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第3章 【記憶の結晶】
第3章5 【契約龍】
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「汝、我ニ力ヲ求メルカ。ナラバ力ヲ示セ」
龍王がそう告げた途端、辺りにとてつもないであろう冷気が満ち溢れる。
(スゲーなお嬢。あれを喰らったら普通の人間なら寒さで震え始めるはずなんだがな......)
「まるで、私が普通じゃないみたいな言い方ですね」
(龍王従えてる時点で普通じゃないと思うがな)
それに関しては自分でも自覚している。
それよりも、なぜ、今ここでもう一体の龍王、『アマツ』と対峙しているのか。時は10分ほど前に遡る。
ミルに連れられ、氷幻山にやってきたはいいのだが、近くで見ればハッキリとわかる広大さに、これを登らなければならないのか......と思った。
案の定、アルテミスは登るのをあの手この手で逃れようとしたが、ミルに半ば強引に連れられ登山開始となった。
道中までは普通の登山道だったが、登り始めて10分程経ったところで何かが変わった。
『力求メル者、我姿現ス』
突然、そんな声がしたかと思うと、気がつけば恐らくは山頂であろう場所に来ていた。
そして、今に至る。
「これって......戦わないとダメってことかな?」
(当たり前だろ。昔はみんなそうやって凍死させられてたさ)
殺されるENDが待っているのか......しかも、凍死とは......やけに現実味のある殺され方だ。
(1つ、言っておくことがあるんだが...)
「まだ、何かあるんですか......」
正直、何となく言いたいことがわかるから言わないで欲しいのだが......
(勝つか、負けるかをするまでここからは出られねえぞ)
やっぱり......としか言いようがない。
「ちなみに、負けというのは......」
(もちろん死に決まってるな)
最悪......というか最悪ではなくとも死ぬ可能性の方が高いとは......
「長話ハ終ワッタカ?炎雷龍王」
突然、アマツがそう問いかけてくる。
(なんだ、やっぱ聞こえてんのか)
「我ノ力ヲ忘レタカ?炎雷龍王」
(忘れるわけねえだろ。そんな厄介極まりない能力)
「どういうこと?」
話が見えないのでとりあえず、聞いてみる。というか、みんな私を置いて勝手に話を進めないで欲しい。
(あいつはな。他人の心が読めるんだよ)
「つまり......考えてること筒抜けってことですか?」
(まあ、そういうことになるな。お嬢とは最悪に相性が悪いだろうな)
相手が考えてることが分かる。それは、相手の行動の1歩先を常に歩き続けているもので......なるほど、確かに私とは相性が悪そうだ。
(てなわけで、俺と代わった方が良いだろ?)
「それもそうですね。じゃあ、お願いします」
そう言い、ジークと切り替わる。
「おっしゃァ!んじゃ1000年前のーーっうお!」
切り替わって、一言気合を入れようとした途端、物凄い氷柱がこちらを襲ってくる。
「ッ......危ねぇじゃねえか!決めゼリフくらい最後までーーってうお!」
情けない叫び声をまたあげてしまった。
「戦イハモウ始マッテイル。貴様ノ言葉ヲ一々待ッテイラレルカ」
相変わらずの感情の篭もっていない(しかも、棒読み感が半端ない)声でアマツがそう言う。
「汝、貴様ト契約龍ノ力ヲ見定メル」
「それ言ってから普通始めるだろ!」
「貴様ノ普通ト我ノ普通ヲ同ジニスルナ」
「チッ......」
なんやかんやは言うものの、ネイの体はなぜか寒さをあまり受け付けない。むしろ、今の状態なら涼しいくらいだ。寒さで動けない......ということは無いだろう。ただ、1つとして残る問題は......
「知ッテイルダロウガ......」
「我は貴様の心を読める......だろ?そんくらい分かってらぁ!」
攻撃を避けつつも、たった一瞬の隙を逃さず、一撃を打ち込む。
考えて行動することが出来ない以上、本能で戦うしかない。
「相変ワラズダナ、ジーク」
「あぁ?」
突然、何を言い出すのかと思いきや...
「氷鉄牙」
アマツがずっと立っていた位置を離れ、こちらに噛みつき攻撃をしてくる。
ーーやべぇ。あれに当たったらーー
死には......しないだろうが、確実に凍死寸前にまでされてしまう。
「輝炎弾!」
凄まじい輝きを放つ爆炎を生み出し、アマツの攻撃を相殺する。
「案外、あんな程度で相殺出来んだなぁ」
相殺することが出来たとはいえ、油断はできない。次の攻撃に備えなければ......
「海王剣」
なんか、どっかで聞いたことがあるような技名を吐きながら、即製品の剣(というよりはレイピアに近い)で横一文字に攻撃してくる。
「その攻撃、見切ったァ!」
剣を構え、真正面から受け止める体勢に入る。
所詮は水(氷)でできているものなんだから、蒸発させてその上から攻撃すればいい、とは、ついさっきネイから提案されたものだ。
「我ノ力ヲ忘レタカ?」
狙い通り、剣を蒸発させたまでは良かったが、すぐ目の前にアマツが大口を開けて迫ってきていた。
「ヤベッ......」
流石に避けきれない。
次に瞬きをした瞬間、アマツが後ろの方に吹っ飛んでいた。
「ナゼ......ダ?」
アマツが見ることの出来なかった仰天顔でそう言う。
「なんだ、お嬢。そういうことなら早く言えよ」
(言ったらあいつにバレちゃうでしょ?)
「それもそうだな。にしても、攻略法見つけんの早すぎだろ」
「何ヲシタ?アレハ避ケレルモノデハナイ」
アマツが戸惑いの声を上げる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一方その頃。
「あの......ネイ......大丈夫ですかね?」
アルテミスがミルにそう問い掛ける。
「分からん」
「分からないって......」
「あいつに導かれたものは死ぬか契約を結ぶかのどちらかだ」
「?ってことは......」
「ただし、あいつに力で勝ったらの話だ」
「そ、そんなぁ......」
アルテミスはネイが消えた瞬間からずっとこの調子だ。全く、何度同じ質問をすれば懲りるのか。
ここは、1つ、話でも変えてみるか...
「ところで、ラクは元気にやってるか?神聖術士になったとか、ならなかったとか聞いたが」
「あぁ......それは......」
アルテミスが途端に黙り込んで暗い顔になる。
アルテミスのことだから、てっきり「それどっちですか」とか言ってきそうだったのに。
「ラクは......死んでしまいました」
「すまない、もう一度言ってくれ」
「ですから、死んでしまいました......」
死んだ。冗談でそんなことが言えるわけない。
「どういうことだ。詳しく話せ」
「はい......」
話を切り替える話題が不味かったとは思ったが、とても、聞き捨てならない話だった。
「あのバカ娘は......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「モウ1度問ウ、何ヲシタ?」
アマツが下手くそな言葉で問いかけてくる。
「何をしたかって?簡単なことだ」
ジークはそう答える。
アマツのこういった顔はもう二度と見られないかもしれない。今のうちに沢山拝んとかないと。
それはそうと、ジークは聞かれたからと言う訳でもないが、アマツに勝った気がするので殺られる前に色々と話すボスのように種明かしをする。
「お前、まだ気づかねえのか?」
「何ヲダ」
「分からねえなら教えてやるよ」
ここで話すと殺られるのがオチだが、そんな展開はNO THANK YOU.ここで勝てば最高にかっこいい展開に変わる。
「ズバリ......」
「あなたは心を読めても、更にその奥、意識下での思惑は読み取れない。だから、私がジークと切り替わっている時に何を考えてもあなたには分からないということです」
ネイに切り替えられてしまった...
(おい!何すんだよお嬢!)
「まるで、自分で考えたみたいに言われるのがちょっと癪だっただけです」
ネイは悪びれもせず、そう言う。
(だからって、今のは俺様がカッコつける場面だろうが!)
「あのままフラグ建築したら殺られるので辞めてください、そう言えば結構ですか?」
(チッ......)
そのフラグを崩すのがカッコイイというのに、なぜ分からないのだ。
「バカナ、ソンナ方法デ我ガヤラレルワケナド......」
まあ、そんなことを考えても、アマツの戸惑いに満ちた顔を見れるだけでも十分か......
(おい、お嬢。今が勝機だ)
「分かってますよ」
そうして、再びネイと切り替わる。
「アマツ!お前はもう詰みだ!このまま降参することをオススメするぜ?」
ジークはそうやって挑発する。
「図ニ乗ルナジークフリード。貴様ガ我ニ勝テタコトナドアルマイ」
アマツの目がハッキリとした物に変わり、こちらを睨みつけてくる。
「全部ドローだったじゃねえか......」
実際、引き分けになることでどれだけ人間が騒いだかは面白い話だったが、今回ばかりは引き分けで終わる訳にはいかない。ネイの知恵を借りることにはなるが、この上ない勝機、逃す訳にはいかない。
「氷魔・傲慢」
と思った矢先、アマツの『七元氷魔』の内の一つがやってくる。
(なんですか、あれ!)
流石の威力にネイが中から叫び声を上げる。
「あぁ、ありゃぁな『七元氷魔』つって、アマツの切り札みたいなもんだよ」
(7つもあるんですか......)
「まあ、全部人間の大罪から取ったもんだから対策もしやすい。つか、あれ使ってきたってことはいよいよピンチだって自分で言ってるようなもんだぜ」
(そうなんですか?)
「そうだ。ああなりゃぁしっかりと隙を見て突けば勝てるぜ。ってなわけでお嬢よろしくな」
(はいはい)
「なんだ、そのやる気のねえ返事は」
(別に......なんでもありません)
「イツマデ我ヲ無視シ続ケル?」
こうやってネイと会話している間もアマツは攻撃をし続けてくる。最も、アマツが今冷静ではないので簡単に避けれる。
「氷魔・怠惰」
流石に少し冷静になってきたか、こちらの動きを封じ込めようとするが、それも経験積みの技。というか、七元氷魔は全てこの身で(はないが)受けたことがあるので、全て対策ができる。
「怠惰は俺に効かねえって1000年前に身をもって体験しなかったか?」
「チッ」
今、初めてアマツの舌打ちを聞いた気がする。今日はアマツの新しい一面を見れて何より愉快だ。
「さて、そろそろ終わりにしねえとな」
いつまでも逃げ続ける訳にはいかない。どこかタイミングを作り、トドメを刺さなければ......
「七元氷魔・大罪ノ剣」
「来た!」
アマツの究極奥義『七元氷魔・大罪ノ剣』
それは喰らえば、例え龍の状態であったジークでも受け切ることは出来ない。
しかし、それをどうにかするのがネイの仕事。
「お嬢、来たぞ」
(来たからなんなんです?)
「は!?何ってあの大技が来たらお嬢がどうにかするって......」
(冗談ですよ。ジークでも慌てるんですね。ふふ)
今、ネイの性格がすごく悪く見えてしまった。
「チッ、そんな余計な悪戯してねえでさっさとしろ!」
(はいはい。分かってますよー)
なんなんだ。この態度は。あの人間共の前ではすごく臆病な感じなのに、ジークとだけ対面している時はすごくお調子者な感じになっている。
(なんで、こんなやつと契約してんだろうなぁ)
「今なんか言いました?」
(いんや、何も)
「そうですか」
(んなことよりも、もう目の前まで迫ってきてるぞ)
「分かってますよ」
全く、あの大技をどうやって回避するというのだ。ネイに任せておくくらいなら、ジークの方が余っ程逃げ回れる。
一体、何をしようというのだ。
「フィア」
(はぁぁぁぁ!?)
ネイが詠唱したのは、聞き間違いでなければ初級魔法の1つである『フィア』だった。
(って、ありゃ?)
あんな大技を初級魔法で打ち破ろうとした。それは不可能だと思っていた。しかし、今、ネイの目から見える景色ではあの剣が全て消えてしまっている。
それを感じたのはジークだけではないらしく、アマツもネイの目前まで来て立ち尽くしていた。
「今回の勝負、私の勝ちです。アマツさん」
なんとも呆気ない方法で決着がついた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「まさか、あんな方法で破れるとはな......」
「まあ、ジークが説明してくれなきゃ思いつかなかった方法ですが......」
「我ノ技ニ欠点ガアルトハ......」
時はネイがアマツを倒してから数十分経った頃。
未だに理解ができないジークとアマツに『七元氷魔・大罪の剣』の弱点を教えてみたのだが、なぜかこの2人(というより2体)は一向に理解できず、数十分無駄にしてしまった。
あの技はジークの言うところによると、『標的に当たるまで無限に追い続ける技』だったらしい。また、『魔法とかで反撃しても強い魔法であればあるほど威力を増して攻撃してくる』ということでもある。
ならば、弱すぎる魔法で打ち返せばどうなるのか。威力はそのままでやってくる?ここでまたジークの解説『反撃した時はその威力に合わせて大罪の剣の威力も変わる。まあ、どんな初期魔法でやろうが威力は死を迎えるほどからスタートするんだが......』ということ。
なら、フィアでやっても同じなのだが、ネイの場合は少し違う。
フィアの威力を極限まで弱くして、大罪の剣に向けて攻撃する。
結果は見事に大罪の剣が誤反応して消失、ネイの勝ちとなった。
ジークは理解出来た風を装っているが、アマツは最初の説明で理解出来ていたらしい。ただ、認めたくないという気持ちが勝り、何度もわかりにくい言葉で質問してきたが......
「トモアレ負ケハ負ケダ。汝ノ願イヲ聞キ入レヨウ」
どうやら、やっと認めた(というより呑み込んだ)らしい。これで契約を結ぶことが......
「おいお嬢。本当にこんなやつと契約を結ぶ気か?」
そう思っていた矢先、ジークがそう問いかけてくる。
「当たり前ですよ。でなきゃ、なんのためにここに来たんですか......」
私は呆れも混じえた口調でそう言い返す。
「んなこたぁ言ったって、こいつは記憶なんか復元させてくれねえぞ。つか、出来ねえぞ?」
「そんなの分かってますし、そもそもミルさんから聞いたアマツの話を頼りに来たんですから、記憶が1発で戻って終わり、なんて考えてませんよ。というか、どんだけ契約結ばせたくないんですか!」
「馬鹿野郎!こんなやつと同じ空間に居られるわけねえだろ!」
「なら、ジークはここに残ってもらって結構ですよ」
「んだと?」
2人のやり取りがヒートアップして行き、普通に殴り合いが起きそうな予感がする。
「ヤメンカ汝ラ。ヤカマシイゾ」
アマツが迷惑そうな顔でそう言う。
「ーー改メテ問オウ。汝、貴様ノ願イヲ言エ、ドンナ望ミデモ叶エテヤロウ。貴様ガ払ウ代償ハタダ1ツ。貴様ノ『時間』ダ」
「時間だァ!?」
ジークのうるさい声が響き渡る。
「どうしたんですか、そんな大声出して。時間といっても......どういうことです?」
ここまで来て、『時間』という要求に疑問が生まれる。
「ーーつまりだな、俺と違ってこいつはフリーでお嬢と入れ替われるってことだよ。クソめんどくせぇ......」
「あぁ、そういうことですか。なら、大丈夫ですね」
「ちょっと待てーーーーーー!」
ジークがまたしてもうるさい(しかも、さっきよりも大きい)声を出す。
「なんですか、まだ不満でもあるというんですか......」
「不満も何も、お嬢、そんなあっさり快諾していいのかよ!?」
「ジークと違ってアマツは冷静で短気じゃないので大丈夫ですよ」
「え、えぇ......」
ジークはもう何も言い返す気が出なくなったらしい。では、静かになったところで......
「ーー私の望みは記憶を取り戻すこと。そのためにあなたの力を貸して欲しい」
「承諾シタ。今ヨリ我ハ汝改メネイノ契約龍トナル」
「よろしくお願いします。あ、それと......」
「マダ何カアルノカ?」
「もう1つお願いがあるんです。それはーーーーーー」
「承諾シタ。ソノ望ミモ守ッテヤロウ」
そう言うと同時に、アマツの姿が消えてなくなる。代わりに先程までアマツがいた位置に水色のビー玉サイズの鉱石が残る。
「これは......?」
「そいつは契約者と契約龍を繋ぐ『証』みたいなもんだ。ほら、お嬢が持ってる剣にも同じようなのが付いてるだろ」
確かに、私の剣には赤色の鉱石がはめ込められている。
「5つ枠があるのか......」
はめれそうな穴が5つ。ジークとアマツで2つ分埋まるから、後3つ枠が空くことになる。まさかとは思うが、後3体と契約することになるのでは......
「まあ、いっか」
そうなればそうなった時にでも考えればいい。それはそうと、
「どうやって下山するの?」
「さあな。アマツの野郎にでも聞いてみたらどうだ」
「そっか。アマツ」
ジークの提案通りにアマツを呼ぶ。
「あれ?アーマーツ」
何故か返答が帰ってこない。
「ちょっと待ってろお嬢」
そう言い、ジークが幻影を消して中に戻る。
(こりゃダメだ。完全に寝てるぜ)
「嘘でしょ......」
(まあ、頑張って1人で下山しな。生憎俺も疲れたんで寝るからな)
「えぇ......」
龍王がそう告げた途端、辺りにとてつもないであろう冷気が満ち溢れる。
(スゲーなお嬢。あれを喰らったら普通の人間なら寒さで震え始めるはずなんだがな......)
「まるで、私が普通じゃないみたいな言い方ですね」
(龍王従えてる時点で普通じゃないと思うがな)
それに関しては自分でも自覚している。
それよりも、なぜ、今ここでもう一体の龍王、『アマツ』と対峙しているのか。時は10分ほど前に遡る。
ミルに連れられ、氷幻山にやってきたはいいのだが、近くで見ればハッキリとわかる広大さに、これを登らなければならないのか......と思った。
案の定、アルテミスは登るのをあの手この手で逃れようとしたが、ミルに半ば強引に連れられ登山開始となった。
道中までは普通の登山道だったが、登り始めて10分程経ったところで何かが変わった。
『力求メル者、我姿現ス』
突然、そんな声がしたかと思うと、気がつけば恐らくは山頂であろう場所に来ていた。
そして、今に至る。
「これって......戦わないとダメってことかな?」
(当たり前だろ。昔はみんなそうやって凍死させられてたさ)
殺されるENDが待っているのか......しかも、凍死とは......やけに現実味のある殺され方だ。
(1つ、言っておくことがあるんだが...)
「まだ、何かあるんですか......」
正直、何となく言いたいことがわかるから言わないで欲しいのだが......
(勝つか、負けるかをするまでここからは出られねえぞ)
やっぱり......としか言いようがない。
「ちなみに、負けというのは......」
(もちろん死に決まってるな)
最悪......というか最悪ではなくとも死ぬ可能性の方が高いとは......
「長話ハ終ワッタカ?炎雷龍王」
突然、アマツがそう問いかけてくる。
(なんだ、やっぱ聞こえてんのか)
「我ノ力ヲ忘レタカ?炎雷龍王」
(忘れるわけねえだろ。そんな厄介極まりない能力)
「どういうこと?」
話が見えないのでとりあえず、聞いてみる。というか、みんな私を置いて勝手に話を進めないで欲しい。
(あいつはな。他人の心が読めるんだよ)
「つまり......考えてること筒抜けってことですか?」
(まあ、そういうことになるな。お嬢とは最悪に相性が悪いだろうな)
相手が考えてることが分かる。それは、相手の行動の1歩先を常に歩き続けているもので......なるほど、確かに私とは相性が悪そうだ。
(てなわけで、俺と代わった方が良いだろ?)
「それもそうですね。じゃあ、お願いします」
そう言い、ジークと切り替わる。
「おっしゃァ!んじゃ1000年前のーーっうお!」
切り替わって、一言気合を入れようとした途端、物凄い氷柱がこちらを襲ってくる。
「ッ......危ねぇじゃねえか!決めゼリフくらい最後までーーってうお!」
情けない叫び声をまたあげてしまった。
「戦イハモウ始マッテイル。貴様ノ言葉ヲ一々待ッテイラレルカ」
相変わらずの感情の篭もっていない(しかも、棒読み感が半端ない)声でアマツがそう言う。
「汝、貴様ト契約龍ノ力ヲ見定メル」
「それ言ってから普通始めるだろ!」
「貴様ノ普通ト我ノ普通ヲ同ジニスルナ」
「チッ......」
なんやかんやは言うものの、ネイの体はなぜか寒さをあまり受け付けない。むしろ、今の状態なら涼しいくらいだ。寒さで動けない......ということは無いだろう。ただ、1つとして残る問題は......
「知ッテイルダロウガ......」
「我は貴様の心を読める......だろ?そんくらい分かってらぁ!」
攻撃を避けつつも、たった一瞬の隙を逃さず、一撃を打ち込む。
考えて行動することが出来ない以上、本能で戦うしかない。
「相変ワラズダナ、ジーク」
「あぁ?」
突然、何を言い出すのかと思いきや...
「氷鉄牙」
アマツがずっと立っていた位置を離れ、こちらに噛みつき攻撃をしてくる。
ーーやべぇ。あれに当たったらーー
死には......しないだろうが、確実に凍死寸前にまでされてしまう。
「輝炎弾!」
凄まじい輝きを放つ爆炎を生み出し、アマツの攻撃を相殺する。
「案外、あんな程度で相殺出来んだなぁ」
相殺することが出来たとはいえ、油断はできない。次の攻撃に備えなければ......
「海王剣」
なんか、どっかで聞いたことがあるような技名を吐きながら、即製品の剣(というよりはレイピアに近い)で横一文字に攻撃してくる。
「その攻撃、見切ったァ!」
剣を構え、真正面から受け止める体勢に入る。
所詮は水(氷)でできているものなんだから、蒸発させてその上から攻撃すればいい、とは、ついさっきネイから提案されたものだ。
「我ノ力ヲ忘レタカ?」
狙い通り、剣を蒸発させたまでは良かったが、すぐ目の前にアマツが大口を開けて迫ってきていた。
「ヤベッ......」
流石に避けきれない。
次に瞬きをした瞬間、アマツが後ろの方に吹っ飛んでいた。
「ナゼ......ダ?」
アマツが見ることの出来なかった仰天顔でそう言う。
「なんだ、お嬢。そういうことなら早く言えよ」
(言ったらあいつにバレちゃうでしょ?)
「それもそうだな。にしても、攻略法見つけんの早すぎだろ」
「何ヲシタ?アレハ避ケレルモノデハナイ」
アマツが戸惑いの声を上げる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一方その頃。
「あの......ネイ......大丈夫ですかね?」
アルテミスがミルにそう問い掛ける。
「分からん」
「分からないって......」
「あいつに導かれたものは死ぬか契約を結ぶかのどちらかだ」
「?ってことは......」
「ただし、あいつに力で勝ったらの話だ」
「そ、そんなぁ......」
アルテミスはネイが消えた瞬間からずっとこの調子だ。全く、何度同じ質問をすれば懲りるのか。
ここは、1つ、話でも変えてみるか...
「ところで、ラクは元気にやってるか?神聖術士になったとか、ならなかったとか聞いたが」
「あぁ......それは......」
アルテミスが途端に黙り込んで暗い顔になる。
アルテミスのことだから、てっきり「それどっちですか」とか言ってきそうだったのに。
「ラクは......死んでしまいました」
「すまない、もう一度言ってくれ」
「ですから、死んでしまいました......」
死んだ。冗談でそんなことが言えるわけない。
「どういうことだ。詳しく話せ」
「はい......」
話を切り替える話題が不味かったとは思ったが、とても、聞き捨てならない話だった。
「あのバカ娘は......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「モウ1度問ウ、何ヲシタ?」
アマツが下手くそな言葉で問いかけてくる。
「何をしたかって?簡単なことだ」
ジークはそう答える。
アマツのこういった顔はもう二度と見られないかもしれない。今のうちに沢山拝んとかないと。
それはそうと、ジークは聞かれたからと言う訳でもないが、アマツに勝った気がするので殺られる前に色々と話すボスのように種明かしをする。
「お前、まだ気づかねえのか?」
「何ヲダ」
「分からねえなら教えてやるよ」
ここで話すと殺られるのがオチだが、そんな展開はNO THANK YOU.ここで勝てば最高にかっこいい展開に変わる。
「ズバリ......」
「あなたは心を読めても、更にその奥、意識下での思惑は読み取れない。だから、私がジークと切り替わっている時に何を考えてもあなたには分からないということです」
ネイに切り替えられてしまった...
(おい!何すんだよお嬢!)
「まるで、自分で考えたみたいに言われるのがちょっと癪だっただけです」
ネイは悪びれもせず、そう言う。
(だからって、今のは俺様がカッコつける場面だろうが!)
「あのままフラグ建築したら殺られるので辞めてください、そう言えば結構ですか?」
(チッ......)
そのフラグを崩すのがカッコイイというのに、なぜ分からないのだ。
「バカナ、ソンナ方法デ我ガヤラレルワケナド......」
まあ、そんなことを考えても、アマツの戸惑いに満ちた顔を見れるだけでも十分か......
(おい、お嬢。今が勝機だ)
「分かってますよ」
そうして、再びネイと切り替わる。
「アマツ!お前はもう詰みだ!このまま降参することをオススメするぜ?」
ジークはそうやって挑発する。
「図ニ乗ルナジークフリード。貴様ガ我ニ勝テタコトナドアルマイ」
アマツの目がハッキリとした物に変わり、こちらを睨みつけてくる。
「全部ドローだったじゃねえか......」
実際、引き分けになることでどれだけ人間が騒いだかは面白い話だったが、今回ばかりは引き分けで終わる訳にはいかない。ネイの知恵を借りることにはなるが、この上ない勝機、逃す訳にはいかない。
「氷魔・傲慢」
と思った矢先、アマツの『七元氷魔』の内の一つがやってくる。
(なんですか、あれ!)
流石の威力にネイが中から叫び声を上げる。
「あぁ、ありゃぁな『七元氷魔』つって、アマツの切り札みたいなもんだよ」
(7つもあるんですか......)
「まあ、全部人間の大罪から取ったもんだから対策もしやすい。つか、あれ使ってきたってことはいよいよピンチだって自分で言ってるようなもんだぜ」
(そうなんですか?)
「そうだ。ああなりゃぁしっかりと隙を見て突けば勝てるぜ。ってなわけでお嬢よろしくな」
(はいはい)
「なんだ、そのやる気のねえ返事は」
(別に......なんでもありません)
「イツマデ我ヲ無視シ続ケル?」
こうやってネイと会話している間もアマツは攻撃をし続けてくる。最も、アマツが今冷静ではないので簡単に避けれる。
「氷魔・怠惰」
流石に少し冷静になってきたか、こちらの動きを封じ込めようとするが、それも経験積みの技。というか、七元氷魔は全てこの身で(はないが)受けたことがあるので、全て対策ができる。
「怠惰は俺に効かねえって1000年前に身をもって体験しなかったか?」
「チッ」
今、初めてアマツの舌打ちを聞いた気がする。今日はアマツの新しい一面を見れて何より愉快だ。
「さて、そろそろ終わりにしねえとな」
いつまでも逃げ続ける訳にはいかない。どこかタイミングを作り、トドメを刺さなければ......
「七元氷魔・大罪ノ剣」
「来た!」
アマツの究極奥義『七元氷魔・大罪ノ剣』
それは喰らえば、例え龍の状態であったジークでも受け切ることは出来ない。
しかし、それをどうにかするのがネイの仕事。
「お嬢、来たぞ」
(来たからなんなんです?)
「は!?何ってあの大技が来たらお嬢がどうにかするって......」
(冗談ですよ。ジークでも慌てるんですね。ふふ)
今、ネイの性格がすごく悪く見えてしまった。
「チッ、そんな余計な悪戯してねえでさっさとしろ!」
(はいはい。分かってますよー)
なんなんだ。この態度は。あの人間共の前ではすごく臆病な感じなのに、ジークとだけ対面している時はすごくお調子者な感じになっている。
(なんで、こんなやつと契約してんだろうなぁ)
「今なんか言いました?」
(いんや、何も)
「そうですか」
(んなことよりも、もう目の前まで迫ってきてるぞ)
「分かってますよ」
全く、あの大技をどうやって回避するというのだ。ネイに任せておくくらいなら、ジークの方が余っ程逃げ回れる。
一体、何をしようというのだ。
「フィア」
(はぁぁぁぁ!?)
ネイが詠唱したのは、聞き間違いでなければ初級魔法の1つである『フィア』だった。
(って、ありゃ?)
あんな大技を初級魔法で打ち破ろうとした。それは不可能だと思っていた。しかし、今、ネイの目から見える景色ではあの剣が全て消えてしまっている。
それを感じたのはジークだけではないらしく、アマツもネイの目前まで来て立ち尽くしていた。
「今回の勝負、私の勝ちです。アマツさん」
なんとも呆気ない方法で決着がついた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「まさか、あんな方法で破れるとはな......」
「まあ、ジークが説明してくれなきゃ思いつかなかった方法ですが......」
「我ノ技ニ欠点ガアルトハ......」
時はネイがアマツを倒してから数十分経った頃。
未だに理解ができないジークとアマツに『七元氷魔・大罪の剣』の弱点を教えてみたのだが、なぜかこの2人(というより2体)は一向に理解できず、数十分無駄にしてしまった。
あの技はジークの言うところによると、『標的に当たるまで無限に追い続ける技』だったらしい。また、『魔法とかで反撃しても強い魔法であればあるほど威力を増して攻撃してくる』ということでもある。
ならば、弱すぎる魔法で打ち返せばどうなるのか。威力はそのままでやってくる?ここでまたジークの解説『反撃した時はその威力に合わせて大罪の剣の威力も変わる。まあ、どんな初期魔法でやろうが威力は死を迎えるほどからスタートするんだが......』ということ。
なら、フィアでやっても同じなのだが、ネイの場合は少し違う。
フィアの威力を極限まで弱くして、大罪の剣に向けて攻撃する。
結果は見事に大罪の剣が誤反応して消失、ネイの勝ちとなった。
ジークは理解出来た風を装っているが、アマツは最初の説明で理解出来ていたらしい。ただ、認めたくないという気持ちが勝り、何度もわかりにくい言葉で質問してきたが......
「トモアレ負ケハ負ケダ。汝ノ願イヲ聞キ入レヨウ」
どうやら、やっと認めた(というより呑み込んだ)らしい。これで契約を結ぶことが......
「おいお嬢。本当にこんなやつと契約を結ぶ気か?」
そう思っていた矢先、ジークがそう問いかけてくる。
「当たり前ですよ。でなきゃ、なんのためにここに来たんですか......」
私は呆れも混じえた口調でそう言い返す。
「んなこたぁ言ったって、こいつは記憶なんか復元させてくれねえぞ。つか、出来ねえぞ?」
「そんなの分かってますし、そもそもミルさんから聞いたアマツの話を頼りに来たんですから、記憶が1発で戻って終わり、なんて考えてませんよ。というか、どんだけ契約結ばせたくないんですか!」
「馬鹿野郎!こんなやつと同じ空間に居られるわけねえだろ!」
「なら、ジークはここに残ってもらって結構ですよ」
「んだと?」
2人のやり取りがヒートアップして行き、普通に殴り合いが起きそうな予感がする。
「ヤメンカ汝ラ。ヤカマシイゾ」
アマツが迷惑そうな顔でそう言う。
「ーー改メテ問オウ。汝、貴様ノ願イヲ言エ、ドンナ望ミデモ叶エテヤロウ。貴様ガ払ウ代償ハタダ1ツ。貴様ノ『時間』ダ」
「時間だァ!?」
ジークのうるさい声が響き渡る。
「どうしたんですか、そんな大声出して。時間といっても......どういうことです?」
ここまで来て、『時間』という要求に疑問が生まれる。
「ーーつまりだな、俺と違ってこいつはフリーでお嬢と入れ替われるってことだよ。クソめんどくせぇ......」
「あぁ、そういうことですか。なら、大丈夫ですね」
「ちょっと待てーーーーーー!」
ジークがまたしてもうるさい(しかも、さっきよりも大きい)声を出す。
「なんですか、まだ不満でもあるというんですか......」
「不満も何も、お嬢、そんなあっさり快諾していいのかよ!?」
「ジークと違ってアマツは冷静で短気じゃないので大丈夫ですよ」
「え、えぇ......」
ジークはもう何も言い返す気が出なくなったらしい。では、静かになったところで......
「ーー私の望みは記憶を取り戻すこと。そのためにあなたの力を貸して欲しい」
「承諾シタ。今ヨリ我ハ汝改メネイノ契約龍トナル」
「よろしくお願いします。あ、それと......」
「マダ何カアルノカ?」
「もう1つお願いがあるんです。それはーーーーーー」
「承諾シタ。ソノ望ミモ守ッテヤロウ」
そう言うと同時に、アマツの姿が消えてなくなる。代わりに先程までアマツがいた位置に水色のビー玉サイズの鉱石が残る。
「これは......?」
「そいつは契約者と契約龍を繋ぐ『証』みたいなもんだ。ほら、お嬢が持ってる剣にも同じようなのが付いてるだろ」
確かに、私の剣には赤色の鉱石がはめ込められている。
「5つ枠があるのか......」
はめれそうな穴が5つ。ジークとアマツで2つ分埋まるから、後3つ枠が空くことになる。まさかとは思うが、後3体と契約することになるのでは......
「まあ、いっか」
そうなればそうなった時にでも考えればいい。それはそうと、
「どうやって下山するの?」
「さあな。アマツの野郎にでも聞いてみたらどうだ」
「そっか。アマツ」
ジークの提案通りにアマツを呼ぶ。
「あれ?アーマーツ」
何故か返答が帰ってこない。
「ちょっと待ってろお嬢」
そう言い、ジークが幻影を消して中に戻る。
(こりゃダメだ。完全に寝てるぜ)
「嘘でしょ......」
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「えぇ......」
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