星空の下で君を待つ

星乃ゆづき

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第2話

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 妖精と会った翌日。
 私はすぐに異変に気付いた。

(なんだろう?)

 村の中が騒がしい。
 いつもの活気溢れた朝とは違う。
 
 隣に住むトリンスおばさんが家から出てくる。
 いつも通り...のはずだった。

「アリス、おはよう。」

「おはよう、トリンスさん。」

 トリンスおばさんが、小さくため息をついた。

「なんかありましたか?」

「いえ、何もないわよ。」

 そう言って微笑むが、私は違和感を覚えた。
 小さな声が私に聞こえてくる。

『旦那が具合悪そうで、薬草をとりに行きたいのだけど......
 あの真っ暗な森の中に入るのは不安だわ。』

「あの、今......何か言いました?」

「え? 何も言ってないわよ。」

 と怪訝な顔をされてしまう。
 でも、私が確かに聞いた。
 トリンスおばさんの声を。

(どういうことだろう?)

「おばさん、旦那さんの具合どう?」

「え? あぁ、まぁ......」

「何か足りないものがあったら言って。
 私が取りに行くから。」

 驚いた顔で私を見ている。

「アリス......あんたがそんなこと言うなんて。
 どうかした?」

 おばさんから聞こえたのよ、とも言えず、
 私は言葉を選びながら口を開いた。

「いつもみんなに心配かけてるから、
 たまにはみんなの力になりたいなって。」

「アリス......あんたって子は......」

 トリンスおばさんが、涙を拭っている。
 そんなに感動されるなんて思ってもみなかったので、驚いた。

「薬草、取ってこようか?」

「いいのかい?」

「いいよ、いいよ。いつもお世話になってるし。」

 私は井戸から水を汲み終えると、家に戻って支度をした。
 短剣を持って、動きやすい服に着替える。

 森は危険だ。
 私が倒れていた草原より、はるか遠くにある森。
 木が生い茂っていて、日が入らない。
 足が悪いトリンスおばさんには、危険だ。

 馬に乗り、私は森に向かった。
 最初転生した時は乗れなかった馬だが、何度も練習して乗れるようになった。
 慣れって怖い。

 しかし、心の声が聞こえた、とは、一体どういうことだろう?
 今までの転生人生の中では、なかったことだ。
 やっぱり、昨日会った妖精がくれた力なのだろうか。

(今回の人生は、なんだか違う気がする......)

 トリンスおばさんに薬草を渡し、私は村の中央にある噴水へと向かった。
 噴水の周りには、たくさんの出店が並んでいる。
 記憶に頼れば、転生した翌日、私はここで買い物をしていたはず。
 そして、走り回る子どもがぶつかり、私は食材を落としてダメにするのだ。
 今日もそんな日が来るのだろうか。

 噴水に着くと、いつもとは違って騒がしかった。
 活気が溢れているのとは違う。
 みんなの不安の声が漏れ出ている。

(私、みんなの不安の声が聞こえるようになっちゃったんだ......)

 妖精がくれた力......なのだろうか。

(今回の人生は、人のために生きろということなの?)
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