなりパンを食べて腹いっぱいにするのはもったいない。あっちは後でだな。
「炭水化物系は、二周目で行こう!」
佳澄さんも考えることは同じで、どこから攻めるかを二人で話し合っていると、スタッフが「オススメはオムレツですよ」と教えてくれた。
「確かに、あのすごい並んでいるのオムレツだね」
佳澄さんに言われてオムレツのコーナーを見れば、大行列の先では目の前で作りたてを提供してくれている。
「我々が代わりに並びましょう」
俺たちは護衛の人の申し出に甘えることにした。同じくオススメらしいローストビーフも目の前で料理人が切り分けてくれていて、それほど混んでいないからこちらは自分たちでゲットする。なにせ、好みの厚さに切ってくれるそうだからな。
それ以外にも大皿から自分たちで取り分ける和洋中の料理を、佳澄さんと二人でああだこうだ言いながら皿に載せていくけれど、こっちだってどれも出来立てだ。どうやら料理がなくなる早さを計算して作っているみたいで、冷めたり温くなったりしているものはない。こういうサービスとか技術が高級ホテルのレストランなんだな、マジですげぇ。
ひとまず一周目はこんなものかというくらいで席に戻ると、オムレツがもう届いている。ソースはトマトソースをリクエストした。
俺は料理を少量ずつ取って、できるだけたくさんの種類を食べる作戦だ。佳澄さんの方は、食べたいものを食べたいだけな作戦らしい。まあ、それも食べ放題だからこそできる食べ方だもんな。普通の食べ放題の店だと、戸山がその食べ方をする。
まずは、オムレツが冷める前に味わいたい。
「んまっ、卵の味が濃い」
「ん~、ホントだ。オススメされるだけあるわぁ」
それからも二人で感想を言い合いながら食べていると、基本早食いな俺の方が早く皿が空になるわけだ。
「私を待たなくていいから、行っておいでよ」
佳澄さんはそう言うけれど、やっぱ外聞っていうのがあるから、次に行くまでのペースは一応考えて、世間話をしながら佳澄さんを待つ。
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