僕のΩは案外可愛い?

らんね

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二章 前島稔はαである

63 不思議な男、前島稔 後編 side 前島の友人

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 βの僕にはさっぱりわからないけれど、αやΩには「固有のフェロモンの香り」とやらがわかるらしい。けれど今までαだという噂が立たなかった前島にここ最近で一体なにがあったのか、僕には謎だ。
 で、前島に猛攻をしかけているそのΩの娘っていうのが、男を次々と乗り換えているので有名なんだけれど、すごく可愛いからそれでも人気なんだ。前島もまんざらでもないだろうと周囲は思っていたんだけれど、前島本人の反応は全然違った。

「マジでウザい」

そう不満を零して、その娘を徹底的に避けた前島だけれど、彼女の方も大概しつこかった。
 しつこくする理由は、彼女がαをまだ捕まえられていないからだろうな。彼女がいつも侍らしているのは、βばかりだっていう話だ。学内でαだと噂されている生徒が数人いるけれど、それはどれも既に恋人なり婚約者なりがいる。まあそうだよな、将来有望なα様がいつまでもフリーでいるわけがない。
 そんな中で降ってわいたフリーのαが、前島っていうことだ。あれ、けど前島って最近恋人ができたんだったっけ。じゃああの娘、やっぱダメじゃん。
 けどあの娘のせいで、前島がαだということがさらに広まってしまい、「αと知り合いになっておきたい」という連中からの飲み会の誘いが前島に激増するわけだ。傍から見ていると、αであるのにそんなにいいことがあるように見えないのは、僕だけだろうか? ちょっと前島に同情するね。
 ってなわけで、そんな状況が続いていたある時、講義終わりに学食で僕と二人で昼食を食べていたんだけれど。

「一緒してもいい?」

そこへ偶然を装ってやって来て一緒の席に座ろうとするその娘に、いよいよウザさがMAXになった前島が「シッシッ」と犬猫にでもするみたいに手を振った。

「臭いのがうつると僕のΩに嫌がられるから、近付かないでくれない?」

前島と一緒にいることが多い僕は、コイツのこんな冷たい態度は初めて見たっていうくらいのキレっぷりだけれど、堪忍袋の緒が切れたってヤツだろう。

「アンタみたいな芋臭いαに、このアタシが一緒にいてやろうっていうのに!」

その娘がどこまでも上から目線で言い放つけれど、前島はシラけている。

「そういうのマジでウザいから、パスね。芋臭いと思うのなら来ないでよ。それにさぁ、僕のフェロモンは僕のΩのためだけのものだから、アンタには嗅がせたくもないわけ、わかる? そういうわけで、さようなら」

そう言ってくるっと背中を向けて、あとは彼女からなにを言われてもガン無視だ。仕舞いにはキーキーと金切り声を響かせて学食から出て行った彼女を見送って、僕は恐る恐る前島に話しかける。

「おい、大丈夫か? あの人にあんな態度でさ、後で怖くないか?」

こんなに強烈な振り方ができるヤツだとは思わなかった。けれどあの娘を見ていた前島の雰囲気に混じる威圧感みたいなのは、「ああ、αなんだ」って思えた。

「へーきへーき、どうせチヤホヤしてもらえないんなら、そのうち興味無くすって」

あっさり言ってのけた前島に、僕は目を見開いてしまう。

「……お前、マジでαなのか?」

そして今更ながらに改めて確認してしまった僕に、前島は先程までの怒りを引っ込めてから「一応ね」と返してきた。

「別に、自分から言いふらすことないじゃん? クッソ、朝までヤッた時の残り香のせいだろうけど、あんなの引っかけるとか最悪。お呼びじゃない上に、臭いの移ってないだろうな? アレのせいでケンカとかマジで勘弁」

前島の口からぼかされているような明け透けなような言葉が飛び出して、僕は若干顔を赤らめる。

「じゃあ、最近できた恋人って、Ω?」
「そーいうこと。あ、起きた!」

前島がどうやら起きる時間が遅い恋人からのメッセージを見ているらしくて、僕への返事はおざなりで顔が緩んでいる。前島のこういう顔は、ここ最近になって見るようになった。いつもつまらなそうにしているいのがデフォなのに、コイツって笑うんだな。

「なあ、どんな娘?」

僕が好奇心で聞くのに、けれど前島はきょとんとする。

「そんなん、お前も知ってるじゃん」
「は?」

僕が知っているって、前島の恋人のΩを、いつ?

「俺、ちょい図書館行ってくるわ」
「……おぉ?」

食べ終わったトレイを持ってサッサと行ってしまうけれど、いやいや、マジでわからん! 前島、自己完結していないで、頼むから僕に説明してくれ!
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